シャーロック・ホームズの冒険
605円(税込)
発売日:1953/04/02
- 文庫
- 電子書籍あり
天才ホームズ、事件を解決できず!? ホームズを翻弄する聡明な女性アイリーン・アドラーが登場する「ボヘミアの醜聞」など10編を収録。
ロンドンにまき起る奇怪な事件を追って神出鬼没する名探偵シャーロック・ホームズは、その怜悧な推理と魅力的な個性で読者を魅了する。近代探偵小説を確立したホームズ物語の第一短編集。赤毛の男が加入した奇妙な組合のからくりを追う「赤髪組合」、乞食を三日やったらやめられない話「唇の捩れた男」など10編。意表をつく事件の展開、軽妙なユーモアがあふれる作品集である。
赤髪組合
花婿失踪事件
ボスコム谷の惨劇
オレンジの種五つ
唇の捩れた男
青いガーネット
まだらの紐
花嫁失踪事件
椈屋敷
書誌情報
読み仮名 | シャーロックホームズノボウケン |
---|---|
シリーズ名 | 新潮文庫 |
発行形態 | 文庫、電子書籍 |
判型 | 新潮文庫 |
頁数 | 480ページ |
ISBN | 978-4-10-213401-6 |
C-CODE | 0197 |
整理番号 | ト-3-1 |
ジャンル | 文芸作品、ミステリー・サスペンス・ハードボイルド、評論・文学研究 |
定価 | 605円 |
電子書籍 価格 | 605円 |
電子書籍 配信開始日 | 2016/02/19 |
書評
ぼくをジュブナイルミステリー作家に育てた新潮文庫三冊
どうも、はやみねかおるです。
児童向け推理小説を書くのを生業としています。
☆
ぼくは、小さい頃から本が好きでした。
身の回りにある本を、片っ端から読んでいました。
年の離れた兄が二人いるのが幸いでした。彼らの本棚には、小学生ではなかなか手にする機会の無い“文庫本”というものが、わんさか溢れていました。
次に紹介する「新潮文庫の三冊」――。
田舎に住んでた本好きの少年がプロの物書きになるにあたり、どのような影響を受けたかという視点で選んだものです。
この三冊を読めば、ひょっとするとジュブナイルミステリー作家になれる……かもしれません(そんなこと関係なく、三冊ともおもしろいんですけどね)。
☆
シャーロック・ホームズに出会ったのは、子ども向けの『世界名作全集』に収録されていた『まだらのひも』です。同時に、それがミステリーとの出会いでもありました。
“名探偵”という存在に、度肝を抜かれました。もっと、ホームズの話を読みたいと思いました。しかし、『世界名作全集』には三編しか収録されていません。
そんなとき、兄の本棚で見つけたのが『シャーロック・ホームズの冒険』です。
「『世界名作全集』より、遥かに小さくて薄い本なのに、十編も入っている!」
……今思えば、コストパフォーマンスにうるさい小学生でした。
ホームズの物語には、ミステリーの基本的なおもしろさが全て詰まっています。天才的な名探偵、魅力的な謎、わくわくする捜査、意外な犯人、論理的思考に基づいた推理と解決――。
マイ・ファースト・ミステリーがホームズ譚だったことは、ものすごい幸運です。
そして、バカな少年は無謀にも思ったのです。「ひょっとして、自分にも書けるんじゃないか?」と――。
☆
以前、小学校の先生をしていました。もし、クラスの子どもたちに、「タイムマシンが登場するお話を考えましょう」と言ったら、どんな物語を出してくるでしょうか?
未来へ行って、進んだ文明を楽しむ話? 過去へ行って、恐竜や侍を見たりする話?
本をたくさん読んでいる子なら、「親殺しのパラドックス」に挑戦するような話を考えたりするかもしれません。
しかし――。
もし、この『笑うな』のような物語を考えてくる子どもがいたら……。
その子は、天才か筒井康隆本人です。
この『笑うな』というショートショート集を読んだのは、高校一年生ぐらいのときです。
その頃のぼくは、SF(もどき)やミステリー(もどき)の作品をいくつか書いていました。ショートショート(もどき)も、百本以上書いていました。
――ひょっとして、このまま書き続けたらプロになれる?
そんな、砂糖菓子をメイプルシロップで煮込んだような甘い考えを、『笑うな』は一瞬で打ち砕き、世の中には“天才”というものが存在するという、キャロライナ・リーパーのような辛い現実を教えてくれました(キャロライナ・リーパーは、種ごと食べると死ぬとすら言われている唐辛子です)。
☆
時は流れ、ぼくは小学校の先生になり、幸運に恵まれてプロの物書きにもなりました。
しかし、最も幸運だったのは、『そして五人がいなくなる』というミステリーを書いた後に、泡坂妻夫の『生者と死者―酩探偵ヨギ ガンジーの透視術―』に出会ったことです。
もし、『生者と死者』を先に読んでいたら、あまりのレベルの違いにミステリーを書くことはできなかったでしょうから――。
元々、泡坂妻夫の本は大好きで、全作品を追っかけていました。「いつか、泡坂先生のような、読者を驚かせるミステリーを書きたい!」という野望も、持っていました。
しかし、『生者と死者』を読んで、その野望は砕かれました。これ以上の衝撃を読者に与えるのは不可能だ――そう思いました。
ぼくからのアドバイスは、たった一つ。「二冊買ってください!」です。読めば、この意味がわかります!
☆
この原稿を書いて、たくさんの影響を本から受けてるのだと改めて感じました。
だから、読書はおもしろいですね。
では!
(はやみね・かおる 小説家)
著者プロフィール
コナン・ドイル
Doyle,sir Arthur Conan
(1859-1930)アイルランド人の役人の子として、スコットランドのエディンバラに生れる。エディンバラ大学の医学部を卒業し、ロンドンで開業するが、家計の足しにするために文筆に手を染める。『緋色の研究』(1887)を皮切りに次々と発表された私立探偵シャーロック・ホームズと友人ワトスン博士を主人公とする一連の作品は世界的大人気を博し、「シャーロッキアン」と呼ばれる熱狂的ファンが今なお跡を絶たない。
延原謙
ノブハラ・ケン
(1892-1977)岡山県生れ。早稲田大学卒。逓信省電気試験所勤務の後、「新青年」(博文館)「雄鶏通信」(雄鶏社)編集長を務める。のち、翻訳に専念、コナン・ドイルを始め英米推理小説の翻訳多数。