自衛隊最高幹部が語る令和の国防
902円(税込)
発売日:2021/04/19
- 新書
- 電子書籍あり
陸海空「平成の名将」が集結! さらば空想的平和主義! 中国はこうして抑えよ。
令和日本の最も重要な戦略的課題は、力による現状変更に躊躇しなくなった中国の封じ込めである。台湾有事は現実の懸念であり、その際には尖閣諸島や沖縄も戦場になる可能性がある。自衛隊は本当に国土・国民を守り切れるのか。日米同盟は機能するのか。そして国民に「有事への備え」はあるのか。陸海空の自衛隊から「平成の名将」が集結、「軍人の常識」で語り尽くした「今そこにある危機」。
アメリカ・ファーストは加速し、中国は膨張する
コロナウイルス禍でもらった「宿題」
今のままでは非常時の自衛隊をメンテナンスできない
無人化、リモート化をさらに進めよ
中国の台頭と日米同盟の対応
共産党政権が崩壊しない限り、中国は「現状変更」しつづける
陸のアジア、海のアジア
サラミスライス戦略にはその都度対応せよ
南シナ海における中国の兵站線を引き伸ばせ
ロシア、インド、オーストラリア、ヨーロッパ
中国の弱み
むしろ近年が危ない?
「米台合同軍事作戦」は現実的でない
日本は台湾に軍事協力せよ
北朝鮮からやってくる難民はどれくらいの規模になるか
核化統一した、ドリフト日和見主義の朝鮮半島
北朝鮮の核ミサイルは「目の前の脅威」
米韓同盟の未来
核抑止を巡る状況は複雑になっている
米中の核戦略は噛み合っていない
核抑止の専門家が不在の自衛隊
「儲からない防衛産業」をどうするか
運用思想があっての装備が本来の姿
「南西諸島奪回作戦」の是非
なぜニーズとシーズをマッチできないのか
企業は防衛産業から抜け出したがっている
防衛産業の輸出戦略は韓国に学べ
日本の技術は米国と中国の方がよく見ている
制服組トップは政治家の決断を否定できるのか
「能力があっても使えないオプション」はどうするか
「自衛隊員が戦いで死ぬ作戦」を本当に遂行できるのか
シビリアン・コントロールのあり方
自衛隊全部隊を指揮する「統合司令官ポスト」を作れ
有事での統合幕僚長の役割
陸上総隊はなぜ作られたか
自衛隊と自衛隊員の法的位置づけを明確にせよ
書誌情報
読み仮名 | ジエイタイサイコウカンブガカタルレイワノコクボウ |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
装幀 | 新潮社装幀室/デザイン |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 272ページ |
ISBN | 978-4-10-610901-0 |
C-CODE | 0231 |
整理番号 | 901 |
ジャンル | 政治・社会 |
定価 | 902円 |
電子書籍 価格 | 902円 |
電子書籍 配信開始日 | 2021/04/19 |
薀蓄倉庫
インドへの過剰な期待は禁物
「自由で開かれたインド太平洋」を標榜する日本では、軍事的にもインドに期待する声がありますが、元海上幕僚長の武居智久氏は、「過剰な期待は禁物」と指摘しています。インド軍139万人の内訳は、陸軍120万人、空軍12万7000人、海軍は5万8000人で、海軍は全体の4・2%。インドの安全保障上の関心は、完全に陸を向いているからです。
武居氏は、「インド海軍が日米海軍と完全に一致した対応を中国に対して取ってくれると期待するのは無理」「『インド洋における海洋安全保障』という共通の国益を前提に、互いに互いを利用し合う関係が築ければ充分ではないか」と指摘しています。
掲載:2021年4月23日
担当編集者のひとこと
国防に関するリアルな評価
ご承知のように近年、中国が急速に国際秩序の「現状変更」に挑戦しています。フィリピンから米軍が撤退した後に南シナ海を我が物とした中国は、いま尖閣から沖縄に至る日本の領海も狙っています。台湾侵攻の可能性は我々が想像するよりも遙かに高く、その際には南西諸島も戦場となるのは確実です。もはや日本に、空想的平和主義の幻想に浸っている余裕は全くありません。
では、日本には何ができるのか。何をすべきなのか。軍事的観点から見た日本の現状はどうなっているのか。本書では、陸海空の各自衛隊から「平成の名将」とうたわれた方々に出席頂き、元国家安全保障局次長として軍事問題にも造詣が深い兼原信克氏の司会のもと、令和日本の国防に関するリアルな評価を行いました。
参加された元自衛隊幹部は、元陸将・陸上幕僚長の岩田清文氏、元海将・海上幕僚長の武居智久氏、元空将・航空自衛隊補給本部長の尾上定正氏の3人です。いずれも日本のみならず国際的にも尊敬を集める元将軍であり、その戦略眼、軍事的知識は非常に深いものがあります。
タブーなき議論には、ショックな部分もあるかも知れません。中距離ミサイルの地上配備や核オプション検討の必要性、日本が現実的な戦場となる可能性、いま米中が戦ったらアメリカが「負ける」可能性、次期戦闘機F35をDCA(通常兵器も核兵器も搭載可能な戦闘機)として運用する可能性など、かなり踏み込んだ指摘もされているからです。
一方、日本の防衛に空いている「穴」についても、数々の指摘がされています。例えば、日本では陸海空の自衛隊の部隊を統合して指揮する「統合司令官」が不在で、実際の戦闘の際のスムーズな部隊運用に不安を残していること。自衛隊には国家工廠がなく、装備品の整備はすべて民間企業頼みであるが、その民間企業が「儲からない防衛産業」から一斉に身を引き始めていること。サイバー戦や宇宙戦への備えがまだ充分に行えていないこと。日本も当事者になるであろう台湾有事に対する備えが不十分であること。等々。解決すべき課題も、まだまだ沢山あるわけです。
自衛隊に何ができて、どこに限界があるのか。正しく認識し、現実的な防衛論議を展開するための基礎認識を提供できれば、本書の目的は果たされることになります。ご一読頂ければ幸いです。
2021/04/23
著者プロフィール
岩田清文
イワタ・キヨフミ
1957年生まれ。元陸将、陸上幕僚長。防衛大学校(電気工学)を卒業後、1979年に陸上自衛隊に入隊。戦車部隊勤務などを経て、米陸軍指揮幕僚大学(カンザス州)にて学ぶ。第71戦車連隊長、陸上幕僚監部人事部長、第7師団長、統合幕僚副長、北部方面総監などを経て2013年に第34代陸上幕僚長に就任。2016年に退官。著書に『中国、日本侵攻のリアル』(飛鳥新社)がある。
武居智久
タケイ・トモヒサ
1957年生まれ。元海将、海上幕僚長。防衛大学校(電気工学)を卒業後、1979年に海上自衛隊入隊。筑波大学大学院地域研究研究科修了(地域研究学修士)、米国海軍大学指揮課程卒。海上幕僚監部防衛部長、大湊地方総監、海上幕僚副長、横須賀地方総監を経て、2014年に第32代海上幕僚長に就任。2016年に退官。2017年、米国海軍大学教授兼米国海軍作戦部長特別インターナショナルフェロー。2022年5月現在、三波工業株式会社特別顧問。
尾上定正
オウエ・サダマサ
1959年生まれ。元空将。防衛大学校(管理学)を卒業後、1982年に航空自衛隊入隊。ハーバード大学ケネディ行政大学院修士。米国国防総合大学・国家戦略修士。統合幕僚監部防衛計画部長、航空自衛隊幹部学校長、北部航空方面隊司令官、航空自衛隊補給本部長などを歴任し、2017年に退官。2022年5月現在、API(アジア・パシフィック・イニシアティブ)シニアフェロー。
兼原信克
カネハラ・ノブカツ
1959年山口県生まれ。同志社大学特別客員教授、笹川平和財団常務理事。東京大学法学部卒業後、1981年に外務省入省。フランス国立行政学院(ENA)で研修の後、ブリュッセル、ニューヨーク、ワシントン、ソウルなどで在外勤務。2012年、外務省国際法局長から内閣官房副長官補(外政担当)に転じる。2014年から新設の国家安全保障局次長も兼務。2019年に退官。著書に『歴史の教訓』『日本人のための安全保障入門』など。