ホーム > 雑誌 > 雑誌詳細:波 > 雑誌詳細:波 2023年6月号

今月の表紙の筆蹟は、三浦しをんさん。

波 2023年6月号

(毎月27日発売)

100円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2023/05/29

発売日 2023/05/29
JANコード 4910068230638
定価 100円(税込)
「波」はお近くの書店からもご注文できます。
【巻頭特別エッセイ】
筒井康隆/老齢と喫煙
阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第69回
永井紗耶子『木挽町のあだ討ち』
[特別対談]神田伯山×永井紗耶子/古典を現代に活かすために 後篇

【山本一力『ひむろ飛脚』刊行記念】
[インタビュー]山本一力/人力と知恵で困難に立ち向かう

三浦しをん『墨のゆらめき』
吉田伸子/墨色のきらめきが、胸に押し寄せてくる

千葉雅也『エレクトリック』
マーサ・ナカムラ/電気と幽霊

前川 裕『完黙の女』
池上冬樹/事実と「沈黙」が生み出す劇的な展開

小池水音『息』
小山田浩子/もがきのはてに

千加野あい『どうしようもなくさみしい夜に』
紗倉まな/彼女たちの覚悟

吉田恵美『ニューヨークのクライアントを魅了する 「もう一度会いたい」と思わせる会話術』
宇賀なつみ/国や職種が違っても

【特別企画】
高橋洋二/極私的「タモリ倶楽部」回顧録 前篇

【短篇小説】
伝・永井荷風/四畳半襖の下張 新字新仮名版
【新潮選書ベストセレクション2023】
岡田暁生、片山杜秀『ごまかさないクラシック音楽』
[対談]岡田暁生×片山杜秀/名曲の聴き方がガラリと変わる!

岡 典子『沈黙の勇者たち―ユダヤ人を救ったドイツ市民の戦い―』
芝 健介/真の人間的な連帯を問う「沈黙の勇者たち」

波多野澄雄、戸部良一 編著『日本の戦争はいかに始まったか―連続講義 日清日露から対米戦まで―』
[インタビュー]佐藤松男/大日本帝国「戦争の八十年」を俯瞰する

中村真一郎『源氏物語の世界』
酒井順子/良き先達による愛情深い案内書

マジョリー・F・ヴァーガス、石丸 正 訳『非言語コミュニケーション』
鈴木大介/日本人が活用できていない多様な表現の世界

更科 功『進化論はいかに進化したか』
仲野 徹/ダーウィンだって間違えていた?

鈴木孝夫『閉された言語・日本語の世界【増補新版】』
宮崎哲弥/日本語の合理性をめぐる予見に満ちた書

【私の好きな新潮文庫】
池谷裕二/混沌の長いトンネルを抜けると虚構であった。
 川端康成『雪国
 サイモン・シン、青木 薫 訳『フェルマーの最終定理
 末木文美士『日本仏教史―思想史としてのアプローチ―

【今月の新潮文庫】
ロス・トーマス、松本剛史 訳『愚者の街(上・下)』
関口苑生/人間関係を根底としたコン・ゲーム

【コラム】
三宅香帆/物語のふちでおしゃべり 第15回

三枝昴之・小澤 實/掌のうた

[とんぼの本]編集室だより

黒澤はゆま『世界史の中のヤバい女たち』(新潮新書)
黒澤はゆま/すべての女性が望むことは何か?

崎山蒼志/ふと、新世界と繋がって 第9回

【連載】
橋本 直(銀シャリ)/細かいところが気になりすぎて 第8回
エリイ(Chim↑Pom from Smappa!Group)/生時記 第10回
近藤ようこ 原作・梨木香歩/家守綺譚 第9回
梨木香歩/猫ヤナギ芽ぶく 第8回
大木 毅/指揮官と参謀たちの太平洋戦争 第7回
内田 樹/カミュ論 第19回
伊与原 新/翠雨の人 第17回
川本三郎/荷風の昭和 第61回
第36回三島由紀夫賞・山本周五郎賞決定発表
編輯後記 いま話題の本 新刊案内 編集長から

立ち読み

編集長から

今月の表紙の筆蹟は、三浦しをんさん。

◎映画「THE FIRST SLAM DUNK」にハマって、井上雄彦さんの漫画『SLAM DUNK』『リアル』『バガボンド』を一気読み。これらを読まずに来たのは人生の大損でしたねえ。ここから『バガボンド』の原作、吉川英治宮本武蔵』へは進まず(新潮文庫なのに)、武蔵映画をあれこれ観ていきました。
◎僕があの剣豪と縁なき衆生だったのは、武蔵(正確には吉川英治が描いた武蔵)を徹底的にからかった山本周五郎「よじょう」(『大炊介始末』所収)のせい。主人公(父親を武蔵に斬殺された)はダラしない男ながら、尊敬を集める武蔵老を「見栄っぱりのきちげえ」と喝破します。少年時代にこの名短篇で大笑いして以来、武蔵にはずっと興味が持てないままでした。
◎でも観てみるもので、内田吐夢版(中村錦之助主演)「宮本武蔵」五部作(第四部「一乗寺の決斗」!)は世評通りの素晴らしさ。ただ、この高倉健も、稲垣浩版(三船敏郎主演)の鶴田浩二も、加藤泰版(高橋英樹主演)の田宮二郎も、溝口健二版(河原崎長十郎主演)の中村翫右衛門も、小次郎の造形に苦労しています。面白くりようもない感じ(大谷友右衛門や東千代之介が演じた村上元三原作「佐々木小次郎」は未見)。その点、『バガボンド』の小次郎は他と一線を画す魅力に溢れていますが、この魅力ゆえに未完になっている気も……。
◎武蔵に惚れるお通と朱実は、稲垣版の八千草薫と岡田茉莉子が絶佳。学園ドラマに出てくる〈学級委員長と不良少女〉コンビの原型かもと思わせる好一対で、全く武蔵はバカだと思わせます。東宝の脚本家だった田波靖男さんから伺った話。「八千草さんは宝塚から来て以来、撮影所中の憧れの的だったのに、女癖の悪い谷口千吉監督が地方ロケ中に手を出して……みんな怒り悲しんで、撮影所の入口に半旗を掲げたんだ」。
▽次号の刊行は六月二十七日です。

お知らせ

バックナンバー

雑誌バックナンバーの販売は「発売号」と「その前の号」のみとなります。ご了承ください。

雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。