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1,100円(税込)

発売日:2024/01/17

  • 新書
  • 電子書籍あり

シリーズ累計100万部突破! 現代人のメンタルは「史上最悪」。あらゆる世代を蝕む「うつ」「不安」「孤独」。『スマホ脳』著者がやさしく解説する心の取説(トリセツ)。

「史上最悪のメンタル」と言われる現代人。とりわけ若年層の心の問題は世界的に深刻だ。ユニセフが警告を発し、アメリカ政府は「国家的危機」とまで言及、日本でも高校生の30%、中学生の24%、小学4~6年生の15%が中等度以上のうつ症状を訴えているとの調査結果もある。脳科学からメンタルの問題を解説した世界的ベストセラー『ストレス脳』をあらゆる世代向けに、わかりやすくコンパクトにした〈心の取説(トリセツ)〉。

目次
日本の読者の皆さんへ
はじめに――人は「いつも幸せ」でいられるだろうか
第1章 なぜ私たちは生きているのか
みんな「私」につながっている/生きのびられる人とは?/飢えて死ぬか、チャレンジして死ぬか/半数が若くして死ぬ世界/脳は命が最優先/[コラム]「強い」のと「適応できる」のとどちらが生きのびるのか?
【この章のポイント】
第2章 なぜ感情があるのか
脳が感情をつくる/[コラム]感情はどこにある?/自分の行動を決めているもの/「直感で選ぶ」わけ/[コラム]感情は感染する/繊細さん(HSP)/集中力には限界がある
【この章のポイント】
第3章 なぜ不安を感じるのか
幸せな時間は過ぎてしまうもの/脳は幸せなんてどうでもいい/[コラム]幸せでなければ不幸?/ストレスとは何か/不安とストレスの違い/見えている世界には「時差」がある/脳内の火災報知器/パニック発作が起きる理由/パニック発作が起きたら/自分はおかしいのだろうか/[コラム]不安に対処するためのテクニック/不安になっている人がいたら/不安を理解すれば
【この章のポイント】
第4章 なぜ記憶に苦しめられるのか
メンタルの波/「記憶」も脳の道具/同調圧力が記憶を変える/見えないゴリラ/なぜ覚えていないのか/[コラム]脳の「記憶センター」と「警報センター」/PTSDとの向き合い方/記憶はユーチューブではない/つらい記憶にフタをするのはNG/脳を信じてはいけない
【この章のポイント】
第5章 なぜ引きこもりたくなるのか
「強い脳」とはどんな脳か/なぜつわりがあるのか/[コラム]免疫系以外の防御システム/引きこもりたくなるわけ/恐怖症の原因/悩む時間は脳がくれた「選択の時間」/[コラム]戦争、コロナ禍、気候変動/「うつ」の反対語は?/助けを求めよう
【この章のポイント】
第6章 なぜ運動でメンタルを強化できるのか
脳も身体の一部/ストレスにつける薬/「うつ」のプロセス/脳は「作り話」をする/[コラム]薬とセラピー/人は歩いて進化した/成績を上げた実験/どんな運動でもいい?/うつへの防御/運動をしない理由はある?
【この章のポイント】
第7章 なぜ孤独とSNSがメンタルを下げるのか
なぜ人と一緒にいると幸せなのか/触れることの重要性/一緒に笑うことの意味/孤独の怖さ/孤独と1人の違い/同調圧力から逃れるには/[コラム]「孤独度ポイント」の減らし方/比較がメンタルを下げる/なぜスマホはメンタルを下げる?/セロトニン・レベルの影響
【この章のポイント】
第8章 なぜ「遺伝子がすべて」ではないのか
遺伝か? 環境か?/ゲノム解読でわかったこと/自分の意志を保つには/悪い未来の作り方/知識は解毒剤になる/科学的に考えれば/[コラム]うつや不安に飲み込まれないために
【この章のポイント】
第9章 なぜ「幸せ」を追い求めてはいけないのか
“いつまでも幸せに暮らしましたとさ”?/現代人は幸せか/狩猟採集民の幸福度/[コラム]幸せを感じられないのはおかしい?/脳の予測と現実の差/幸せのレシピ
【この章のポイント】
おわりに――人間はこんな風にできている
編集部より
訳者あとがき

書誌情報

読み仮名 メンタルノウ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 208ページ
ISBN 978-4-10-611024-5
C-CODE 0247
整理番号 1024
ジャンル 家庭医学・健康
定価 1,100円
電子書籍 価格 1,100円
電子書籍 配信開始日 2024/01/17

書評

脳は「昔のままの世界にいる」

池上彰

 昔に比べれば快適な暮らしができるようになったはずなのに、なぜ私たちは不安に苛まれ、メンタルを病んでしまったりするのだろう。とりわけコロナ禍以降に、精神状態が不安定になった人が増えたという。これは大人の世界ばかりでなく、子どもたちの世界でも同様だ。むしろより深刻かもしれない。
 文部科学省によると、2022年度の小中学校における不登校者数は二九万九〇四八人と、ほぼ三〇万人に達した。これは過去最多。さらに警察庁と厚生労働省の統計によると、2022年の小中高の児童生徒の自殺者数は五一四人と、こちらもまた過去最多を記録している。
 なぜ私たちは精神的に苦しむのか。もちろん原因は多様だろうが、その大きな理由は、私たちの脳が、「昔のままの世界にいる」からだという。脳の勘違いによって、私たちは不安になったりするというのだ。そう知ると、少し気持ちが楽になるのではないか。
 著者のアンデシュ・ハンセン氏はスウェーデンの精神科医。人間の進化の過程からすれば人間の精神はデジタルに対応できない。だからスマホから離れる必要がある。著者がこう説いた『スマホ脳』は世界的にベストセラーになった。
 となれば、出版社は著者に次作の執筆を要請することになる。こうして出版されたのが『ストレス脳』で、これを一〇代向けに書き直したのが本書だ。ティーンエージャー向けなので、易しく読めるが、「そうだったのか」と知る事実が満載だ。
 私たちが生きているのは、私たちの祖先が生きのびることができたから。私たちの身体や脳は、生きのびて子孫を残すために進化した。そのために脳は、あらゆる危険を遠ざけようとする。そこで使われるのが「感情」だ。恐怖や不安という感情を使って本体を生きのびさせてきたという。人間の先祖はアフリカのサバンナで狩猟採集民として暮らしていた。その時代は、子どもの半数が一〇代になる前に死んでいた。私たちの脳は、いまだにその世界に住んでいると勘違いしている。
 サバンナでの生活は過酷だった。草むらで何かが動いただけでびくりとするのは、「危険な動物が隠れているかもしれない」と思うからだ。「独りぼっちになるのも嫌いで、群れの中にいられるように全力を尽くします。サバンナでは群れで暮らすのが1番安全で、独りになったら死んだも同然だったからです」と解説されると、なるほどと思う。だから私たちは「独りぼっちだ」と思うと、不安という「感情」に動かされ、仲間の集団に入ろうとするわけだ。孤独が怖いのは当然だ。長期間の孤独は、サバンナでは死を意味していたのだ。
 どうせ感情に左右されるなら、幸せな気持ちが長続きした方がいい。そう思うだろう。しかし、幸せな気持ちが続いていると、人間は次の行動に移ろうとはしなくなる。サバンナでボーッとしていたら、いつ猛獣に襲われるかもしれないし、食べ物が手に入らずに飢え死にしてしまうかもしれない。そう考えると、脳としては、幸せな気持ちをなるべく短くした方が生きのびやすいと判断するだろう。こうして私たちが幸せに感じる時間はすぐに終わってしまうのだ。それは不満かもしれないが、脳がそのように判断してきたからこそ、私たちの祖先は生きのびることができたというわけだ。
 では、ストレスはどうして起きるのか。それは「闘争か逃走か」と呼ばれる状態になるからだ。サバンナに生活していたら、危険はつきものだ。何か起きるたびに、「ここは闘争つまり戦う場合か、それとも逃走、逃げる場合か」を判断しなければならない。これがストレスだ。
 これに対し「不安」は「事前のストレス」だという。たとえば先生に怒られた人はストレスを感じるが、「明日、先生に怒られたらどうしよう」と考えるのが「不安」だという。不安を感じるのは嫌なもの。でも不安とは脳が「何かがおかしい」と私たちに知らせるための手段なのだという。であるならば、不安を感じたら、「脳はどんな警告を発しているのだろうか」と考えるだけで、不安はかなり解消されるのではないか。それでも不安に感じたら、「脳が勘違いしているな」と思うこと。これで不安はだいぶ解消されるだろう。

(いけがみ・あきら 東京工業大学特命教授/ジャーナリスト)
波 2024年2月号より

蘊蓄倉庫

誰もがメンタルに問題が生じる可能性がある時代

 WHO(世界保健機関)の試算によれば、世界で2億8000万人が不安障害を抱え、2億8000万人がうつに苦しんでいるそうです。4人に1人が生涯でうつや不安障害を経験し、3人に1人がうつの原因ともなる「孤独」に陥ります。孤独は「1日15本の喫煙」と同等のリスクがあり、寿命を縮めることがわかっています。SNSは10代の自殺念慮の原因の6~13%に及ぶ可能性があるとも指摘されています。
 10代に関して言えば、ユニセフは世界の10~19歳の若者の7人に1人以上が心の病気の診断を受けていると報告しています。米国のCDC(疾病予防管理センター)は2023年2月、10代のメンタルヘルス問題は「国家的危機」と警鐘を鳴らしています。
 日本では高校生で30%、中学生で24%、小学4年生~6年生で15%が「中等度以上のうつ症状」を訴えているとの調査結果があります。日本全国に配置されたスクールカウンセラーは1万人を超えていますが、にもかかわらず、2022年に自殺した小中高校の児童・生徒は過去最多と史上最悪となりました。
 老若男女を問わず、現代のわれわれは日常的にメンタルを脅かすリスクに囲まれていると言ってもいいのかもしれません。

掲載:2024年1月25日

担当編集者のひとこと

10代の若者たちと彼らを見守る方々に

 わが子を見ていると、10代が置かれている状況は自分が同じ年齢だった頃とは大きく異なっているなあと思うことがしばしばです。私の頃はそもそもインターネットがありませんでしたし、SNSもない。今とはエンタテインメントのバリエーションも異なれば情報収集の仕方、友人とのコミュニケーションのあり方も違うのでしょう。それはつまり、私などが感じていた世界との違和感や孤独のあり方、絆のつむぎ方や達成感の感じ方も違うのかもしれず、よほど複雑な世の中を彼らは生きているように見えます。
 実際、世界的にも10代の若者のメンタルについてはさまざまな形で危機感が表明されています。ユニセフは世界の10~19歳の若者の7人に1人以上が心の病気の診断を受けていると報告し、米国のCDC(疾病予防管理センター)は2023年2月、10代のメンタルヘルス問題は「国家的危機」とまで危機感を表明しています。
 日本も例外ではありません。なんと高校生で30%、中学生で24%、小学4年生~6年生で15%が「中等度以上のうつ症状」を訴えているとの調査結果が出ています。現在、日本全国に配置されたスクールカウンセラーは1万人を超えているそうですが、その一方で、文部科学省によれば、2022年に自殺した小中高校の児童・生徒は過去最多と史上最悪です。
 現代の若者の置かれている状況は思いのほか深刻なのではないか――この本を出すに当たって感じていたのはそんなことでした。
 本書は「10代のメンタルはかつてないほど悪い」と警告する精神科医のアンデシュ・ハンセン氏が前作『ストレス脳』を児童文学作家のマッツ・ヴェンブラード氏と10代の若者向けに書き直したものです。
 私が編集作業を行いながら思い出していたのは、『ストレス脳』を読んで、涙が止まらなかったと言っていた働き盛りの年齢の読者のことでした。あるいは、「自分がおかしいのだと思っていた」「自分を少し許してあげられた」「知識は生きる力になるのだと実感した」といった数々の読者の声でした。
 今度は本書が10代の若者たちに、そして彼らを見守る方々の手に届き、同じように現代の複雑な世界の生きづらさから少しでも解放されたら、と祈っています。

2024/01/25

著者プロフィール

1974年生まれ。精神科医。スウェーデン・ストックホルム出身。ストックホルム商科大学でMBA(経営学修士)を取得後、名門カロリンスカ医科大学で医学を学ぶ。『スマホ脳』『ストレス脳』『運動脳』が世界的ベストセラーに。科学ナビゲーターとしても各メディアで活躍中。

1964年スウェーデン・ストックホルム生まれ。児童文学作家。

久山葉子

クヤマ・ヨウコ

1975年兵庫県生まれ。翻訳家。エッセイスト。神戸女学院大学文学部卒。訳書多数。

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