今月の表紙の筆蹟は、平野紗季子さん。
波 2024年9月号
(毎月27日発売)
発売日 | 2024/08/27 |
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JANコード | 4910068230942 |
定価 | 100円(税込) |
阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第84回
【平野紗季子『ショートケーキは背中から』刊行記念特集】
くどうれいん/からだに起きた興奮ごと記録する
[インタビュー]平野紗季子/味の星座ができていく
中野京子『名画に見る「悪」の系譜』
ライムスター宇多丸/見る者こそが、見返される
五木寛之『こころは今日も旅をする』
南陀楼綾繁/大勢の他人とつながるために
ヘンリー・オースター、デクスター・フォード、大沢章子 訳『アウシュヴィッツの小さな厩番』
頭木弘樹/平穏な日々はいかにして大虐殺の日々になったか
諸田玲子『岩に牡丹』
山本丈志/蘭画研究者には到底思いつかない
中江有里『愛するということは』
桜木紫乃/あのとき果たせなかった「愛」が積もる
宮崎哲弥『教養としての上級語彙2―日本語を豊かにするための270語―』(新潮選書)
三浦瑠麗/正確な表現という創造的行為
加藤弘士『慶應高校野球部―「まかせる力」が人を育てる―』(新潮新書)
おおたとしまさ/結局のところ、慶應高校の全国優勝は「運」だった
【ガブリエル・ガルシア=マルケス、鼓 直 訳『百年の孤独』文庫版大ヒット記念】
[対談]長瀬 海×小川 哲/ツッコミなき『百年の孤独』を読み解く方法
【特集 新潮クレスト・ブックス フェア】
クオ・チャンシェン、倉本知明 訳『ピアノを尋ねて』
東山彰良/あきらめの音
ジュリー・オオツカ、小竹由美子 訳『スイマーズ』
[インタビュー]ジュリー・オオツカ/浮かび上がる人生の断片
ただいま翻訳中!
【掌篇小説】
阿刀田 高/左手の研究
【私の好きな新潮文庫】
はやみねかおる/ぼくをジュブナイルミステリー作家に育てた新潮文庫三冊
コナン・ドイル、延原 謙 訳『シャーロック・ホームズの冒険』
筒井康隆『笑うな』
泡坂妻夫『生者と死者―酩探偵ヨギ ガンジーの透視術―』
【今月の新潮文庫】
幸田 文『雀の手帖』
下重暁子/端正な姿に隠されていたこと
【コラム】
三宅香帆/物語のふちでおしゃべり 第30回
広尾 晃『データ・ボール―アナリストは野球をどう変えたのか―』(新潮新書)
広尾 晃/「野球」この不可思議で魅力的な「数字のスポーツ」
[とんぼの本]編集室だより
三枝昴之・小澤 實/掌のうた
崎山蒼志/ふと、新世界と繋がって 最終回
【連載】
杏/杏のパリ細うで繁盛記 第8回
中村うさぎ/老後破産の女王 第6回
三谷幸喜×ペリー荻野/もうひとつ、いいですか? 第5回
エリイ(Chim↑Pom from Smappa!Group)/生時記 第25回
近藤ようこ 原作・梨木香歩/家守綺譚 第24回
椎名 誠/こんな友だちがいた 第9回
古市憲寿/絶対に挫折しない世界史 第5回
内田 樹/カミュ論 第26回
坪木和久/天気のからくり 第13回
二宮敦人/ぼくらは人間修行中 第30回
編輯後記 いま話題の本 新刊案内 編集長から
立ち読み
編集長から
今月の表紙の筆蹟は、平野紗季子さん。
◎野坂昭如さんが八十年代に書いていた「週刊朝日」と「週刊文春」の連載を読み返すと、こんな高レベルの時事コラムを毎週二篇も発表し続けたのかと仰天します。
◎政治、皇室、コメ、芸能、マスコミ等、いずれを俎上に乗せても豊富な語彙と知見とレトリックを駆使した名品揃いですが、僕が惹かれるのはやはり活字周りの回で、例えば「『タイトル事師たち』秀作一覧(『我が闘争 さはさりながら大奮戦』所収)」。「タイトルだけ取上げられ賞められたら、作者は心外に違いない」としつつ、野坂さんがタイトル上手として挙げるのは丸谷才一、三島由紀夫、吉行淳之介、大江健三郎、五木寛之、井上ひさし。確かにみなさん、長いキャリアを通して魅惑的な題の作品ばかりです。現役バリバリの五木さんを除いて、五人の初期と晩年作から名タイトルを選ぶと、「エホバの顔を避けて」「今は何時ですか?」(丸谷才一)、「仮面の告白」「天人五衰」(三島由紀夫)、「薔薇販売人」「夢の車輪」(吉行淳之介)、「死者の奢り」「晩年様式集」(大江健三郎)、「ブンとフン」「一週間」(井上ひさし)。
◎尤も編集者がタイトル案を出すことも間々あり、小社OB某氏曰く、大岡昇平の新聞連載「若草物語」を本にする際、「大岡さんのイメージと合ってないから」と、「真実」という代案を出して、「そんなのおれの題じゃない」と叱られた由。「『真実』って言葉に物欲しげな匂いがしたんだと思う。ただ僕の言う意味も通じて、替りに大岡さんのつけた題が『事件』(日本推理作家協会賞)」。このOB氏、城山三郎さんの書下ろし長篇「風の中の背広の男」の題にも変更案を出したところ、城山さんに「どういう意味か分からない」と一蹴されたものの、翌日、「女房に言ったら、これまでのあなたの作品で一番いい題ね、って」で、決まったのが「落日燃ゆ」。
▽次号の刊行は九月二十七日です。
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雑誌から生まれた本
波とは?
1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。
創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。
創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。
現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。