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決定版 大東亜戦争(下)

戸部良一/著 、赤木完爾/著 、庄司潤一郎/著 、川島真/著 、波多野澄雄/著 、兼原信克/著

946円(税込)

発売日:2021/07/19

書誌情報

読み仮名 ケッテイバンダイトウアセンソウ2
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 303ページ
ISBN 978-4-10-610914-0
C-CODE 0221
整理番号 914
ジャンル 歴史・地理
定価 946円
電子書籍 価格 946円
電子書籍 配信開始日 2021/07/19

亡国への歩みは止められなかったのか? 当代最高の歴史家たちが描き出す近代日本の蹉跌。

日増しに敗色が濃くなる中での戦争指導。軍事的な敗北が明白なのに、なぜ終戦の決断は遅れたのか。日本に対峙するアメリカや中国、そして終戦間際に日本を攻めたソ連の戦略は? 下巻では、日本の敗戦で戦争が終結するまでの各アクターたちの動向、戦後の講和体制の形成過程、平成における天皇皇后両陛下による「慰霊の旅」の意味、国家を破綻へと導いた戦争から引き出せる「歴史の教訓」までを詳述。

目次
III 戦争指導と終戦過程
第7章 日本の戦争指導体制――日英比較の視点から 戸部良一
イギリスの戦争指導体制/明治期の大本営/政戦両略統合の試み/近衛内閣の試み/連絡会議の復活/政治指導の貧困
第8章 アメリカの戦争指導体制と政軍関係 赤木完爾
はじめに/アメリカの政軍関係――大統領、議会、陸海軍、国務省/ローズヴェルト大統領と政軍関係の変容/統合参謀長会議の設置/政軍関係の動態/ソ連問題/おわりに
第9章 戦争終結の道程――「終戦」の意味と要因 庄司潤一郎
限定された戦争目的――「国体護持」/「僥倖」としての日米の信頼関係/本土決戦をめぐる日米のギャップ/その遺産/おわりに――「終戦」の意味
第10章 中国から見た「戦勝」 ――日本敗戦に向けての対ソ交渉を中心に 川島真
1.ヤルタ協定と中国
「戦後」構想と中国/ヤルタ会談/ヤルタ協定の内容/中国共産党の台頭
2.中ソ友好同盟条約締結交渉
宋子文の訪ソ/中ソ友好同盟条約締結/中華民国の抗日勝利とソ連
IV 総力戦の遺産
第11章 サンフランシスコ講和体制の形成と賠償問題 波多野澄雄
はじめに/ポーレー賠償計画/マッコイ声明の波紋/初期の講和構想と在外財産問題/講和構想と賠償問題/講和条約における賠償の特徴/東南アジア賠償交渉の展開/「二つの中国」と賠償問題/「植民地帝国」の清算――韓国と台湾/おわりに――「個人請求権」と戦後補償問題――揺らぐ講和体制
第12章 平成における天皇皇后両陛下と「慰霊の旅」 庄司潤一郎
「異例」な「慰霊」の旅/すべての戦没者に対する慰霊/戦後の苦悩への労い、そして感謝/想起と記憶の継承/和解――フィリピン/おわりに――「慰霊の旅」の意義と評価
第13章 戦争呼称に関する問題――「先の大戦」を何と呼ぶべきか 庄司潤一郎
戦争呼称をめぐる歴史的経緯――「大東亜戦争」の禁止と「太平洋戦争」の誕生/「次善」の呼称としての「太平洋戦争」――アジアでの戦いは?/「大東亜戦争」――地域的呼称か戦争肯定論か/栄枯盛衰の「15年戦争」/「アジア(・)太平洋戦争」の普及と混迷/「第二次世界大戦」「昭和戦争」など/おわりに――原点としての「大東亜戦争」への回帰
第14章 帝国日本の政軍関係とその教訓 兼原信克
政治指導の確立――弱すぎた昭和前期の政治指導/国務と統帥の統合――統帥権の独立という愚/外交戦略と軍事戦略の論理的整合――軍事戦略しか残らなかった昭和前期日本/職業軍人の政治的中立――青年将校の政治化/破綻した政軍関係と国家崩落――満州事変から終戦までを振り返る/おわりに――国家安全保障会議への提言

蘊蓄倉庫

定着しなかった「昭和戦争」

 正式な名称だった「大東亜戦争」が戦後、GHQによって禁止されてから、「あの戦争」はさまざまな呼ばれ方をしてきました。戦後すぐは、GHQ推奨の「太平洋戦争」が一般化しましたが、戦場がアジア各地に及んだ戦争の実態との乖離があり、その後「15年戦争」「アジア(・)太平洋戦争」「第二次世界大戦」「先の大戦」など、いろいろな呼称が提案されてきました。これらの呼称は今でも使われることがありますが、2006年に読売新聞が「検証・戦争責任」という大型企画の中で提唱した「昭和戦争」だけは、あまり定着しなかったようです。

掲載:2021年7月21日

担当編集者のひとこと

敢えて「大東亜戦争」

「あの戦争」「先の大戦」など、曖昧な呼ばれ方がすることが一般的な「戦争」に、著者である歴史家チームは今回、「大東亜戦争」の呼称を選びました。呼称としての「大東亜戦争」はこれまで、イデオロギー的な理由によって意図的に忌避、ないしは選択されてきましたが、イデオロギーのベールを剥がして虚心坦懐に見れば、戦争の全貌を描くのには、この呼称こそが最もしっくりくる、と判断したからです。

 大東亜戦争は、1931年の満州事変から1945年の敗戦にいたるまで、足かけ15年におよぶ長い戦争であり、その影響は多方面に及びます。そのため、「決定版」と銘打った本書も上下巻の二分冊となりました。

 上巻では、開戦後の戦争指導体制、米英ソ中など「敵国」の動向、戦時下の国民生活の内実などを描きました。下巻では、戦争が終結するまでの関係各国の動向、戦後の講和体制の形成過程、天皇皇后による「慰霊の旅」の意味、国家を破綻へと導いた戦争から引き出せる「歴史の教訓」までを詳述しています。

 いずれの論考も、一流の研究者の「本職の仕事」ですから、内容の濃さは言うまでもないのですが、敢えて「読みどころ」を二箇所、挙げておきます。

 一つは、戸部良一先生による第七章「日本の戦争指導体制――日英比較の視点から」。この章では、チャーチルによる「戦時下の独裁」を支えた構造を説明し、それと対比しながら日本の政軍関係を論じているのですが、編集の過程で、「えっ!」と驚かされたことがいくつもありました。

 たとえば、明治憲法下のいわゆる「統帥権の独立」ですが、戸部先生によると、「本来の目的とは、自由民権運動という反政府政治運動の影響から軍を遮断し、その意味で軍を非政治化することにあった」。日清・日露戦争の時には、大本営に軍人でない政治家も列していましたが、彼らは革命を生き抜いた「下級武士」だったので、軍事の基本的なことを理解していた。だから、大本営の弾力的な運営ができた、と。
 戦前の日本を蝕んだ、軍人による政治不信の言説もたっぷり紹介されています。陸軍の宇垣一成(「兵を知らざるの輩が……」)、海軍の山本五十六(「(大本営なんか)海軍は必要を認めない」)の言もなかなかですが、私が驚いたのは、大正時代に陸軍大学校の教官だった谷寿夫という人が教科書(!)として書いた「機密日露戦史」という本。
 この本では、当時の桂太郎首相と寺内正毅陸相をクソミソにけなしていて、「そもそも軍人の方が政治よりエライ」という思想を堂々と表明しているのです(桂も寺内も元は陸軍の軍人なのですが……)。昭和期の日本に、戦略眼の全くない、国家にとって有害な果断さを発揮した陸軍軍人がかくも大量に送り出された背景には、こんな事情もあったのか、ということを知りました。
 戸部先生による、この「政軍関係」を論じた章を読んでから、兼原信克さんによる「帝国日本の政軍関係とその教訓」と題した最終章(第14章)を読むと、この大東亜戦争当時の課題が極めて今日的なものであることも理解できます。

 もう一つの読みどころは、戦争の「呼称」問題を論じた、防衛研究所の庄司潤一郎氏による論考(第13章)。「大東亜戦争」というのは、戦前には「正式な呼称」としてあったのですが、戦後はイデオロギー的な理由から使われなくなりました。かといって、代わりに正式な名称が確定したわけではなく、「先の大戦」とか「あの戦争」といった曖昧な呼び方や、「太平洋戦争」、「アジア(・)太平洋戦争」、「15年戦争」、「昭和戦争」(←読売新聞が一時期、定着させようとして失敗した)などといった、一長一短のある呼び方が、イデオロギーやら論者のスタンスによって使い分けられていました。
 庄司氏の論考は、こうした「呼称」の変遷を歴史的に辿り、結果的に「大東亜戦争」という呼称の「正しさ」に回帰するプロセスを鮮やかに見せてくれます。この章は、『大東亜戦争』というポレミカルなタイトルを持つ本の、いわば「根拠」を示してくれます。

 本書は、2018年に新潮新書より出された『決定版 日中戦争』の歴史家チームが再結集し、15年に及んだ戦争の全貌に迫った試みです。いずれも専門分野で一級の研究を積み上げてきた歴史家が、最新研究に基づいて記した決定版。ぜひご一読下さい。

2021/07/21

著者プロフィール

戸部良一

トベ・リョウイチ

国際日本文化研究センター名誉教授。

赤木完爾

アカギ・カンジ

慶應義塾大学名誉教授。

庄司潤一郎

ショウジ・ジュンイチロウ

防衛研究所研究幹事。

川島真

カワシマ・シン

東京大学教授。

波多野澄雄

ハタノ・スミオ

筑波大学名誉教授。

兼原信克

カネハラ・ノブカツ

1959(昭和34)年山口県生まれ。同志社大学特別客員教授。1981年に東大法学部を卒業し、外務省に入省。外務省国際法局長を経て、2012年に内閣官房副長官補に就任。2014年より新設の国家安全保障局次長を兼務。2019年に退官。

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