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ストレス脳

アンデシュ・ハンセン/著 、久山葉子/訳

1,100円(税込)

発売日:2022/07/19

  • 新書
  • 電子書籍あり

シリーズ累計85万部突破! その不安、すべて脳のせい。対人関係、デジタル、コロナ……「人類史上最悪のメンタル」への処方箋。『スマホ脳』著者最新作!

病気や飢餓などのリスクを克服し、人類はかつてないほど快適に生きられるようになった。だが、うつや不安障害は増加の一途……孤独にデジタル社会が拍車をかけて、現代人のメンタルは今や史上最悪と言っていい。なぜ、いまだに人は「不安」から逃れられないのか? 幸福感を感じるには? 精神科医である著者が最新研究から明らかにする心と脳の仕組み、強い味方にもなる「ストレス」と付き合うための「脳の処方箋」。

目次
日本の読者の皆さんへ
まえがき――なぜ人は不安から逃れられないのか?
第1章 私たちはサバイバルの生き残りだ
「適者生存」とはどういうことか/私たちは幸せでいるようにできていない?
第2章 なぜ人間には感情があるのか
感情が人を動かす/知性はオートマ化されている/「正しい」感情が生存へと導く/幸せが永遠ではない理由
[コラム]あなたと私の脳は違う
第3章 なぜ人は不安やパニックを感じるのか
約4分の1が経験する「パニック発作」/火災報知器の原則/PTSDと記憶の関係/忘れたい記憶は「重要な記憶」/「あえて思い出す」ことの効能/「正常」と「治療」の境目/不安は自然の防御メカニズム
[コラム]恐怖症と進化/不安を騙すテクニック
第4章 人はなぜうつになるのか
うつとウイルス/かつては半数が大人になる前に死んだ/ストレスと感染症の関係/地獄の就職面接で免疫系が活性化!?/人間はウイルスの食べ放題ビュッフェ/炎症が脳に影響する?/うつに影響する44もの遺伝子/うつのリスクはこうして高まる/現代最大の炎症要因とは/肺炎や糖尿病と変わらない/悩むのは悪いことか?
[コラム]大統領と感染症
第5章 なぜ孤独はリスクなのか
孤独がうつのリスクを高める/孤独と病気の関連性/孤独が活性化する神経/「社交欲求」が存在するわけ/「将来的な孤独」は「事故」より危険?/孤独の「症状」/「孤独度ポイント」を計る/何人とつきあえばいい?/社交欲求の肉体的側面/対面とオンラインの違い/女子を襲うデジタルライフの問題点/SNSと比較欲求/孤独パンデミック
[コラム]隔離vs.飢え/人生で最も孤独な時期は?/史上最も売れた薬
第6章 なぜ運動でリスクを下げられるのか
自転車テストとうつの関係/ブレーキをかけるアクセルペダル/うつを防ぐ方法/運動の効果の検証/私たちの歩数は激減している/不安と運動の関係は?/精神科医が「ストレス」に処方するもの/運動の最低量/自信を向上させるには/なぜ人は歩かなくなったのか/進化を逆手に取る/脳は抜け目ない――しかし賢くはない/「身体」を思い出そう
[コラム]万能薬など存在しない!
第7章 人類の歴史上、一番精神状態が悪いのは今なのか?
田舎での生活はうつが少ない/10年単位で精神状態は悪くなっている?/私たちのライフスタイルの何が問題なのか/苦しみを減らす方法はある
第8章 なぜ「宿命本能」に振り回されてしまうのか?
自分をコントロールできない理由/知識についての知識こそが解決の糸口/一生変わらないわけではない
第9章 幸せの罠
最も建設的な「幸せの定義」
あとがき
10の最も重要な気づき
謝辞
訳者あとがき

書誌情報

読み仮名 ストレスノウ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 256ページ
ISBN 978-4-10-610959-1
C-CODE 0247
整理番号 959
ジャンル ノンフィクション
定価 1,100円
電子書籍 価格 1,100円
電子書籍 配信開始日 2022/07/19

書評

知ることが救いになる、こともある

田村淳

 この本は、きっと誰かの救いになるはずだ。
 そう感じたことをまず書いておこうと思う。
 僕はHSPという気質を持っている。
 HSPとはHighly Sensitive Personの略で、生まれつき「感受性が非常に強く、敏感な気質を持った人」の意味で、「繊細さん」と言った方が通じるだろうか。
 僕がそのことに気づいたのは、まさにその『「繊細さん」の本』の著者である武田友紀さんとラジオ番組でご一緒した時だった。最初は、へえ、そんな人がこの世にはいるのか、くらいに受け止めていたのだが、自分に当てはまることが多すぎる。HSPの専門カウンセラーである武田さんも、「淳さんはまずHSP」と言う。チェックシートをチェックしたら、まんまとそうだった。
 その時の気分はどうだったかというと――ホッとしたのだ。自分はHSPだったのか、と安心したのだ。HSPの存在をその番組で知ったばかりだというのに。
 僕は昔から、神経質だとか潔癖性だとか言われてきた。内心、「違うのにな」と思いながら、でもその居心地が悪い感じのまま僕は40過ぎまで生きてきた。
 例えばドアノブが気になる。鍵穴を中心に、人の顔に見えてしまう。二つ穴が開いているような物でもそうだ。やっぱり人の顔に見える。一回そう見えてしまうと他の物に見えなくなる。その顔に見られているような気がして仕方なくなり、集中が完全にそちらに奪われる。
 顔に見えちゃうんだよね、と人に相談しても、「気のせいだよ」「気にすんなよ」と返される。気にしていることを気にするなというアドバイスは何の役にも立たない。僕は自分がどこかヘンなのだろうな、と思いながら過ごしてきたのだ。
 風呂場のシャンプーやリンスの容器の裏が汚れていないか気になる。人の握ったおにぎりが食べられない。でもその辺に敷いたレジャーシートで雑魚寝することなんかは自然にできる。みんなと鍋も突っつくのも平気だ。
 だから潔癖症とは違うんじゃないかな、と思うのだけれど、人からは「潔癖症だ」「神経質だ」と言われる。その違和感。自分はHSPという気質なのだとわかった瞬間、その違和感が解消したのだ。
『ストレス脳』という本は、「人はなぜ、こんなに快適な暮らしを手に入れたのに、不安からは逃れられないのか?」という問いから始まる。
 大昔、人間がサバンナに暮らしていた頃と較べて、飢餓や感染症、人間同士の暴力的な争いなどからは遠く離れたはずなのに、うつや不安障害、PTSDやパニック障害に襲われる人があまりに多いのはなぜなのか。人の心が抱えてしまう問題を、脳と進化の観点から科学的に、わかりやすく解説する一冊だ。
 扁桃体という脳内の部位を火災報知器に例えている箇所がある。扁桃体は危険を察知すると反応する。おかげで人は不安を感じ、危険から逃れようとする。生き延びるためには大事なことだ。だが、この反応が過剰なら、例えば不安障害を引き起こす。パニック障害になる。
 著者はこう書く。「うつも不安も、人間が生き延びるために備えた防御のメカニズムなのだ」と。
 そうだろうと思う。そもそも必要だから、ストレスだって不安だって存在するのだ。
 僕のHSPも同じに思える。
 僕の先祖の先祖の先祖の頃から、生き延びるために備えられていた気質が、現代の僕にまで伝わる。でもHSPを知らなかった僕は自分がなぜそんなに人とは違う反応をしてしまうのかわからない。どこか居心地の悪い思いをしながら生きることになる。
 生きづらい、とまでは言えなかったかもしれない。実際、テレビ番組の司会などやっていると、この「気づいてしまう」気質のおかげと思える場面に何度も遭遇する。「この人、何か言いたそうだな」「振ってみたら面白いかな」そういうことが番組が進行している中でもわかる。
 だがその一方、自分が何者かわかっていないということは、世界に違和感を抱かせる。なにかヘンだ。そう思いながら生きている人、場合によっては生きづらさやしんどさを抱えている人は、世の中には案外数多いのではないか。
 著者はこうも書いている。「知識こそが鍵」と。知識を得ることが、その人の生き方さえも変える糸口になる――僕が、自分をHSPだと知ったことがそうだったように。
 だからこそ思うのだ。
 この本は、きっと誰かの救いになるはずだと。

(たむら・あつし タレント)
波 2022年8月号より

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著者プロフィール

1974年生まれ。精神科医。スウェーデン・ストックホルム出身。ストックホルム商科大学でMBA(経営学修士)を取得後、名門カロリンスカ医科大学で医学を学ぶ。『スマホ脳』『ストレス脳』『運動脳』が世界的ベストセラーに。科学ナビゲーターとしても各メディアで活躍中。

久山葉子

クヤマ・ヨウコ

翻訳家、エッセイスト。神戸女学院大学文学部卒。スウェーデン大使館商務部勤務を経てスウェーデン在住。訳書に『スマホ脳』『サルと哲学者』『メンタル脳』『最適脳』など多数。著書に『スウェーデンの保育園に待機児童はいない』がある。

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