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世帯年収1000万円―「勝ち組」家庭の残酷な真実―

加藤梨里/著

880円(税込)

発売日:2023/11/17

  • 新書
  • 電子書籍あり

×高級車と豪邸 ○電動自転車と狭小住宅。×余裕の「パワーカップル」 ○疲れ果てた「限界共働き」 ×レストランにハワイ旅行。○激安チェーンと帰省で我慢。

タワマンに住んで外車に乗る人まで国が支援するのか――所得制限撤廃の話になると、きまってこんな批判がわき起きる。だが、当事者の実感は今やこの言葉とはかけ離れている。かつて“勝ち組”の代名詞でもあった「年収1000万円」世帯は、不動産価格の高騰、実質賃金の低下、共働きで子育てに追われる夫婦の増加などによって、ギリギリの生活設計を迫られているのだ。様変わりした中流上位層のリアルを徹底分析。

目次
はじめに――「年収1000万円は“勝ち組”か?」論争
第1章 住居費 不動産高騰で消えた「マイホームの夢」
高すぎて買えないマイホーム/5年間で1・5倍に急騰した不動産価格/年収1000万円で「億ション」は買えるのか/ローン8000万円と5000万円、月々の負担の違いは?/月10万円以上の負担の差も/5000万円で都心に家は買えるのか/それでもどうしても都心に家を買いたいなら/ペアローンの意外な落とし穴/10年前から様変わりした住宅事情/「買えないなら賃貸」も厳しい
第2章 教育費 少子化でも過熱する「課金ゲーム」
子どもはぜいたく品なのか?/すべて公立でも1000万円超/少子化なのに親の負担が重い国/産むだけで50万円かかる/未就学児でも習い事が当たり前?/コロナ禍で過熱した小学校受験/受験対策費用はブラックボックス/入学後も出費は続く/「父親の経済力と母親の狂気」/「お金さえ出せばいい」わけじゃない/高騰する学費/「親と同レベルの学歴」のハードルはこんなにも高い/大学生の2人に1人が奨学金利用/私大定員減で少子化でも過熱する受験戦争/東大生の親の半数以上が年収950万円以上/親が稼ぐほど子どもが損をする/「子育て罰」を可視化する扶養控除制度/共働き世帯のジレンマ/「頑張ればなんとかなる」に悩む1000万円世帯
第3章 生活費 見落とされがちな「共働きにかかるコスト」
上がらない賃金、上がり続ける物価/疲れ果てた「パワーカップル」たち/都市と地方、生活費は本当に違う?/年収が高いと希望の保育園に入れない?/病児保育に月10万円/「小1の壁」で共働きを諦める親たち/民間学童の利用料は公設の10倍?/実家に頼れるかどうかは「隠れた格差」/時間はお金で買えるのか/共働きに迫る「隠れ貧困」のリスク
第4章 国民的キャラクターで試算する1000万円世帯
居住地・年齢・家族構成によって見えている世界は違うのか/「クレヨンしんちゃん」野原家のリアル/しんちゃんとひまわりが中学受験したら/ひろしとみさえが共働きだったら/「サザエさん」波野家のリアル/イクラちゃんが「お受験」に挑戦したら/タイコさんに第2子が生まれたら/節約で本当に家計は改善するのか/タイコさんが扶養内でパートを始めたら/「ちびまる子ちゃん」さくら家のリアル/まる子とお姉ちゃんが奨学金を借りたら/ヒロシが現役期間を延ばしたら/「子育て」と「老後」を両立する難しさ
第5章 お金の育て方
お金の対策を考える/家計改善の方法は十人十色/失敗しない教育資金計画/学資保険vs.NISA/老後資金の育て方/公的年金のみvs.iDeCo/波平さんが今からiDeCoに加入して意味があるのか/所得制限から「お金を守る」/所得を減らすのも手
おわりに
主な参考文献

書誌情報

読み仮名 セタイネンシュウイッセンマンエンカチグミカテイノザンコクナシンジツ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 224ページ
ISBN 978-4-10-611020-7
C-CODE 0230
整理番号 1020
ジャンル 社会学、思想・社会
定価 880円
電子書籍 価格 880円
電子書籍 配信開始日 2023/11/17

インタビュー/対談/エッセイ

「異次元」に置き去りにされた人たち

加藤梨里

 2024年6月にも実施される一人4万円の定額減税において、所得制限を設けるか否かが議論を呼んでいる。政府は所得制限なしとする方針だが、一定以上の所得者は減税対象外とすべきとの声も強い。
「高級マンションに住んで高級車を乗り回している人にまで支援をするのか」――。定額減税への所得制限を訴える政治家は、子育て世帯の児童手当への所得制限をめぐる議論でもこう発言した。児童手当は2024年10月から所得制限撤廃を含め支給対象が拡大される見込みだが、16~18歳の子どもがいる世帯に適用される所得税の扶養控除見直しも同時進行で検討されている。実現すれば、年収850万円以上の世帯はむしろ負担増となる可能性も指摘されている。支給を増やす代わりに増税するという格好だ。
 とりわけ年収1000万円以上の世帯は、ひと昔前には「勝ち組」の代名詞とされ、今もなおあらゆる公的支援から除外されている。児童手当のほかにも高校授業料の無償化や大学の貸与型奨学金、東京都の私立中学校授業料の補助など、世帯年収1000万円前後を足切りラインとする子育て支援策は枚挙にいとまがない。国は「異次元」を謳うが、これらの世帯は恩恵とは異次元の世界で子育てをしていると言っても過言ではない。
 一方で現実の世界に目を向ければ、税と社会保険料の負担増で労働者の可処分所得はこの20年ほど減り続けている。不動産価格と教育費の高騰、物価上昇により生活コストや子育てコストも上がっている。加えて、現在子育て中の親はロスジェネ世代とも重なる。共働き世帯数が専業主婦世帯数を逆転したのは約30年も前のこと。上がらない賃金を嘆く暇もなく、何とか家族を支えようと2馬力で1000万円を稼ぐ生活は、タワマンの高層階から望む夜景のごとく煌びやかなものとは限らない。共働き世帯の増加は華やかな女性活躍推進だけによるものではなく、活躍の代償に疲弊した家庭の存在を無視することはできない。
 子どものいる家族といえば、クレヨンしんちゃん、サザエさん、ちびまる子ちゃんなどはおなじみだろう。もし彼らが、年収1000万円世帯として実在したら、勝ち組になるのだろうか。本書では、現在の物価や税、社会保障制度、不動産相場、教育費相場を踏まえて、彼らの家計収支や貯蓄額を推計した。そこから浮かび上がったのは、世間の羨望の的となるようなリッチな生活ではなく、老後破綻と背中合わせのギリギリの家計だった。牧歌的な日本の家族像は、もはや古き良き時代のお伽話なのだろうか。
 所得制限をはじめ風当たりの強い税や社会保障制度から家計を守り、豊かな子育てと老後を両立させるには。「勝ち組」家庭の残酷な真実から、光明を見出す方策を探った。

(かとう・りり ファイナンシャルプランナー)
波 2023年12月号より

蘊蓄倉庫

「子どもはぜいたく品」になった国

 30年前には120万人だった日本の出生数は、2022年には国の見通しより10年も早く、80万人割れ。異常なスピードで少子化が進行しています。女性の社会進出、ライフスタイルや価値観の多様化などさまざまな要因が理由として挙げられますが、2021年に国立社会保障・人口問題研究所が行った、予定子ども数が理想子ども数を下回る夫婦を対象にその理由を尋ねた調査では、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」が回答のトップ。特に35歳未満の夫婦では8割近くの人が経済的負担の大きさを理由に子どもを諦めているという結果でした。まさに「子どもはぜいたく品」となってしまった現状に、やるせなさを覚える人も多いのではないでしょうか。

掲載:2023年11月24日

担当編集者のひとこと

変わり果てた「勝ち組」の代名詞

「世帯年収1000万円」。
 平均年収が400万円台のこの国において、少し前までは、間違いなく「勝ち組」の代名詞のように語られていました。事実、児童手当をはじめとして、高校授業料の無償化や大学の貸与型奨学金、東京都の私立中学授業料の補助など、あらゆる公的な支援は年収1000万円前後を足切りラインとして所得制限が設けられています。
 児童手当の所得制限については廃止予定となってはいますが、これに関する世論調査の結果について、与党の要職を務める政治家が「高級マンションに住んで高級車を乗り回している人にまで支援をするのか、というのが世論調査で出てきているのだろう」と発言し物議を醸したこともありました。

 本書では、ファイナンシャルプランナーで家計管理やライフプランに詳しい著者の加藤梨里氏が、かつての「勝ち組」家庭のお金事情を徹底的に分析してくれています。
 前半は、1000万円世帯の実態を住居費・教育費・生活費の3面から紐解きつつ、後半では「クレヨンしんちゃん」「サザエさん」「ちびまる子ちゃん」に登場する3家族をモデルにして、「もし、あの家族の世帯年収が1000万円だったら?」という設定で、様々なシナリオを具体的に想定しながら生涯にわたるキャッシュフローをシミュレーション。最終章では「お金を育てる」をテーマに、「教育資金の育て方」や「老後破産に陥らないための対策」を紹介しています。

 ひと時代前とは様変わりした現代の子育て世帯の厳しい実情を繙きつつ、今の日本社会に横たわる歪な矛盾を鋭くとらえた一冊となっています。ぜひご一読ください。

2023/11/24

著者プロフィール

加藤梨里

カトウ・リリ

ファイナンシャルプランナー(CFP(R))、マネーステップオフィス株式会社代表取締役。保険会社、信託銀行、ファイナンシャルプランナー会社を経て2014年に独立。慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科修士課程修了。著書(監修)に『ガッツリ貯まる貯金レシピ』等。

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