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ダーウィンのどこが正しく、何が間違いだったのか?

進化論はいかに進化したか

更科功/著

1,430円(税込)

本の仕様

発売日:2019/01/25

読み仮名 シンカロンハイカニシンカシタカ
シリーズ名 新潮選書
装幀 駒井哲郎/シンボルマーク、新潮社装幀室/装幀
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 252ページ
ISBN 978-4-10-603836-5
C-CODE 0345
ジャンル 生物・バイオテクノロジー
定価 1,430円
電子書籍 価格 1,430円
電子書籍 配信開始日 2019/07/12

『種の起源』が出版されたのは160年前、日本では幕末のことである。ダーウィンが進化論の礎を築いたことは間違いないが、今でも通用することと、誤りとがある。それゆえ、進化論の歩みを誤解している人は意外に多い。生物進化に詳しい気鋭の古生物学者が、改めてダーウィンの説を整理し、進化論の発展を明らかにする。

著者プロフィール

更科功 サラシナ・イサオ

1961年、東京都生まれ。東京大学教養学部基礎科学科卒業。民間企業を経て大学に戻り、東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)。専門は分子古生物学。2019年1月現在、東京大学総合研究博物館研究事業協力者、明治大学・立教大学兼任講師。『化石の分子生物学――生命進化の謎を解く』(講談社現代新書)で、第29回講談社科学出版賞を受賞。著書に、『宇宙からいかにヒトは生まれたか』(新潮選書)、『爆発的進化論』(新潮新書)、『絶滅の人類史――なぜ「私たち」が生き延びたのか』(NHK出版新書)など。

書評

目からウロコが17枚ぐらいはがれた快著

佐倉統

 進化論は昔から誤解されてきた。生物の進化はとても長い時間かかって進行する現象なので、人間の直観に反する部分が多い。そのため、それを説明する理論の方がおかしいと思ってしまう人が後を絶たないのである。
 一方で、そんな誤解を解こうという試みは、古今東西、あれこれと工夫して続けられてきた。この本も、そういう一冊だ。だが、稀代の語り上手・更科功の手になるだけに、あちこちに工夫がこらされている。ぼくがいちばん感心したのは、チャールズ・ダーウィンの考えていた理論と、現在の進化生物学とを結びつけていることだ。《進化論=ダーウィン》ではない。だけど、《進化論≠ダーウィン》でもない。この両者のはざまで、どこが「=」でどこが「≠」なのか、丹念に、読みやすく、そしておもしろく語ってくれる。
 進化論についてハナから誤解している人――たとえば、神が生物を創ったと主張する創造論の信奉者たち――がこの本を読んで回心するとは思わない。だが、なんとなく進化論について誤解している人たちにとっては、目からウロコが17枚ぐらいはがれる快著である。それだけでなく、この本は進化の専門家にも有益だ。進化の理論と事実を少し高いところから俯瞰したときに見える風景は、専門家が普段見ているものとはだいぶ異なるはずだ。そこから得るところはたくさんある。
 第1部は「ダーウィンと進化学」と題して、ダーウィンその人が書いたこと、考えていたことを復元しつつ、現在の進化生物学ではどこがそのまま受け継がれていてどこが捨てられているのか、ひとつひとつ再確認していく。いわばおさらい編。
 おもしろいのは、ダーウィンの論敵たちが、かなりきちんとダーウィンの説を理解していたことだ。「キリスト教界の中にも『種の起源』を正確に理解していた人々がおり、(中略)それらの建設的な意見がダーウィンの思索を深め、進化論の発展に寄与した」(38頁)のである。健全な批判が科学の発展に不可欠であることを、端的に示している。むしろ、ウォレスやスペンサーなど、ダーウィンの支持者たちの方が後の世でのダーウィンへの誤解を増幅させたようだ。皮肉なことである。
 第2部「生物の歩んできた道」は、第1部理論編に対する実証編。いろいろな生物の具体的な進化史が、これまた活き活きと描かれる。《ダーウィンが来た! 〜古生物学編〜》といった感じ。
 恐竜と現在の鳥の関係についての説明が、更科節全開である。鳥が恐竜の子孫であることは広く知られるようになってきたが、さて、昔の恐竜と鳥類の区別はどこにあったのだろうかと考えた後で、彼はこう述べる。
「もしもタイムマシンで白亜紀にワープして、ティラノサウルスの周りを飛び回る恐竜を見たら、鳥と呼ぶか呼ばないかなんて、きっとどうでもよくなる。恐竜の多くは、もともと鳥みたいな生物なのだ。その鳥が、今も生きているのだ」(203頁)
 そう、鳥が恐竜の子孫だという説の是非や真偽ということではなくて、恐竜を目の前に見たときのワクワク感、ドキドキ感が大事なんだ。鳥は恐竜の子孫だという科学的な成果を知ることで、このワクワク感、ドキドキ感が倍増する。
 そしてこう続く。
「たいていの人は毎日のように、カラスやスズメなどを見ていることだろう。それは、恐竜が飛び回っているのを、毎日のように見ているということだ」(203頁)
 視点が一気に現在の日常に呼び戻される。はるか昔の恐竜の世界が、ぼくたちが暮らしている日々の生活の場と直結する。この、視点の瞬間移動をもたらしてくれるのは、やっぱり科学的知識だ。
 そう、科学は、ぼくたちの毎日を楽しく、ワクワクするものに変えてくれる。日々の生活を活き活きとしたものにしてくれる。それは、とても役に立つことではないか。基礎科学は役に立たないというのは、なんと心の貧しい物言いであることか。
 この本を読めば、進化論や古生物学や発生生物学が、どれだけぼくたちのものの見方を豊かにしてくれるか、一目瞭然だ。

(さくら・おさむ 東京大学大学院情報学環教授)
波 2019年2月号より

目次

まえがき
第1部 ダーウィンと進化学
第1章 ダーウィンは正しいか
第2章 ダーウィンは理解されたか
第3章 進化は進歩という錯覚
第4章 ダーウィニズムのたそがれ
第5章 自然選択説の復活
第6章 漸進説とは何か
第7章 進化が止まるとき
第8章 断続平衡説をめぐる風景
第9章 発生と獲得形質の遺伝
第10章 偶然による進化
第11章 中立説
第12章 今西進化論
第2部 生物の歩んできた道
第13章 死ぬ生物と死なない生物
第14章 肺は水中で進化した
第15章 肢の進化と外適応
第16章 恐竜の絶滅について
第17章 車輪のある生物
第18章 なぜ直立二足歩行が進化したか(I)直立二足歩行の欠点
第19章 なぜ直立二足歩行が進化したか(II)人類は平和な生物
第20章 なぜ直立二足歩行が進化したか(III)一夫一婦制が人類を立ち上がらせた
あとがき
主要参考文献

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