ロシアを決して信じるな
814円(税込)
発売日:2021/02/17
- 新書
- 電子書籍あり
「日本人は北方領土が返ると思っているの?」「暗殺なんてあたりまえ!」政治家から庶民まで、第一人者が肉声を拾って描く新しいロシア論。
北方領土は返ってこない。ロシア人は狡猾(こうかつ)で、約束は禁物だ――著者はこう語る。長年、かの国に渡り、多くの知己(ちき)をもつ研究者にそこまで思わせるロシアとは、一体、どんな国なのか。誤作動で発射をまぬがれた核ミサイル。日常の出来事となった反体制者の暗殺。世界最悪の飲酒大国。悪魔への奇妙な共感。消えない「プーチン偽者」説。さもしい都市モスクワ……現地を旅し、不条理に絶望し、怒り、戸惑い、ときに嗤(わら)いつつ描く、新しいロシア論。
参考文献一覧
書誌情報
読み仮名 | ロシアヲケッシテシンジルナ |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
装幀 | 新潮社装幀室/デザイン |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 208ページ |
ISBN | 978-4-10-610896-9 |
C-CODE | 0225 |
整理番号 | 896 |
ジャンル | 政治・社会 |
定価 | 814円 |
電子書籍 価格 | 814円 |
電子書籍 配信開始日 | 2021/02/17 |
薀蓄倉庫
神か? 悪魔か?
「モスクワ市内の狭い通りを、ロシア人の男性が運転するロシア製の無骨なデザインの車が走っていました。前方を2台の自動車が快走しており、それぞれの車の運転手は神と悪魔だったらしいのです。その道の先は、行き止まりになっていました。
神は急に右折して大きな通りに向かいましたが、悪魔はその手前を左折し、路地に迷い込みました。あとを追うロシア人は2台の自動車の動きを見定めてから、どちらに曲がるべきか、迷うことはありませんでした。神を追うかのように右方向のウインカーを出しておいて、実際には悪魔の方に左折したのです。
神に敬意を払う素ぶりを見せておきながら、本音では、悪魔に魅了されているからです」
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上記は、モスクワで中村逸郎氏がロシア人の友人から披露された小話です。
初めて聴いたときには、ロシア事情に通じている中村氏でも、外見は誠実そうに見えて、実は、悪魔に愛着するロシア人の本性に触れたように思え、驚嘆したそうです。
一般的にはロシア人は信仰が篤く、全人口の7割ほどがロシア正教会の信者といわれています。残りの人びともイスラム教、仏教、さらには土着のシャーマニズムを信仰しています。
しかし、ロシアでは、ことばでは神や仏の恵みに感謝するのに、心底では悪魔が大好きという人や、悪を自国の特産物のように自慢する人もいて、「本当に不可解……」と中村氏も驚愕しています。
掲載:2021年2月25日
担当編集者のひとこと
「現地発の秘話」と「驚愕のリアル」
本書の著者、中村逸郎氏は、筑波大学人文社会系教授であり、反プーチン政権デモ、連続する反体制派の暗殺や暗殺未遂、北方領土交渉など、メディアでのニュース解説にいつも登場するロシア研究の第一人者です。著作や論文も数多く発表されています。
中村氏とはとても長いお付き合いになりますが、いつもスリリングな逸話を聴かせていただいています。
研究生活の傍ら、毎日、5kmのランニングを続けているストイックな生活を送られており、お話は興奮をさそい、おもしろく、人懐こい方で、大学の学生たちにも人気があります。
毎年、現地でのフィールドワークを欠かさない中村氏が、昨今のロシア事情の集大成として書下ろされたのが本書です。
他国からの軍事攻撃と誤認し、ロシアは核ミサイルを発射しそうになっていたという元ロシア高官の現代史のスクープ証言をはじめ、度重なる暗殺工作の舞台裏、なかなか進展しない北方領土交渉などでのロシアの二枚舌外交、全土で消えない「偽プーチン」説の真相、倒錯する国民の日常生活、世界最悪の飲酒大国という現実、さもしい大都市モスクワの実情など、謎多き隣国のリアルを、政治家から庶民まで、多くの肉声から浮かび上がらせています。
知られざる国情や国民性についても、現地発の豊富な秘話が次々と明かされています。
中村氏が現地を歩き、不条理に絶望し、憤り、戸惑い、ときには嗤いつつ、遭遇した「驚愕のリアル」を、紀行風の柔らかい筆致で、スリリングに描いているのです。
最新のロシアを知悉するには、最適な1冊です。
ぜひ、ご一読ください。
2021/02/25
著者プロフィール
中村逸郎
ナカムラ・イツロウ
1956年生まれ。筑波大学人文社会系教授。学習院大学大学院政治学研究科博士課程単位取得退学。モスクワ大学、ソ連科学アカデミーに留学。2017年、『シベリア最深紀行』で梅棹忠夫・山と探検文学賞受賞。『ロシア市民』『ろくでなしのロシア』などの著作がある。