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今月の表紙の筆蹟は、山田章博さん。

波 2022年10月号

(毎月27日発売)

100円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2022/09/27

発売日 2022/09/27
JANコード 4910068231024
定価 100円(税込)
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阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第61回
【窪 美澄『夏日狂想』刊行記念特集】
川本三郎/架空の女性作家への熱いオマージュ
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【千早 茜『しろがねの葉』刊行記念特集】
大矢博子/その場所で生きる、という選択
[対談]千早 茜×村山由佳/「無の世界」の美しさを描いて

瀬戸内寂聴『あこがれ』
井上荒野/保存されている幼女

山田章博『「十二国記」画集《第二集》青陽の曲』
堺 三保/異世界「十二国記」を具現化する決定版!

佐々木 譲『裂けた明日』
西上心太/裂けた日本を描く思考実験小説

宇佐美まこと『ドラゴンズ・タン』
門賀美央子/“宇佐美ファンタジー”の極北――「人とはなにか」

白井智之『名探偵のいけにえ―人民教会殺人事件―』
宇田川拓也/“特殊設定”を迎え撃つ著者最高傑作

トム・ニコラス、鈴木立哉 訳『ベンチャーキャピタル全史』
清水 洋/ベンチャーキャピタルこそがイノベーションの野生化を加速する

西岡壱誠『それでも僕は東大に合格したかった』
[インタビュー]三田紀房/人生大逆転! まさに、リアル「ドラゴン桜」だ。

三國万里子『編めば編むほどわたしはわたしになっていった』
なかしましほ/あたたかくて、かっこいい。姉が編んだはじめての本。

野添文彬『沖縄県知事―その人生と思想―』(新潮選書)
松原耕二/沖縄の知事にしかわからない重く複雑な思い

前田速夫『老年の読書』(新潮選書)
関川夏央/命長ければ辱多し

乃南アサ『家裁調査官・庵原かのん』
[インタビュー]乃南アサ/裁判所の中の「人間らしい」人たち

【万城目 学『あの子とQ』刊行記念】
[対談]万城目 学×小島秀夫/我らが愛する「吸血鬼」

【短篇小説】
北村 薫/星からブランデー

【私の好きな新潮文庫】
仲野 徹/一生モノの「三冊」
 サイモン・シン、青木 薫 訳『暗号解読(上・下)
 沢木耕太郎『深夜特急(1~6)
 山崎豊子『白い巨塔(1~5)

【今月の新潮文庫】
キャサリン・ライアン・ハワード、高山祥子 訳『56日間』
吉田伸子/コロナ禍を背景にした企みに満ちた物語

【新連載漫画】
近藤ようこ 原作・梨木香歩/家守綺譚

【新連載コラム】
崎山蒼志/ふと、新世界と繋がって

【コラム】
戸部田 誠(てれびのスキマ)『芸能界誕生』(新潮新書)
戸部田 誠(てれびのスキマ)/「芸能界」を作り変えた、若者たちの群像劇

三宅香帆/物語のふちでおしゃべり 第7回

三枝昴之・小澤 實/掌のうた

[とんぼの本]編集室だより
【連載】
南沢奈央 イラスト・黒田硫黄/今日も寄席に行きたくなって 第34回
エリイ(Chim↑Pom from Smappa!Group)/生時記 第2回
梨木香歩/猫ヤナギ芽ぶく 第4回
二宮敦人/ぼくらは人間修行中 第23回
伊与原 新/翠雨の人 第10回
内田 樹/カミュ論 第15回
春画ール/春画の穴 第12回
川本三郎/荷風の昭和 第53回

第21回 小林秀雄賞・新潮ドキュメント賞決定発表
編輯後記 いま話題の本 新刊案内 編集長から

立ち読み

編集長から

今月の表紙の筆蹟は、山田章博さん。

◎「あのレコードには死んだ女の声が入っている」みたいな噂を昔はよく聞いたものですが、実際、音楽以外の音――グールドの鼻歌やコルトレーンの栓抜きを探す声なんかが入った音源があります。内田百閒の短篇(「サラサーテの盤」)及びそれを原作にした鈴木清順の映画(「ツィゴイネルワイゼン」)(どっちも結構怖い)に出てくる、サラサーテが自曲を弾く彼方で冥界からのような声で何か呟いている(あの曲の英語版ウィキペディア参照)SP盤も有名。映画版は百閒の別の短篇(「山高帽子」)から死にまつわる幻聴場面も拵えて、〈声〉で段々怖がらせます。
◎このサラサーテを枕にした北村薫さんの「古今亭志ん朝の一期一会」(『中野のお父さんの快刀乱麻』所収)は、志ん朝の「三軒長屋」のライブ録音をめぐる〈時と人〉の物語。CDには客の笑いと拍手が入っていますが、その会場には今はもう亡くなった大切な人がいて……。また、小池真理子さんの『神よ憐れみたまえ』では同題のアリア(「マタイ受難曲」)を聴く場面があって、レコードはメンゲルベルク指揮の1939年録音盤、と指定されています。これもライブですが、勿論笑いではなく、客のすすり泣きがアリアの最中に聴こえる名盤。
◎このアリア、〈鶏が鳴く前にお前は三度私を知らないと言うだろう〉という予言通りにペトロ(一番弟子)がイエスを裏切った(遠藤周作沈黙』でも司祭が踏絵を踏むと鶏が鳴きましたね)直後に歌われます。感動的なのは、音盤レコードを聴くのは主人公と父親だけなのに、この人間の弱さや罪を懺悔し、涙と共に憐れみを乞う曲あるいは曲名が、その場にいなかった、〈主人公の両親を殺した犯人〉へも注がれているように読めること。右の三篇、恐怖、爆笑、感涙の曲(噺)の選択が夫々絶妙で味が深く、陶然となりました。
▽次号の刊行は十月二十七日です。

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。