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吉原遊廓―遊女と客の人間模様―

高木まどか/著

946円(税込)

発売日:2024/10/17

  • 新書
  • 電子書籍あり

モテる客、モテない客、遊女の格付け、「ありんす」の謎……。気鋭の研究者が史料から甦らせる全盛期・吉原の日常と非日常。

江戸の初期、吉原遊廓は大いににぎわっていた。当時、市井の人々には縁遠かった廓内の出来事を伝え、好事家たちの注目を集めていたのが「遊女評判記」、いわば遊女に関する情報誌である。馴染み客との恋愛やトラブルから、歌舞伎役者や座頭が嫌われた理由、ライバルの悪評を画策する遊女、新造と呼ばれる付き人の少女とのさりげない会話まで――。気鋭の歴史研究者が貴重な文献をもとに甦らせる、なにげない吉原の日常。

目次

序章 吉原の明と暗――天国でも地獄でもない「日常」を探して

第一章 吉原遊廓
幕府公認の買売春地区/吉原が大繁盛だった寛文~天和の頃/遊女評判記ブームと作者たち/客情報提供コミュニティの存在/出版統制の強化と吉原細見の登場/花魁イメージは江戸中期以降

第二章 遊女の実像
廓言葉「ありんす」「なんし」/女衒という仲介者たち/散茶、格子、太夫――上下する遊女の位

第三章 遊女と役者
浄瑠璃役者を振った「小ふじ」/高級遊女と流行のスター/太鼓持に惚れた新造「あづま」/芭蕉の弟子・其角による評判記/歌舞伎役者に惚れてはいけない/奔放な姉女郎、思慮ある妹女郎/役者の社会的位置づけ/知音(馴染客)の善し悪しの事

第四章 モテる客、モテない客
老ぬる「おやぢ」/遊女に嫌われるわけ/妖怪扱いまでされた「座頭」/遊廓通・藤本箕山の『色道大鏡』/「色道」という体系立て/「野暮」から「粋」の二十八段階/廓の者、役者、博徒は特別な存在/間夫と遊女の忍び会う恋/「モテない客」たちの嘆き

第五章 遊廓と遊女の闇
大坂新町の「心中」事件/馬鹿な男と「渡りに船」の情死/評判記作者の指切り介錯/遊廓経営者のルーツ/評判記作者の筆力と教養/エネルギッシュな批判の応酬/「大門を出る病人は百一つ」/「不治の病」梅毒の蔓延/評判記には記載されないわけ/「誓詞」「血文」/想い人の死/傷病や死と隣り合わせの世界

第六章 ささやかな日常の光景
妊娠と出産、間夫の存在/過密スケジュールと一息つく時間/古典に和歌に美文字/遊女間の噂と人間関係/「苦界十年」年季明けの人生は/評判記が書かなかった複雑な心情

終章 江戸から現代へ――「遊廓という町」に生きた人びと

主要参考文献
図版提供元一覧

書誌情報

読み仮名 ヨシワラユウカクユウジョトキャクノニンゲンモヨウ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 192ページ
ISBN 978-4-10-611061-0
C-CODE 0221
整理番号 1061
ジャンル 歴史読み物、歴史・地理・旅行記、日本史
定価 946円
電子書籍 価格 946円
電子書籍 配信開始日 2024/10/17

蘊蓄倉庫

天国でも地獄でもない、吉原の日常がここにある。

 吉原遊廓と聞いて、花魁を想起する方も多いと思います。花魁という言葉が登場したのは江戸中期以降のことで、実は吉原が最も繁盛していたのは寛文~天和の頃(1600年代後半)なのだと著者は語ります。本書はその時代にスポットを当て、当時刊行されたガイドブック「遊女評判記」の頁を繰りながら、散茶・格子・大夫といった遊女の位、モテる客・警戒された客、ロマンチックとは言えなかった情死の実態、遊女の日常や年期明けの人生などに迫ってゆきます。

掲載:2024年10月25日

担当編集者のひとこと

「もうひとつの江戸」を歩む

 2021年の年明け、私が手に取ったのは、高木まどかさんの『近世の遊廓と客 遊女評判記にみる作法と慣習』という本でした。《登楼した客に平等に接する》という従来のイメージを覆すもので、「歌舞伎役者が客として嫌われる理由」などについての考察を目新しく感じ、この著者に新書というかたちで吉原遊廓についての執筆をぜひお願いしたいと思いました。吉原に関してはこれまでにも多くの書籍が刊行されており、一大ジャンルとなっていますが、高木さんであればまた新たな視点から書いていただけるのではないかと感じたからです。

 執筆依頼の手紙を投函してから3年余、遂に新書が完成しました。担当者として、これまでになかった本になったのではないかと自負しています。

 序章のラストで著者はこう語ります。
 本書では、この遊女評判記に注目し、とくに江戸初~中期の江戸吉原遊廓について、そこに生きたひとびと、あるいはそこに足を運んだひとびとの姿を、じっくり紐解いていきたいと思います。
 いうまでもなく、すでに失われた当時の日常を、いまに生きる私たちが本当の意味で理解することは不可能です。しかし、遊廓に入り浸り、遊女たちの日々に目を凝らし続けた作者らの残した文字を辿ることで、少しでもかつての息遣いが伝わればと思うのです。

「過酷な性売買の場」であると同時に「文化の発信地」でもあった吉原遊廓。同時代の史料に記されたその実像は果たしてどのようなものだったのか。300軒もの店が立ち並び、3000人以上の遊女と彼らを取り巻く多くの人びとが暮らしていた「もうひとつの江戸」を、本書を手にゆっくりと歩んでみてください。

2024/10/25

著者プロフィール

高木まどか

タカギ・マドカ

東京都生まれ。成城大学大学院文学研究科修了、博士(文学)。成城大学非常勤講師、徳川林政史研究所非常勤研究員、東京都公文書館専門員。著書に『近世の遊廓と客 遊女評判記にみる作法と慣習』がある。

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