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平成のヒット曲

柴那典/著

946円(税込)

発売日:2021/11/17

書誌情報

読み仮名 ヘイセイノヒットキョク
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 303ページ
ISBN 978-4-10-610929-4
C-CODE 0273
整理番号 929
ジャンル ノンフィクション
定価 946円
電子書籍 価格 946円
電子書籍 配信開始日 2021/11/17

美空ひばり、小室哲哉、ミスチル、宇多田ヒカル、サザン、SMAP、Perfume、AKB48、嵐、星野源、米津玄師……“ヒット”は社会に何をもたらしたのか。平成30年間の深層心理に迫る。

平成とは、どんな時代だったのか――。「川の流れのように」から「Lemon」まで、各年を象徴する30のヒット曲から時代の実像に迫る。ミリオンセラー連発の1990年代、音楽産業が大きく変化した2000年代、新たな流行の法則が生まれた2010年代……。小室哲哉からミスチル、宇多田ヒカル、SMAP、星野源まで、いかにしてヒット曲は生まれ、それは社会に何をもたらしたのか。ヒットの構造を分析し、その未来をも占う画期的評論。

目次
はじめに
第一部 ミリオンセラーの時代
――1989(平成元)年〜1998(平成10)年
1.昭和の幕を閉じた曲
【1989(平成元)年の「川の流れのように」(美空ひばり)】
昭和が終わった翌日に/秋元康と美空ひばり/歴史の転換点と「思い出の目次」
2.さくらももこが受け継いだバトン
【1990(平成2)年の「おどるポンポコリン」(B.B.クィーンズ)】
植木等と『ちびまる子ちゃん』/ビーイング系とは何だったのか/大瀧詠一の果たした役割
3.月9とミリオンセラー
【1991(平成3)年の「ラブ・ストーリーは突然に」(小田和正)】
「月9」とは何だったのか/タイアップの本質/3連符の魔法
4.昭和の「オバさん」と令和の「女性」
【1992(平成4)年の「私がオバさんになっても」(森高千里)】
平成を経て「女性」はどう変わったのか/「アイドル」と「アーティスト」の境目で/20年越しのメッセージ
5.ダンスの時代の幕開け
【1993(平成5)年の「EZ DO DANCE」(trf)】
小室哲哉と「プロデューサーの時代」/カルチャーを作るということ/エイベックスの挑戦/ダンサーの地位を変えた曲/誰もがダンスする時代へ
6.自己犠牲から自分探しへ
【1994(平成6)年の「innocent world」(Mr.Children)】
桜井和寿と小林武史/切ないが、前に進むのだ/サッカーとミスチルの「国民的物語」/根性から自分らしさへ
7.空洞化する時代と「生の肯定」
【1995(平成7)年の「強い気持ち・強い愛」(小沢健二)】
時代の曲がり角へ/「生命の最大の肯定」/2つの「今」に挟まれた25年
8.不安に向かう社会、取り戻した自由と青春
【1996(平成8)年の「イージュー★ライダー」(奥田民生)】
カウンターとしての「脱力」/30代の“自由”と“青春”/バンドブームの狂騒と、その後に訪れた充実
9.人生の転機に寄り添う歌
【1997(平成9)年の「CAN YOU CELEBRATE?」(安室奈美恵)】
人気絶頂での結婚発表/山口百恵と安室奈美恵/笑顔で終わりたい/30歳で更新した「カッコいい女性像」/人生の荒波を超えていく
10.hideが残した最後の予言
【1998(平成10)年の「ピンク スパイダー」(hide)】
音楽シーンの特別な1年/最後の121日間/初のインターネット・アンセム
第二部 スタンダードソングの時代
――1999(平成11)年〜2008(平成20)年
11.台風の目としての孤独
【1999(平成11)年の「First Love」(宇多田ヒカル)】
800万人と1人/孤独から生まれた祈り/「First Love」と「初恋」
12.失われた時代へのレクイエム
【2000(平成12)年の「TSUNAMI」(サザンオールスターズ)】
ミレニアムの狂騒の中で/大衆音楽のバトンを受け取る/過ぎ去った輝きの時へ
13.21世紀はこうして始まった
【2001(平成13)年の「小さな恋のうた」(MONGOL800)】
9・11と不意のブレイク/道を作ったハイスタ/変わらない日本、変わらない沖縄
14.SMAPが与えた「赦し」
【2002(平成14)年の「世界に一つだけの花」(SMAP)】
社会が揺らぐとき、歌にはどんな力があるのか/“平成のクレージーキャッツ”に/大衆の心の負荷を取り除く
15.「新しさ」から「懐かしさ」へ
【2003(平成15)年の「さくら(独唱)」(森山直太朗)】
会議室で歌うことから始まった遅咲きのブレイク/「涙そうそう」と森山良子/カバーブームはどのようにして生まれたか/「桜ソング」の功罪/混沌としての平成
16.「平和への祈り」と日本とアメリカ
【2004(平成16)年の「ハナミズキ」(一青窈)】
ミリオンセラー時代の終わりと、平成で最も歌われた曲の誕生/9・11が生んだ2つのヒット曲
17.消えゆくヒットと不屈のドリカム
【2005(平成17)年の「何度でも」(DREAMS COME TRUE)】
「ヒットの崩壊」のはじまり/苦悩の中で明日が見える曲を
18.歌い継がれた理由
【2006(平成18)年の「粉雪」(レミオロメン)】
YouTubeとSNSが勃興した時代/『1リットルの涙』から生まれた2つのヒット/ユーザー参加型のヒット曲
19.テクノロジーとポップカルチャーの未来
【2007(平成19)年の「ポリリズム」(Perfume)】
時代の転換点でのブレイク/クリエイティブへの誠実な姿勢/幻になった「これからの日本らしさ」
20.ガラケーの中の青春
【2008(平成20)年の「キセキ」(GReeeeN)】
着うたとは何だったのか
第三部 ソーシャルの時代
――2009(平成21)年〜2019(平成31)年
21.国民的アイドルグループの2つの謎
【2009(平成21)年の「Believe」(嵐)】
嵐の「国民的ヒット曲」とは何か/嵐と日本のヒップホップとのミッシングリンク/嵐とアジアのポピュラー音楽の勢力図
22.ヒットの実感とは何か
【2010(平成22)年の「ありがとう」(いきものがかり)】
ヒットの基準があやふやになっていく時代/誰かの日常の暮らしの中に息づく歌を
23.震災とソーシャルメディアが変えたもの
【2011(平成23)年の「ボーン・ディス・ウェイ」(レディー・ガガ)】
音楽の力が問い直された1年/マイノリティを名指しで肯定する
24.ネットカルチャーと日本の“復古”
【2012(平成24)年の「千本桜」(黒うさP feat. 初音ミク)】
初音ミクが巻き起こした創作の連鎖/和のテイストがネットカルチャーの外側に波及した
25.踊るヒット曲の誕生
【2013(平成25)年の「恋するフォーチュンクッキー」(AKB48)】
AKB48の“本当のヒット曲”/『あまちゃん』と「アイドル戦国時代」/平成というモラトリアム
26.社会を変えた号砲
【2014(平成26)年の「レット・イット・ゴー 〜ありのままで〜」】
“ありのまま”の魔法
27.ダンスの時代の結実
【2015(平成27)年の「R.Y.U.S.E.I.」(三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE)】
ストリーミングに乗り遅れた日本/拡大するEXILEとHIROのリベンジ
28.ヒットの力学の転換点
【2016(平成28)年の「ペンパイナッポーアッポーペン」(ピコ太郎)】
天皇とSMAPが示した平成の終わり/古坂大魔王はピコ太郎をどう生み出したのか/バイラルヒットと感染症
29.新しい時代への架け橋
【2017(平成29)年の「恋」(星野源)】
物語とダンスの相乗効果/イエロー・ミュージックの矜持/植木等と星野源
30.平成最後の金字塔
【2018(平成30)年/2019(平成31)年の「Lemon」(米津玄師)】
死と悲しみを見つめて/ヒットの復権/インターネットの遊び場から時代の真ん中へ/300万の“ひとり”
おわりに

インタビュー/対談/エッセイ

平成とは、どんな時代だったのか

柴那典

 もはや、平成という時代は遠い過去になってしまった――。
 執筆を終えて最も強く感じたのは、そういう感慨だった。『平成のヒット曲』を書き始めたのは3年ほど前のこと。美空ひばり「川の流れのように」から米津玄師「Lemon」まで、平成の30年を代表する曲を1年に1曲ずつ選び、それを読み解いていくことで一つの時代精神に迫れるのではないか。思いつきとしては安易だったかもしれないが、それぞれの曲の作り手がテレビや雑誌やウェブサイトなどで語った発言を丹念に拾い集め、曲がどんなふうに人々に受け止められ、社会の変化にどう寄り添っていったかを掘り起こしていく作業は、当初思っていたよりも大変なものだった。ただ、時間はかかったが、書き終えて、ヒットソングの変遷と共に「平成とはどんな時代だったのか」という輪郭が明らかになってきた実感がある。
 本書では平成という時代を3つの期間に区切っている。
 最初の10年は「ミリオンセラーの時代」。それまでの歌謡曲にかわってJ-POPという言葉が生まれ、CDセールスが右肩上がりで拡大していった、音楽産業の黄金期だ。月9ドラマを筆頭に、ドラマ主題歌やCMソングのタイアップがヒットの火付け役になった。カラオケのブームとCD市場の拡大によって、音楽が流行の中心になった。小室哲哉、ミスチル、安室奈美恵など数々のミリオンヒットが相次いだ。
 次の10年は「スタンダードソングの時代」。流行と共に消費されるものから、時代を超えて歌い継がれるものへと、ヒットソングのあり方は徐々に変わっていった。SMAP「世界に一つだけの花」とサザンオールスターズ「TSUNAMI」という二つの国民的ヒット曲が生まれたのが2000年代初頭だ。しかし2000年代後半はインターネットの普及によって風向きは大きく変わり、音楽不況が顕在化していく。
 最後の10年は「ソーシャルの時代」。YouTubeとソーシャルメディアの登場によって、流行を巡る力学は大きく変わった。誰もが情報の発信側に立つことができるようになった。話題性が局地的に生じるようになり、参加型のヒットが生まれるようになっていった。
 しかし、現在はもはや2010年代の常識すら過去のものになりつつある。たとえばAKB48「恋するフォーチュンクッキー」(2013年)のミュージックビデオを今観ると、あんな風に群衆が“密”になってマスクをせず笑顔を見せて踊っていた風景は、ずいぶん懐かしく見えてしまう。
 コロナ禍で、音楽も、社会も、大きく変わった。だからこそ、今、平成の30年を振り返ることで見えてくるものが沢山あると思っている。

(しば・とものり 音楽ジャーナリスト)
波 2021年12月号より

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著者プロフィール

柴那典

シバ・トモノリ

1976(昭和51)年神奈川県生まれ。音楽ジャーナリスト。ロッキング・オン社を経て独立。音楽やビジネスを中心に幅広くインタビュー、記事執筆を手がける。著書に『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』『ヒットの崩壊』、共著に『渋谷音楽図鑑』がある。

柴那典Twitter (外部リンク)

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