
最強脳―『スマホ脳』ハンセン先生の特別授業―
990円(税込)
発売日:2021/11/17
- 新書
- 電子書籍あり
50万部ベストセラー著者が解説! きみの脳は変えられる! 教育大国スウェーデンで小中学生10万人が読んだ「脳力強化バイブル」日本上陸。
コロナ禍で自宅時間が増え、大人も子供もスマホやパソコン、ゲームやSNSに費やす時間が増えていませんか? 欧米では運動不足や睡眠不足、うつになる児童や若者の増加が問題になっています。記憶力や集中力の低下、成績悪化、心の病まで引き起こす、そんな毎日を一変させる方法をベストセラー『スマホ脳』のハンセン先生が教えます。教育大国スウェーデンの教育現場を変えた、簡単なのに科学的な方法とは!?
【ドクターの処方箋】運動で幸せな気分になるには
【ドクターの処方箋】運動でストレスに強くなるには
【ドクターの処方箋】運動で集中力を上げるには
【ドクターの処方箋】運動で発想力豊かになるには(そして少し賢くなるには)
【ドクターの処方箋】ゲーマーにも運動が効く
【ドクターの処方箋】運動で記憶力を良くするには
書誌情報
読み仮名 | サイキョウノウスマホノウハンセンセンセイノトクベツジュギョウ |
---|---|
シリーズ名 | 新潮新書 |
装幀 | 新潮社装幀室/デザイン |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 208ページ |
ISBN | 978-4-10-610930-0 |
C-CODE | 0240 |
整理番号 | 930 |
ジャンル | ノンフィクション |
定価 | 990円 |
電子書籍 価格 | 990円 |
電子書籍 配信開始日 | 2021/11/17 |
書評
厳しい時代に求められること―子どもの脳を育てるには―
ヒトの脳は、サバンナで暮らしていたときからほとんど進化していない、と本書は書きます。
私の専門は環境学ですが、なるほどな、と思いました。
本書ではドーパミンという、脳に「ごほうび」として働く脳内物質に触れているのですが、スマホやデジタル・デバイスを操作することでもこれが分泌されます。
「サバンナ脳」しか持ち合わせぬわれわれが、このドーパミンに過剰に晒されればある種の中毒症状を呈します。ましてや脳が未発達な子どもや若者はどうなってしまうのか。
私が校長を務めていた開成中学・高校でも、一時期、ゲームなどによって生活や睡眠のバランスが崩れ、登校できなくなる生徒が一定数、出たことがありました。その対策として、私は合格者説明会で、4月に入学する生徒に「ゲームやスマホは夜9時まで」と言うようにしていました。開成は生徒の自主性を重んじる学校ですが、まずはゲームでもなんでも時間で区切ってみることが、自律、ひいては自主性の発揮に到る、と考えていたからです。
それを思えば、ハンセン氏が住むスウェーデンは冬の夜が長い。寒ければ子どもも外で遊ぶ機会が減るでしょう。そこにゲームやスマホ、SNSが加われば、運動不足、睡眠不足、それに伴う心の不調が自然に増加することになります。著者の危機感は当然です。だからこそ運動の重要性を説く――というのは、私の経験からもうなずけます。
開成は入学以前、それも10歳になるまでに、充分に運動をしてきた子が多い。特に水泳やサッカーなど、左右対称な動きをするスポーツです。東大でも、入学者の6割がスイミングスクールに通っていたという調査があります。こうした点からも、本書の内容には納得させられます。知性の発達と運動、さらに言えば芸術活動に相関があることは、長年、教育に携わってきた者としては実感のあるところだからです。
特に、私が教えていたハーバード大学では、入学に際してその3つを重視します。面白いことに、東大でもピアノを習っていた学生がおよそ半数だそうです。開成でも、中学1年でピアノを、3年でギターを学ばせます。おかげで高校ではバンドが何十組と結成されるのですが。
今の世界は、若者たちに厳しい時代に向かっているように私には思えます。脳を鍛え、知性を磨くことで、新たな時代に立ち向かって欲しい――そう思いました。
(やなぎさわ・ゆきお 北鎌倉女子学園学園長、開成学園前校長)
波 2021年12月号より
文と武は分かちがたい―子どもの脳を育てるには―
私が校長を務める灘中学・高校の創立には嘉納治五郎先生が深く関わっています。先生は「柔道の父」としても知られますが、東京高等師範の校長を長らく務め、教育者としても高名です。先生は「文武両道」を超えた「文武不岐」や「文経武緯」という言葉を残しておられます。どちらも、「文と武は分かちがたいものだ」ということです。本書を読んでまず想起したのはそのことでした。
本書が伝えたいことはきわめてシンプルです。
運動が脳の力を伸ばす、ということです。具体的には、集中力や発想力、記憶力などといった能力はどうすれば伸ばせるのか。そうしたことをやさしく説明していて、説得力があります。
思えば、本校は発想力や集中力、爆発的な瞬発力に優れた生徒が多いのですが、7割近くが運動部に所属し、陸上や水泳ではインターハイ選手も輩出しています。柔道が必修ですし、教育方針にも、運動の奨励を挙げています。
もうひとつ想起したのは、いま教育界でよく話題になる「ソサエティ5・0」です。これは内閣府が提唱している新しい社会像なのですが、簡単に言えば、狩猟社会を「ソサエティ1・0」とすると、農耕社会、工業社会、情報社会に次ぐ5番目の社会、仮想空間と現実空間が高度に融合された社会なのだそうです。
いわば、デジタルとリアルが同居する社会なわけですが、そこで活躍するためには、デジタルな知識と健全な身体が必要でしょう。しかし、本書を読んで思ったのは、なるほど、社会は変化し、技術も進化するでしょう。しかし、脳というのは狩猟時代から変わらない――そのことを忘れてはならないのだなということでした。
もちろん、灘でも中学生全員にパソコンが配付されています。校内Wi-Fiも整備されています。校内へのスマホ等の持ち込みも禁止していません。道具として便利ですし、今後も使われ続けるでしょう。
ただ、いかに便利ではあっても、いかに道具の進化が進もうとも、私たちはそれらと「狩猟時代の脳」で付き合っていかなければならない。
スマホをはじめとするデジタル・デバイスによって、現代の子どもたちにある種の依存症や睡眠障害が広がっている現状があります。そんな時代を生きる子どもたちに、またその親たちに、どうやって状況に負けず脳の力を伸ばし、「ソサエティ5・0」を迎えるか、そのためにも読んでもらいたい一冊です。
(わだ・まごひろ 灘中学校・灘高等学校校長)
波 2021年12月号より
【「日本の読者の皆さんへ」より】
『スマホ脳』(新潮新書)が日本語で刊行されてから、日本のメディアの取材を数多く受けました。その中で様々な質問をされましたが、つきつめれば「これからどうすればいいのでしょうか」ということでした。特に「うちの子をどうすればいいのでしょうか」そして「うちの子の脳にいちばんいいことはなんでしょうか」という質問が主だったように思います。本書はそういった質問への答です。元はスウェーデン語で、親子で読めるように書いたもので、私たちの脳の取り扱い説明書と言えます。
薀蓄倉庫
脳トレで脳は鍛えられない?!
『最強脳―『スマホ脳』ハンセン先生の特別授業―』では、「脳を鍛えるには運動が最も効果的」ということが記憶力や発想力、集中力や自己肯定感、幸福感という面から述べられています。でも、「脳トレをやった方が脳のトレーニングになるのでは?」と思う方も多いかもしれません。
確かに「認知トレーニング」と呼ばれるゲームやアプリ、ホームページはいくらでもあります。ただ、残念ながら、脳トレは脳のトレーニングにはならないのだそうです。世界トップの脳研究者70人がそのテーマの研究結果を大量に読みこんで分析したことがあったのだそうですが、結論としては、「認知トレーニングをしても、そのトレーニングが上手くなるだけ」。脳が鍛えられるわけではなかったそうなのです。
さて、ではどうすればいいのか……は本書でお確かめください。
掲載:2021年11月25日
担当編集者のひとこと2
SNSもロクにやらない、動画も見ない、ゲームもしない。スマホなんて使うのは仕事の時だけだし、メディアはなにかと「スマホ中毒」などと言うけれど、自分には無縁ですよーなどと思っていた私。
ところが、ある人が「自分もそう思っていたけれど、実際にスマホのスクリーンタイムを計ってみたらショックを受けた」と言うのでやってみたら、これが1日3時間以上。1日の1/8をスマホに使ってるの? この私が?
そのショッキングな事実を突きつけたのが本書の著者アンデシュ・ハンセンさん。スウェーデンの人気精神科医である彼が書いた前作『スマホ脳』は、デジタル・デバイスが脳に与える影響を膨大な研究結果から解説し、世界的ベストセラーとなりました。もはや生活必需品のスマホも、付き合い方を誤ると不眠やうつ、成績低下を招くと警告したのです。日本でも同書は60万部に達し、「2021年にもっとも売れた本」となりました。
そのハンセンさんが「親子で読める脳力強化バイブル」として書き上げたのが本書です。『スマホ脳』では「スティーブ・ジョブズはわが子になぜiPadを触らせなかったのか?」という問いが出されていましたが、いわばその解答編が本書です。子どもも大人も、脳の力を伸ばすにはどうすればよいのか?が平易に書かれています。
ここに書かれている彼のメソッド。もはやスウェーデンの学校現場では、「常識」と言われるほど浸透しているのだそうです。(新潮新書編集部・TK)
2022/01/27
担当編集者のひとこと
子どもの「脳力」はどう伸ばす?
今年上半期の新書ベストセラー1位に輝いた『スマホ脳』。同書はスマホをはじめとしたデジタル・デバイスが脳にどんな悪影響を与えるか――を解説する内容でした。その著者アンデシュ・ハンセンさんは、彼の著書を読んだ子を持つ親や教師からさまざまな質問を浴びせられたそうです。「けっきょくうちの子はどうすればいいんでしょう?」「子どもの脳に一番いいことってなんでしょう?」といったことです。
そこで現地スウェーデンで急遽刊行されたのが『最強脳―『スマホ脳』ハンセン先生の特別授業―』。人口約1000万人のスウェーデンで10万人以上の生徒たちが読み、学んだのは「脳を鍛えるには運動すること」というシンプルなメッセージ。もちろん親や教師たちも読み、もはや教育大国スウェーデンの教育現場では「ハンセン先生」のメソッドは“常識”となっているそうなのですが、その内容たるや、「気分が上がり」「集中力が上がり」「記憶力がよくなり」「発想力が上がり」「成績が上がり」「ゲームがうまくなり」「スマホに頼らなくなる」……というもの。では、具体的にどうすればよいのか?
本書を手に取っていただければ、なぜ運動でそのような効果が得られるのか、どのような運動が効果的なのか、科学的かつわかりやすく示されていることがおわかりいただけるだろうと思います。子を持つ親として、個人的にも納得の一冊です。
2021/11/25
著者プロフィール
アンデシュ・ハンセン
Hansen,Anders
1974年生まれ。精神科医。スウェーデン・ストックホルム出身。ストックホルム商科大学でMBA(経営学修士)を取得後、名門カロリンスカ医科大学で医学を学ぶ。『スマホ脳』『ストレス脳』『運動脳』が世界的ベストセラーに。科学ナビゲーターとしても各メディアで活躍中。
久山葉子
クヤマ・ヨウコ
翻訳家、エッセイスト。神戸女学院大学文学部卒。スウェーデン大使館商務部勤務を経てスウェーデン在住。訳書に『スマホ脳』『サルと哲学者』『メンタル脳』『最適脳』など多数。著書に『スウェーデンの保育園に待機児童はいない』がある。