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慶應高校野球部―「まかせる力」が人を育てる―

加藤弘士/著

902円(税込)

発売日:2024/07/18

  • 新書
  • 電子書籍あり

「やらせる」でなく「まかせる」。「教える」まえに「問いかける」。「正解」より「成長」。「勝つ組織」「育つ仕組み」のつくり方。

「高校野球の常識を覆す!」を合言葉に、慶應高校野球部は107年ぶりに全国制覇を成し遂げた。彼らの「常識を覆す」チーム作りとは、どんなものなのか? なぜ選手たちは「自ら考えて動く」ことができるのか? 選手、OB、ライバル校の監督等、関係者に徹底取材。見えてきたのは、1世紀前に遡る「エンジョイ・ベースボール」の系譜と、歴代チームの蹉跌、そして、森林監督の「まかせて伸ばす」革新的指導法だった。

目次
はじめに
第1章 「KEIO日本一」の象徴
史上初「決勝戦先頭打者ホームラン」の真相/快挙を生んだ「伏線」と「準備」/「考える」ことが野球の醍醐味/「チーム最高打率」の裏側/フォームは初戦の前夜に決めた
第2章 「価値」と「勝ち」――監督・森林貴彦の目指す場所
原点は箕島vs.星稜「伝説の一戦」/アイデアマン・上田前監督との出会い/高校時代は「むかつく選手」/「学生コーチ」で自分本位から相手本位に/NTT、筑波大で獲得した「外からの目線」/元プロ選手・阿井英二郎からの学び/「選手が自分で考える野球」をやりたい/大好きな「高校野球」への危機感/勝利至上主義ではなく成長至上主義/「指導」の怖さと限界/「全て自分が」から「まかせる」リーダーに
第3章 「エンジョイ・ベースボール」の系譜
ハワイ発、107年前の「継投」の衝撃/「遠くに飛ばせ」「無駄な声を出すな」慶大・前田監督の教え/上田誠、監督への道のり/徐々に近づく甲子園/「君は、日本の高校野球に毒されている」/上田前監督の野球部改革
第4章 「まかせる」から成長する
「まかせる」と「待つ」はセット/選手ミーティングで自主性を育む/中間管理職としての「学生コーチ」/試行錯誤するプロセスを重視/参謀は兵庫生まれの熱血漢/「野球の上手さ」よりも大切なこと
第5章 「考えさせる」技術
覚悟を問われる「新人トレ」/いちばん辛い「内外連係」/「観察」と「想像」の大切さ/「教える」ではなく「問いかける」/「揺さぶる」ことで「感性」を育む/選手の将来のための試み「リーガ・アグレシーバ」
第6章 「やりがい」で組織を一つに
「部員100人」の功罪/全員にチャンスを与える/1対1の対話で役割を確認/「メンバー外」の貢献に報いる
第7章 「失敗の機会」を奪わない
毎年「別のチームカラー」になる理由/「自分たちの色を出すことに囚われた」――2019年・善波力/「今思うと、すごく押しつけていた」――2020年・本間颯太朗/「自分の代は十人十色。クセが強くて、まとまらない」――2021年・金岡優仁/「何で、もっと森林さんと喋らなかったんだろう」――2022年・宮原慶太郎/学校は失敗させてあげる場所/「チーム一丸」はなぜ強いのか
第8章 「化学反応」で甲子園制覇
「点が取れない」新チーム/上手い先輩の敗戦に学ぶ/日本一のキャプテン/打倒・仙台育英が練習の基準/父が活躍した甲子園/流れを変えた「代打・清原」/影のMVP「森林賢人」/アルプス席に響いた「森林が足りない」/投手コーチは甲子園監督/タイプに合わせた投手育成/栄養指導でパワー強化とケガ防止/慶大日本一をきっかけにSBT導入/人としての成長を促すメンタルトレーニング/「三本指ポーズ」の秘密
第9章 仙台育英・須江監督の目
センバツ以来の再戦/「唯一無二」の好敵手/目指すのは「大阪桐蔭と慶應義塾のハイブリッド」/共通点は下の年代の指導経験/甲子園を味方につける/「負けたのが慶應で良かった」/「慶應だからできる」では学べない
おわりに
主要参考文献

書誌情報

読み仮名 ケイオウコウコウヤキュウブマカセルチカラガヒトヲソダテル
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 240ページ
ISBN 978-4-10-611049-8
C-CODE 0275
整理番号 1049
ジャンル 実用・暮らし・スポーツ、スポーツ・アウトドア
定価 902円
電子書籍 価格 902円
電子書籍 配信開始日 2024/07/18

蘊蓄倉庫

「点が取れない弱い代」はなぜ日本一になれたのか? 従来の高校野球とは一線を画す、革新的な「組織論」と「教育論」に迫ります。

「高校野球の常識を覆す!」を合言葉に、慶應高校野球部は107年ぶりに全国制覇を成し遂げました。彼らの「常識を覆す」チーム作りとは、どんなものなのか? なぜ選手たちは「自ら考えて動く」ことができるのか? 選手、OB、ライバル校の監督等、関係者に徹底取材。見えてきたのは、1世紀前に遡る「エンジョイ・ベースボール」の系譜と、歴代チームの蹉跌、そして、森林貴彦監督の「まかせて伸ばす」指導法でした。

掲載:2024年7月25日

担当編集者のひとこと

2023年の夏の甲子園で優勝し、社会現象にもなった慶應義塾高校野球部。その独自の「組織論」と「教育論」を深堀りしたのが本書です。

 多くの関係者にインタビューを行う中で強く印象に残ったのは、選手やOBの「言葉の力」です。こちらの質問に対して、ひとりひとりが自分の考えを元に、自身の言葉で、明晰に答えてくれることに驚かされました。
 その理由の一端を垣間見た日があります。慶應高校野球部が取り入れている「木鶏会」を見学した時のことです。

 木鶏会とは、「致知」という会員制月刊誌を使用して月に一度行う勉強会です。「致知」には、スポーツ選手や企業人の体験談が掲載されていて、木鶏会では、各自が印象に残った記事について感想を伝え合います。元々、慶應大学の野球部が取り入れたのをきっかけに慶應高校野球部でも導入したもので、私が見学したのは、大学と高校の野球部合同で行われた木鶏会でした。

 当日、慶應大学の階段教室に約200人が集まり、まずは4~5人の小グループに分かれて話し合います。その後、ランダムに指名された数人が全員の前に出て、ひとりずつ発表することになったのですが、その際の感想を聞いて驚きました。どの記事のどんな部分が心に響いたのか、それはなぜなのか、自分にとってどんな学びがあったのか――。それぞれが自身の経験や性格を元に、簡潔に、伝わりやすい言葉で発表をしたのです。

 そのレベルの高さに驚いて、会の終了後、思わず大学野球部の堀井哲也監督に伝えました。すると堀井監督は、「これも訓練ですから。毎月やっているうちに、できるようになるんです」とのこと。その言葉を聞いて、腑に落ちる思いがしました。

 慶應高校にしても慶應大学にしても、学力レベルはトップクラスですから、(本書の最終章で仙台育英の須江監督も指摘している通り)選手の言語化能力が高いことは当然と言えば当然です。ただ、各自が元々備えている力を、さらに高めるための努力が行われているのです。

 その他にも、慶應高校野球部では、「従来の野球部」では行われていなかったような新しい試みがいくつも取り入れられていました。「部活動」や「学校教育」の現場だけでなく、企業をはじめとしたどんな組織においても示唆に富んだ「組織論」と「教育論」が詰まった一冊。ぜひ手に取っていただけたら嬉しいです。

2024/07/25

著者プロフィール

加藤弘士

カトウ・ヒロシ

1974年茨城県水戸市生まれ。スポーツ報知編集委員。水戸一高、慶應義塾大学法学部法律学科卒業。アマ野球、巨人担当、デジタル編集デスク等を歴任。YouTube「報知プロ野球チャンネル」のMCも務める。著書に『砂まみれの名将――野村克也の1140日』。

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