芸能界誕生
1,034円(税込)
発売日:2022/09/20
- 新書
- 電子書籍あり
ナベプロ、ホリプロ、田辺エージェンシー、サンミュージック、ジャニーズ……。キーマンたちの貴重な証言を多数収録。壮絶な舞台裏を初めて明かす!
「芸能界」というビジネスは、いかにして始まったのか――。占領期のジャズブームに熱狂して音楽を始めた若者たちは、伝説のステージ「日劇ウエスタン・カーニバル」へ。成功と挫折を経て、彼らは裏方に転身、それぞれがプロダクションを立ち上げ、芸能界を新しく作り変える。その歴史は、戦後日本の“青春”そのものだった。スター誕生の物語、テレビ局やレコード会社との攻防戦など、壮絶な舞台裏を明かすノンフィクション。
引用・出典一覧
書誌情報
読み仮名 | ゲイノウカイタンジョウ |
---|---|
シリーズ名 | 新潮新書 |
装幀 | 新潮社装幀室/デザイン |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 336ページ |
ISBN | 978-4-10-610966-9 |
C-CODE | 0273 |
整理番号 | 966 |
ジャンル | 社会学、思想・社会 |
定価 | 1,034円 |
電子書籍 価格 | 1,034円 |
電子書籍 配信開始日 | 2022/09/20 |
インタビュー/対談/エッセイ
「芸能界」を作り変えた、若者たちの群像劇
「日劇ウエスタン・カーニバル」といえば、日本の音楽史を代表する音楽イベントだ。ここからロカビリーブームが生まれ、グループサウンズ(GS)ブームも巻き起こし、音楽イベントの新しい形をつくった。けれど、それだけではない。現在の「芸能界」というショービジネスを生む震源地ともなったのだ。
たとえば1958年2月に開催された「第1回日劇ウエスタン・カーニバル」には、後に「ホリプロ」を創業する堀威夫がウエスタンバンド「スイング・ウエスト」のリーダーとしてステージに立っていた。堀だけではない。同じバンドでドラムを叩いていたのは「田辺エージェンシー」を立ち上げることになる田邊昭知。さらに「ウエスタン・キャラバン」のリーダー・相澤秀禎も「サンミュージック」を設立することになった。つまり戦後を代表する芸能プロダクションの創業者がプレイヤーとして舞台に揃っていたのだ。さらにいえばこのイベントを主導し「ロカビリーマダム」と呼ばれ脚光を浴びたのは「渡辺プロダクション」の渡邊美佐、彼女と協力し重要な役割を担ったのは、美佐の妹で「戦後初の芸能プロダクション」と呼ばれるマナセプロの曲直瀬信子、「イザワオフィス」を立ち上げることになる井澤健は山下敬二郎の付き人として参加し、平尾昌晃のマネージャーを務めていたのは「呼び屋」としてビートルズ来日を実現させる永島達司だった。ジャニーズ事務所のジャニー喜多川もその後の「ウエスタン・カーニバル」で大きな役割を果たすことになる。「芸能界」の重要人物が多数関わっていたのだ。
「日劇ウエスタン・カーニバル」が始まった1958年はちょうど東京タワーが竣工し「テレビ」時代が到来した時。それまでレコード会社が強大な力を誇っていた芸能ビジネスの転換点にもなった。それに「日劇ウエスタン・カーニバル」が舞台になったロカビリーブームやGSブームも「芸能界」に大きな影響を与えていくことになる。
本書は曲直瀬道枝、堀威夫、田邊昭知、飯田久彦、渡辺プロ新卒1期生の工藤英博、3期生の阿木武史(敬称略)を始めとする関係者への取材で得た貴重な証言や過去の資料をもとに、日劇ウエスタン・カーニバルに青春を捧げた若者たちを描いた群像劇である。同時に芸能プロダクション、ひいては「芸能界」という芸能ビジネス成り立ちの物語だ。どうしてプレイヤーであった彼らが裏方に回り、芸能プロダクションを立ち上げることになったのか、若者たちがどんな苦悩と挫折を味わいながら、そこにたどり着いたのか――。芸能ビジネスが岐路に立たされている現在、その始まりがどんなもので、どのように変遷し、いかに発展していったのか、その歴史を知ることは、新しい時代を作る活力と道標になるに違いない。
(とべた・まこと てれびのスキマ、ライター)
波 2022年10月号より
蘊蓄倉庫
「最古の芸能プロダクション」とは?
渡辺プロダクション、ホリプロ、田辺エージェンシー、サンミュージック、ジャニーズ……いずれも現在の芸能界に多くのタレントを輩出する「大手芸能事務所」ですが、はたしてその“起源”はどのようなものなのか――それを探るべく、1958年に開催された伝説のステージ「日劇ウエスタン・カーニバル」を詳しくレポートしたのが、本書『芸能界誕生』です。しかし、さらに時間を遡ると……。
敗戦直後の宮城県登米市。道に迷った進駐軍将校が、ひとりの老婆と田舎道で出会います。この偶然の邂逅が、「戦後芸能界の起点」となるのですが、そのことはあまり知られていません。この老婆こそ、渡辺プロダクションの創業者である渡邊晋の妻・渡邊美佐の祖母・曲直瀬ユキヱ。そして、彼女の娘である曲直瀬花子とその夫・正雄が仙台で始めた「オリエンタル芸能社(現在のマナセプロダクション)」こそが、現存する最古の戦後生まれの芸能プロダクションなのです。その詳しい経緯については、ぜひ本書でご確認してみてください。
掲載:2022年9月22日
著者プロフィール
戸部田誠(てれびのスキマ)
トベタ・マコト
1978(昭和53)年生まれ。ライター。ペンネームは「てれびのスキマ」。「週刊文春」やYahoo!ニュースで、番組レビューや芸人論などをテーマに執筆。著書に『タモリ学』『1989年のテレビっ子』『笑福亭鶴瓶論』『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』『売れるには理由がある』など。