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世界史の中のヤバい女たち

黒澤はゆま/著

858円(税込)

発売日:2023/05/17

  • 新書
  • 電子書籍あり

統計学で病院を立て直すナイチンゲール、アステカを廃墟にマリンチェ、復讐4度で聖人にオリハ、知略と残忍の女王ンジンガ、中華最強の悪女呂后。この女たち、強すぎる!!

長い人類の歴史の中で、強い男がヒーローと呼ばれる一方、強い女は魔女と呼ばれてきた。アステカ王国を滅ぼした17歳から、復讐の鬼と化したウクライナ聖人、民を戦乱の世から救った中華最強の悪女まで、世界を変えた女たちはどのような人生を歩んだのか? 男性社会の序列をはねのけ、その強さゆえに迫害された“魔女”たちの活躍と、男性を中心に作られた歴史の裏に隠されてきた素顔に迫る!

目次
はじめに
第一章 すべての女性が望むことは 魔女ラグネルの結婚
「すべての女性が望むこと」その謎を解くべく、アーサー王は醜い魔女と部下ガウェインを結婚させる。世界中に残る「魔女」の逸話に隠された史実とは。
第二章 アステカ王国を滅ぼした女 神の通訳マリンチェ
世界最大の都市を廃墟へ追い込んだのは十七歳の少女だった! 実母に売られ、後にスペイン人征服者コルテスとの間に史上初めてのメスチーソを産んだ女の一生。
第三章 男を犯して子をなす 女戦士部族アマゾーン
狩猟の女神アルテミスを崇拝し、武装した女だけで構成されたアマゾーンの部族。ギリシャ神話にも描かれる、女と男が逆転した世界は実在した!?
第四章 早馬を駆る 女騎手・すみとスミス
二十世紀前半、女性が騎手として活躍するなどありえなかった。馬を駆るため、さらしを巻き、男装して騎手を目指した二人の女性の儚い夢と希望。
第五章 戦場の女 ジャンヌ・ダルクの百年戦争
フランスを勝利に導き、それ故魔女として火あぶりにされたジャンヌ・ダルク。男社会の序列を撥ね除け、「女と戦争は素人こそ恐ろしい」を二重に体現した人生とは。
第六章 女性として根絶できない部分 独ソ戦と女性兵士たち
独ソ戦に戦力として投入された女性はどのように生き延びたのか。戦場に身を投じながらも、最後まで戦いに染まらなかった「女」の想いと生涯。
第七章 敵はとことんやっつけるもの ウクライナの聖人オリハ
愛する男を殺されたオリハは復讐を決意する。四度にわたる復讐と多くの死体の上に築かれた東スラブ最初の国。
第八章 残忍な女戦士 偉大な女王ンジンガ
十六世紀アフリカで、宿敵ポルトガルと戦い数十人の男たちをかしずかせた女王。残忍な交渉術を駆使し、六十歳を超えてなお闘い続けた女傑が最後に求めたものは。
第九章 苦しむ人のために戦い抜く 冷徹な天使ナイチンゲール
優しい「白衣の天使」は、その実自分にも他人に対してもストイックすぎる女性だった。彼女を支えた四人の騎士たちのエピソードから見えた意外な素顔。
第十章 非情剛毅を貫いた皇后 中国三大悪女・呂后
ろくでなしの夫を皇帝の地位に座らせ、わが子にその座を渡すために孤軍奮闘した呂后。権力を取り巻く闘いの中で、男尊女卑の中国社会に彼女がもたらしたものとは。
おわりに

書誌情報

読み仮名 セカイシノナカノヤバイオンナタチ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 208ページ
ISBN 978-4-10-610996-6
C-CODE 0220
整理番号 996
ジャンル 歴史読み物、歴史・地理・旅行記
定価 858円
電子書籍 価格 858円
電子書籍 配信開始日 2023/05/17

インタビュー/対談/エッセイ

すべての女性が望むことは何か?

黒澤はゆま

 すべての女性が望むことは何か?
 そう聞かれたらあなたはどう答えますか?
 こんな問いをテーマに、古今東西の女性の「ヒーロー」のお話を集めたのが本書です。
 取り上げた女性には、ナイチンゲールやジャンヌ・ダルクのような有名人もいれば、アステカ王国を滅ぼしたマリンチェ、大航海時代のポルトガルを何度も破ったアンゴラの女王ンジンガなど、あまり日本では知られていない人物もいます。
 私が子供の頃、書店に並ぶ偉人達の伝記といえば、男九に対し、女一くらいの割合だったように思います。
 今は少しはましになったようですが、読んでみると、女性の場合は、優しさや自己犠牲をより強調して書かれる傾向がまだまだ強いようです。
 そうした特性はとても素敵なことだし、彼女たちに実際に備わっていたのは間違いありません。ただ、この残酷な世界をサバイブし、さらに衆に抜きん出るには、善人であるだけでは不足なはず。
 知恵と体力に恵まれているのは勿論、狡猾で、抜け目なく、時に非情かつ残忍であることも必要だったでしょう。
 例えば、クリミアの天使の異名で知られるナイチンゲールは、近代看護の祖ということで、患者への奉仕と献身ばかりが注目されがちでした。
 しかし、彼女は鶏頭図と呼ばれるグラフを生み出した統計学者でもあり、また、ナポレオン戦争を生き抜いた老雄達を屈服させ、イギリスの社会福祉政策の改革を主導したフィクサーの一面も持っていました。
 彼女はその人生を通じ、家族、同僚の看護師、イギリス陸軍、政府、周囲の人々と激しく衝突し、ついには盟友ともいうべき男性を過労死に追いやります。こうした過剰さは、男だったら大目に見られ、褒め称えられることすらあるのに、女の場合、覆い隠され、なかったことにされるのは逆に不平等に見えます。
 私は彼女たちの一般には「負」ととらえられる側面もそのまま書くようにしました。現在の女性が生き抜くに必要な情報だと考えたからです。
 女だってヤバい存在である権利があるのです。
 また書き進めていくなかで、男性にはない女性ならではの「呪い」があることにも気づきました。
 それは何か? というのもまた、冒頭の問いと並んで本書のテーマです。
 当の女性は勿論、友人、同僚、部下、上司、父親、息子、きょうだい、恋人・夫、様々な形で女性と関わる男性も、本書を読んで欲しいと思っています。
 そして、二つの問いに読者の皆様がそれぞれの答えを得、愛する人たちにもっと優しく賢明になれたら、著者としてこれ以上の幸せはありません。

(くろさわ・はゆま 歴史小説家)
波 2023年6月号より

著者プロフィール

黒澤はゆま

クロサワ・ハユマ

1979(昭和54)年宮崎県生まれ。歴史小説家。著書に『劉邦の宦官』『九度山秘録』『なぜ闘う男は少年が好きなのか』『戦国、まずい飯!』『戦国ラン 手柄は足にあり』などがある。好きなものは酒と猫。作家エージェント、アップルシード・エージェンシー所属。

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