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CBDC 中央銀行デジタル通貨の衝撃

野口悠紀雄/著

1,980円(税込)

発売日:2021/11/17

書誌情報

読み仮名 シービーディーシーチュウオウギンコウデジタルツウカノショウゲキ
雑誌から生まれた本 Foresightから生まれた本
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判
頁数 234ページ
ISBN 978-4-10-432907-6
C-CODE 0033
ジャンル ノンフィクション
定価 1,980円
電子書籍 価格 1,980円
電子書籍 配信開始日 2021/11/17

ついに始まった「通貨覇権戦争」の本質を、第一人者が徹底解説!

各国の中央銀行が乗り出した通貨システムの大変革が、ビットコインとは比較にならないほど巨大な影響を、世界に与えようとしている。送金情報を国家が把握し、市中銀行が崩壊するという懸念。通貨覇権を目指す「デジタル人民元」を前に、大きく後れを取った米国と日本。「デジタル通貨危機」を乗り越える道を明らかにする。

目次
はじめに
1章 リブラが口火を切ったデジタル通貨
1 世界通貨「リブラ」の構想が与えた衝撃
2 電子マネーではなく、仮想通貨だから重要
3 本当は日本にとっても大問題
4 プライバシーを求めるのか? 管理社会を許容するのか?
5 価格安定化は容易でない
6 「リブラ」から「ディエム」へ
2章 CBDCの仕組みと必要性
1 CBDCの仕組み
2 国民の利便性向上と金融包摂
3 中央銀行の立場から見て、なぜデジタル通貨が必要か?
4 複雑でコストが高い現在の仕組み
3章 デジタル人民元は大きな脅威となる
1 デジタル人民元の基本構造
2 デジタル人民元の詳細構造
3 デジタル人民元はいかなる影響を及ぼすか?
4 広範に使われている電子マネーはどうなるのか?
5 デジタル人民元の目的は電子マネーの排除?
4章 中央銀行デジタル通貨は社会の基本を変える
1 中央銀行によるデジタル通貨発行の競争が加速
2 銀行預金が流出するという大問題
3 銀行預金の流出への対処法
4 プライバシー問題にどう対処するか?
5 中央銀行による通貨発行の独占は必要か? 望ましいか?
5章 ビットコイン創始者は「国の管理から自由な通貨」を求めた
1 「プライバシーが守られる通貨」に惹かれた人々
2 ねじ曲げられた当初の理想
3 資金逃避先となったビットコイン
4 アンドリーセンがビットコインに夢を託す
5 仮想通貨の重要性が広く認められるようになった
6 ビットコインは「デジタル・ゴールド」になったか?
6章 「デジタル円」の前に立ちはだかる厚い壁
1 「デジタル円」は動き出すのか?
2 日本はキャッシュレス後進国
3 手数料収入を当てにするメガバンクのデジタル通貨戦略は間違い
4 乱立する日本の電子マネー
5 「デジタル円」の利用料をゼロにできるか?
7章 パラダイムの転換に成功した社会が未来を拓く
1 デジタル人民元のインパクト
2 スウェーデンやユーロはCBDC導入に向かう
3 デジタルドルはどうなるか?
4 「ディエム」はどうなるか?
5 CBDCはパラダイムの転換
終章 デジタル通貨時代に向けての5つの提言
1 危機感を持って通貨主権を守れ
2 デジタル通貨政策を確立せよ
3 銀行のビジネスモデルを、「手数料」から「データ利用」に大転換せよ
4 個人情報主権を確立せよ
5 デジタル通貨をきっかけとして、日本の未来を構築せよ
索引

書評

「デジタル通貨」がもたらすマネーの世界の大変化

幸田博人

 本書のタイトルにある「CBDC」、「デジタル通貨」と聞いても、金融関係の専門家でなければイメージは簡単には湧かないし、容易には理解できないであろう。
 CBDCとは、中央銀行デジタル通貨(Central Bank Digital Currency)の略称であり、各国中央銀行の債務として発行され、デジタル化された法定通貨建て通貨を意味し、本格的な発行に向け実用化を進めている段階にある(バハマなど一部発行している国もある)。
 このCBDCの意味することは何か、それが経済や社会にどういうインパクトをもたらすのか、私のように長年金融機関にいたものであっても、簡単には、このテーマは取り扱えない。
 2021年も新型コロナウイルスに翻弄され、世界中の政府・社会・経済などを支えていた基盤の脆弱性が大いに炙りだされている。そうした社会を支えている根幹である通貨を巡る新しい動きが、我々の身近なところに忍び寄り、表舞台に上がろうとしている。本書『CBDC 中央銀行デジタル通貨の衝撃』は、その局面の意味することについて、緻密でありながら、わかりやすく正確に理解できるように解説したものである。
 本書は、著者野口悠紀雄氏が2019年5月に刊行した『マネーの魔術史―支配者はなぜ「金融緩和」に魅せられるのか―』の続編である。『マネーの魔術史』の最後のところで、著者は、「コンピュータ技術の進歩によって、新しい通貨である仮想通貨が登場した。これは、政府の自由にはならないマネーだ。(中略)マネーの歴史がいま大きな転換点に差し掛かっていることは間違いない」と記した。今回、本書において、そのマネーの歴史の大きな転換点の意味を詳述している。
 本書の主な論点を挙げれば、フェイスブックの「リブラ」構想とその後の「ディエム」の位置づけ(第1章)、CBDCの仕組み(第2章)、「デジタル人民元」の発行に向けた動きとその影響(第3章)、CBDCは何をもたらすのか(第4章)、CBDCの一つの契機となった仮想通貨ビットコインの評価(第5章)、「デジタル円」はどういう位置づけか(第6章)など、複雑で錯綜した話をその根本から解説している。
 本書を通じて、現在の経済・社会を支えている「通貨」とは、どういう機能・役割を持っているか、原理原則に立ちもどることもできる。またデジタル通貨について、「リブラ」、「ディエム」の解説がなされ、さらにCBDCの世界各国と日本の状況を俯瞰し、デジタル通貨の発端となった仮想通貨についてひもとくという構成は、経済分野に通じていない読者にとっても、至れり尽くせりの感がある。体系的、実践的であることに加えて、プロアクティブな視点で、このデジタル通貨の問題について解説しており、大変な力作である。
 とはいえ、単にCBDCの仕組みと影響の解説にとどまらない。本書のスコープは、「デジタル人民元」の脅威が何をもたらすか、さらには銀行のビジネスモデルの問題や個人情報保護との関係など様々な論点を提示し、CBDCのインパクトの大きさを十二分に伝えてくれる。
 野口氏は、長年、経済の最先端の問題に、将来を見据えた提言を続けてこられている。CBDCに関しても、5つの提言を行い(終章)、このCBDCのテーマを、経済構造の基本問題として位置づけ、マネーの世界の変化が経済や社会の仕組みを根本から変える可能性について警鐘を鳴らしている。
 デジタル通貨は、デジタルであるがゆえに、国境を飛び越え、瞬時に変化をもたらす可能性があることを念頭におき、そのインパクトがどう生じるか、絶えずウォッチし、いつでも対応できるようにすることが重要である。
 私は、野口氏が気鋭の経済学者として華々しい活躍をはじめた40年前に、一橋大学経済学部の野口ゼミ第3期生として教えを受けた。今回、こうして書評を執筆する機会を得たことに感謝している。私は現在、いくつかの大学で教鞭をとっており、若い学生が、この変化の激しい金融・資本市場の世界についてどういう視点を持つべきか、その構造的な変化を感じとり本質的な認識につなげていくかなど大切な観点を会得することが重要と感じている。本書には、学生にとっても、「金融論」、「通貨論」の本質に触れるとともに、日本の将来の「社会」や「経済」のあり方に想いをはせる重要なヒントがふくまれていると考える。
 野口氏からこうした将来を考えていく材料が提示されたことで、社会人から学生まで幅広い方々が、この「デジタル通貨」の意味することに関心を持ち危機感を有して、将来を展望していくための一助になることを期待したい。

(こうだ・ひろと (株)イノベーション・インテリジェンス研究所社長)
波 2021年12月号より
単行本刊行時掲載

著者プロフィール

野口悠紀雄

ノグチ・ユキオ

一橋大学名誉教授。1940年東京生まれ。1963年東京大学工学部卒業、1964年大蔵省入省、1972年イェール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学ファイナンス研究科教授などを歴任。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書『情報の経済理論』(東洋経済新報社、日経・経済図書文化賞)、『財政危機の構造』(東洋経済新報社、サントリー学芸賞)、『バブルの経済学』(日本経済新聞社、吉野作造賞)、『「超」整理法』(中公新書)、『ブロックチェーン革命』(日本経済新聞出版社、大川出版賞)、『戦後経済史』(日経ビジネス人文庫)など多数。近著に『リープフロッグ』(文春新書)、『「超」英語独学法』(NHK出版新書)、『「超」メモ革命』(中公新書ラクレ)、『良いデジタル化悪いデジタル化』(日本経済新聞出版)、『人生を変える「超」独学勉強法』(プレジデントムック)、『データエコノミー入門』(PHP新書)など。

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