今月の表紙の筆蹟は、黒川博行さん。
波 2021年12月号
(毎月27日発売)
発売日 | 2021/11/27 |
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JANコード | 4910068231215 |
定価 | 100円(税込) |
【筒井康隆掌篇小説館】
筒井康隆/横恋慕
阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第51回
【小泉今日子『黄色いマンション 黒い猫』文庫化記念】
[対談]本木雅弘×小泉今日子/私たちのあの頃
黒川博行『熔果』
[インタビュー]黒川博行/『熔果』のクロウト読み指南 聞き手・江 弘毅
川村元気『神曲』
岩井俊二/謳え、人類の宿痾。
マギー・オファーレル、小竹由美子 訳『ハムネット』(新潮クレスト・ブックス)
松岡和子/ペスト禍の時代を生きた「顔のない」シェイクスピア
羽田圭介『滅私』
ふかわりょう/可燃ごみ
小佐野彈『僕は失くした恋しか歌えない』
上田岳弘/人が歌う歌
大森あきこ『最後に「ありがとう」と言えたなら』
岸田奈美/別れの達人と、別れの処方箋
錦鯉『くすぶり中年の逆襲』
[エッセイ]錦鯉/こ〜んに〜ちは〜!!
高田崇史『采女の怨霊―小余綾俊輔の不在講義―』
末國善己/歴史のホワイダニットとフーダニット
彩藤アザミ『不村家奇譚―ある憑きもの一族の年代記―』
村上貴史/異形と生きることを語る年代記
野口悠紀雄『CBDC 中央銀行デジタル通貨の衝撃』
幸田博人/「デジタル通貨」がもたらすマネーの世界の大変化
五木寛之『私の親鸞―孤独に寄りそうひと―』(新潮選書)
碧海寿広『考える親鸞―「私は間違っている」から始まる思想―』(新潮選書)
碧海寿広/いま、なぜ親鸞なのか――。
【アンデシュ・ハンセン、久山葉子 訳『最強脳―『スマホ脳』ハンセン先生の特別授業―』(新潮新書)刊行記念特別寄稿】
[ダブル書評!]子どもの脳を育てるには
和田孫博/文と武は分かちがたい
柳沢幸雄/厳しい時代に求められること
【シリーズ累計100万部突破記念】
ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』
[オンライン読書会リポート]大学生は「ぼくイエ2」をこう読んだ
【早見和真『イノセント・デイズ』50万部突破記念】
[対談]早見和真×長濱ねる/未来の自分に期待して[後篇]
【20周年記念スペシャルアニメ「しゃばけ」配信記念】
畠中 恵『またあおう』(新潮文庫)
[対談]伊藤秀樹×榎木淳弥/大好評配信中のしゃばけアニメについて、伊藤監督と主演の榎木氏が語る![前篇]
筒井ともみ『もういちど、あなたと食べたい』
[特別エッセイ]筒井ともみ/もういちど、あなたと食べたい 野上龍雄さんと「アルコール飲料」
【短篇小説】
北村 薫/ゴ 前篇
【私の好きな新潮文庫】
磯部 涼/川崎、北九州、原宿で鳴る音楽を貫くもの
豊田正義『消された一家―北九州・連続監禁殺人事件―』
秋尾沙戸子『ワシントンハイツ―GHQが東京に刻んだ戦後―』
ヒキタクニオ『凶気の桜』
三川みり『龍ノ国幻想1 神欺く皇子』(新潮文庫nex)
北上次郎/躍動感あふれる物語
【今月の新潮文庫】
野地秩嘉『トヨタ物語』
柳井 正/僕はまだまだ甘かった。
【コラム】
柴 那典『平成のヒット曲』(新潮新書)
柴 那典/平成とは、どんな時代だったのか
三枝昴之・小澤 實/掌のうた
[とんぼの本]編集室だより
【連載】
ジェーン・スー/マイ・フェア・ダディ! 介護未満の父に娘ができること 第15回
南沢奈央 イラスト・黒田硫黄/今日も寄席に行きたくなって 第24回
大木 毅/指揮官たちの第二次世界大戦 将星の横顔をみる 最終回
二宮敦人/ぼくらは人間修行中 第13回
内田 樹/カミュ論 第10回
春画ール/春画の穴 第2回
川本三郎/荷風の昭和 第43回
編輯後記 いま話題の本 新刊案内 編集長から
立ち読み
編集長から
今月の表紙の筆蹟は、黒川博行さん。
◎川本三郎さんの亡妻への追想記『いまも、君を想う』に「真昼の決闘」が出てきます。『マイ・バック・ページ』で描かれた公安事件によって川本さんは逮捕、新聞社を解雇される。その際の徹底的な孤立無援ぶりから、あの映画で町中から見放される保安官ゲイリー・クーパーに深く感情移入し、彼を見捨てない新妻グレース・ケリーに奥様(当時は恋人)恵子さんの面影を見ます。
◎村上春樹さんが感動的な「壁と卵」スピーチ(エルサレム賞受賞の挨拶)をした時、イスラエルのガザ政策のため受賞への批判が多く、「挨拶の原稿を一行一行心を込めて書きました。ずいぶん孤独だった。ビデオで映画「真昼の決闘」を何度も繰り返し見て、それから意を決して空港に向かったことを覚えています」(『村上春樹 雑文集』)。そんな具合にこの西部劇は様々な孤絶を支える力があるようで、例えばクリントン大統領はホワイトハウスで十七回も上映、曰く「大勢の無理解と闘い、必要な助けが得られないと感じる全ての人にとって、あの保安官は完璧な
◎「真昼〜」の背景には〈赤狩り〉があって、親しい町の人々に背を向けられる保安官は、赤狩りで孤立した映画人の
◎彼は生き残るために非米活動委員会で仲間を売る証言をしました。証言の二十年後、NY留学中の黒柳徹子さんは縁があって何度も彼と会います。「いつも無口だった。まるで、かつて仲間を売った事を恥じて、どんなに時がたっても肩身が狭いままなんだ、という風に見えた」(『トットひとり』)。
▽次号の刊行は十二月二十八日です。
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雑誌から生まれた本
波とは?
1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。
創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。
創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。
現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。