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決定版 大東亜戦争(上)

波多野澄雄/著 、赤木完爾/著 、川島真/著 、戸部良一/著 、松元崇/著

902円(税込)

発売日:2021/07/19

書誌情報

読み仮名 ケッテイバンダイトウアセンソウ1
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 266ページ
ISBN 978-4-10-610913-3
C-CODE 0221
整理番号 913
ジャンル 歴史・地理
定価 902円
電子書籍 価格 902円
電子書籍 配信開始日 2021/07/19

「太平洋戦争」ではなく、なぜ「大東亜戦争」と呼ぶべきなのか。イデオロギーを排した歴史研究の蓄積で見えてきた真実。

満州事変から始まり敗戦で終わる足掛け15年の戦争は、従来、「先の大戦」「あの戦争」などと曖昧な呼称で論じられてきた。しかし、本書のために集結した歴史家たちは今回、敢えて「大東亜戦争」の表現を選んでいる。イデオロギーを抜きにすれば、この呼称こそが「あの戦争」の全貌を最も的確に伝えるからだ。二分冊の上巻では、開戦後の戦略、米英ソ中など「敵国」の動向、戦時下の国民生活の内実などに迫る。

目次
はじめに――なぜ、「大東亜戦争」なのか 波多野澄雄
複合戦争/戦争目的をめぐる混迷/遠ざかる日中戦争/帝国日本という視点
I 開戦と戦略
第1章 日本の戦争指導計画と作戦展開 波多野澄雄
はじめに/グランド・ストラテジー/「対米英蘭戦争計画」と戦争終結構想/南方攻略と西アジア戦略/戦略論争からガダルカナルへ/「絶対国防圏」の崩壊/「捷号」計画の破綻――フィリピンの放棄/中国戦線と太平洋戦線/一号作戦とインパール作戦――「虎号兵棋」の悲劇/一号作戦の衝撃/沖縄決戦と本土決戦/おわりに
第2章 英米ソ「大同盟」における対日戦略 赤木完爾
はじめに/アメリカ戦略の起源/アメリカ参戦まで/ドイツ打倒最優先方針の動揺――北アフリカとガダルカナル/対日戦争の諸相/ソ連の対日参戦/イギリスの対日戦争/爆撃と封鎖/おわりに
第3章 中国から見た開戦とその展開 川島真
1.蒋介石・重慶国民政府から見た太平洋戦争開戦
重慶から見た真珠湾攻撃/対日宣戦布告の内容/全国軍民に告げる書/連合国との共同作戦/四大国の一員に/中国軍の「国外派兵」/戦時体制の強化/日本の南進成功による動揺/援蒋ルートとビルマ戦線/太平洋戦争発生後半年の「失望」/太平洋での日米海戦
2.中国共産党から見た太平洋戦争勃発
中国共産党から日本へのメッセージ/中国共産党の太平洋戦争への宣言/抗日根拠地への指示/中央軍事委員会総政治部の宣伝・工作指示/野戦政治部の指示/太平洋戦争勃発後に我々が取るべき政策に関する指示/八路軍の工作目標/太平洋戦争の勃発と国民党・共産党
II 共栄圏の政治・経済
第4章 大東亜会議と「アジアの解放」 波多野澄雄
はじめに/重光葵と「対支新政策」/「大東亜機構」構想の行方/「戦争目的研究会」における議論/「資源の開放」をめぐって/和平メッセージとしての大東亜宣言/石橋湛山と清沢洌/「政治外交」の復権を期して/第二次新政策――仏印解放/おわりに
第5章 大東亜戦争期の日中和平工作――繆斌工作を中心として 戸部良一
重慶屈服工作/「対支新政策」/南京政権の重慶工作/繆斌工作の発端/繆斌工作の展開と挫折/繆斌工作の評価/その後の重慶工作
第6章 財政・金融規律の崩壊と国民生活 松元崇
日米開戦時の思惑と誤算/財政規律の崩壊(臨時軍事費特別会計)/金融秩序の崩壊(軍需会社指定融資制度、軍需手形制度)/国民生活へのしわ寄せ/経済の破綻と占領地の負担/投入された戦費及び物的・人的被害

蘊蓄倉庫

定着しなかった「昭和戦争」

 正式な名称だった「大東亜戦争」が戦後、GHQによって禁止されてから、「あの戦争」はさまざまな呼ばれ方をしてきました。戦後すぐは、GHQ推奨の「太平洋戦争」が一般化しましたが、戦場がアジア各地に及んだ戦争の実態との乖離があり、その後「15年戦争」「アジア(・)太平洋戦争」「第二次世界大戦」「先の大戦」など、いろいろな呼称が提案されてきました。これらの呼称は今でも使われることがありますが、2006年に読売新聞が「検証・戦争責任」という大型企画の中で提唱した「昭和戦争」だけは、あまり定着しなかったようです。

掲載:2021年7月21日

担当編集者のひとこと

敢えて「大東亜戦争」

「あの戦争」「先の大戦」など、曖昧な呼ばれ方がすることが一般的な「戦争」に、著者である歴史家チームは今回、「大東亜戦争」の呼称を選びました。呼称としての「大東亜戦争」はこれまで、イデオロギー的な理由によって意図的に忌避、ないしは選択されてきましたが、イデオロギーのベールを剥がして虚心坦懐に見れば、戦争の全貌を描くのには、この呼称こそが最もしっくりくる、と判断したからです。

 大東亜戦争は、1931年の満州事変から1945年の敗戦にいたるまで、足かけ15年におよぶ長い戦争であり、その影響は多方面に及びます。そのため、「決定版」と銘打った本書も上下巻の二分冊となりました。

 上巻では、開戦後の戦争指導体制、米英ソ中など「敵国」の動向、戦時下の国民生活の内実などを描きました。下巻では、戦争が終結するまでの関係各国の動向、戦後の講和体制の形成過程、天皇皇后による「慰霊の旅」の意味、国家を破綻へと導いた戦争から引き出せる「歴史の教訓」までを詳述しています。

 いずれの論考も、一流の研究者の「本職の仕事」ですから、内容の濃さは言うまでもないのですが、敢えて「読みどころ」を二箇所、挙げておきます。

 一つは、戸部良一先生による第七章「日本の戦争指導体制――日英比較の視点から」。この章では、チャーチルによる「戦時下の独裁」を支えた構造を説明し、それと対比しながら日本の政軍関係を論じているのですが、編集の過程で、「えっ!」と驚かされたことがいくつもありました。

 たとえば、明治憲法下のいわゆる「統帥権の独立」ですが、戸部先生によると、「本来の目的とは、自由民権運動という反政府政治運動の影響から軍を遮断し、その意味で軍を非政治化することにあった」。日清・日露戦争の時には、大本営に軍人でない政治家も列していましたが、彼らは革命を生き抜いた「下級武士」だったので、軍事の基本的なことを理解していた。だから、大本営の弾力的な運営ができた、と。
 戦前の日本を蝕んだ、軍人による政治不信の言説もたっぷり紹介されています。陸軍の宇垣一成(「兵を知らざるの輩が……」)、海軍の山本五十六(「(大本営なんか)海軍は必要を認めない」)の言もなかなかですが、私が驚いたのは、大正時代に陸軍大学校の教官だった谷寿夫という人が教科書(!)として書いた「機密日露戦史」という本。
 この本では、当時の桂太郎首相と寺内正毅陸相をクソミソにけなしていて、「そもそも軍人の方が政治よりエライ」という思想を堂々と表明しているのです(桂も寺内も元は陸軍の軍人なのですが……)。昭和期の日本に、戦略眼の全くない、国家にとって有害な果断さを発揮した陸軍軍人がかくも大量に送り出された背景には、こんな事情もあったのか、ということを知りました。
 戸部先生による、この「政軍関係」を論じた章を読んでから、兼原信克さんによる「帝国日本の政軍関係とその教訓」と題した最終章(第14章)を読むと、この大東亜戦争当時の課題が極めて今日的なものであることも理解できます。

 もう一つの読みどころは、戦争の「呼称」問題を論じた、防衛研究所の庄司潤一郎氏による論考(第13章)。「大東亜戦争」というのは、戦前には「正式な呼称」としてあったのですが、戦後はイデオロギー的な理由から使われなくなりました。かといって、代わりに正式な名称が確定したわけではなく、「先の大戦」とか「あの戦争」といった曖昧な呼び方や、「太平洋戦争」、「アジア(・)太平洋戦争」、「15年戦争」、「昭和戦争」(←読売新聞が一時期、定着させようとして失敗した)などといった、一長一短のある呼び方が、イデオロギーやら論者のスタンスによって使い分けられていました。
 庄司氏の論考は、こうした「呼称」の変遷を歴史的に辿り、結果的に「大東亜戦争」という呼称の「正しさ」に回帰するプロセスを鮮やかに見せてくれます。この章は、『大東亜戦争』というポレミカルなタイトルを持つ本の、いわば「根拠」を示してくれます。

 本書は、2018年に新潮新書より出された『決定版 日中戦争』の歴史家チームが再結集し、15年に及んだ戦争の全貌に迫った試みです。いずれも専門分野で一級の研究を積み上げてきた歴史家が、最新研究に基づいて記した決定版。ぜひご一読下さい。

2021/07/21

著者プロフィール

波多野澄雄

ハタノ・スミオ

筑波大学名誉教授。

赤木完爾

アカギ・カンジ

慶應義塾大学名誉教授。

川島真

カワシマ・シン

東京大学教授。

戸部良一

トベ・リョウイチ

国際日本文化研究センター名誉教授。

松元崇

マツモト・タカシ

国家公務員共済組合連合会理事長。

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