年1時間で億になる投資の正解
1,320円(税込)
発売日:2024/10/17
- 新書
- 電子書籍あり
バフェットが妻に遺言した金融商品は? 個別銘柄か? インデックスか? 市場の暴落にどう対処すればいい? この一冊で、全てわかる!
投資にリスクはつきものだ。だが、投資しないのはもっとリスクだ――それはなぜか? 数ある投資術に“正解”などあるのか? 各賞受賞の実力派経済記者が、自身の体験と著名投資家や金融機関への取材、膨大な公開データから“ほったらかし投資”の極意を示す。カナダ発の世界的ベストセラーに日本版オリジナル「投資の10カ条」を加筆収録。年1時間の運用チェックでやがて資産が億になる、投資の最適解とは。
日本の読者のみなさんへ
はじめに――あらゆる投資家が失敗してきた
なぜ自分の投資は行き詰まっているのか?
序章 なぜ皆「アメリカ経済は崩壊する」などと言うのか?
投資家のスーパーパワー/投資のウソと虚構/僕は何もわかっていなかった
【コラム】40%
第1章 バブルは崩壊し、市場は収縮するものなのか?
ニュートンの大損失/球根バブル/5兆ドルが失われたITバブル/株式市場は「火遊び」か/市場に潜む無限のトラップ
第2章 じゃあ、「レアな真珠」を探せばいい?
レアな真珠の神話/プロは驚異的なリターンを得られるのか/年金基金などの機関投資家は?/ウォール街の“キング”はどうか/バフェットの賭け/S&P500に勝つのは難しい
【コラム】56%/S&P500指数を読み解く/貯金はするが、ほとんど投資しない若者たち/すべて一度に投資するか、段階的に投資するか
第3章 個別銘柄かインデックスか?
インデックスファンドとETF/「ばかげている」投資法/ふつうの投資家が知らないこと/「金融業界から搾取されている」客/インデックスファンドは危ない?
【コラム】投資信託vsETF/アクティブ運用vsパッシブ運用
第4章 どうして株式と債券なのか?
ポートフォリオにおける株式の役割/債券の役割/どう組み合わせるか?/地図だけでは冒険家にはなれない
【コラム】何歳までにいくら貯めるべき?/自分の純資産を計算する/株式市場の誕生は1602年/株式市場の上昇は永遠に続くのか/マイホームの頭金は投資すべき?/年金積立制度をバカにしない/借金があっても投資できるか/会社の退職金制度に入っていても投資は必要か
第5章 手っ取り早く金持ちになれるものか?
高速を時速200キロで突っ走りたい?/何百と現れた投資の「必勝法」/ハイリターンの誘惑/投資家がリターンを検証したら/「複利効果」の驚くべき威力/投資の勝者になるには/「投資はおもしろい」ものか?
【コラム】配当金をもらえるのは得なのか/達人ベンジャミン・フランクリン/18歳になるのを待たずに投資を始められるか/機会費用とは何か
第6章 「情報」は収集すべきか?
テレビは消そう、スマホの通知はオフにせよ/「予測」のお粗末さ/不人気な投資資産の実際のリターン/とにかく投資しつづけよ/西洋は衰退するのか/良いニュースと悪いニュースの影響力
【コラム】地球温暖化時代の投資
第7章 市場の「調整」にどう対処する?
パニックを起こさない/暴落はありふれたこと、避けられないこと、そして必要なこと/市場に参加する「入場料」/高値づかみはいやですか/株価下落のとてつもない恐怖/相場は前触れなく回復する/直感に従うのは間違い/方針は変えない/地下鉄でイライラしてもしかたがない
【コラム】なぜ女性のほうが投資が得意なのか
第8章 どうしてお金が増えないのか?
プロに任せた方がいい?/金融機関のロジック/金融業界の“恐ろしい裏話”
【コラム】資産運用だけで食べていくには/証券取引委員会(SEC)とは
第9章 けっきょく資産を増やすには?
1.低コストの証券会社を使う
ETF/マルチアセットETF/サポートは?/リバランスは必要か/低コストの証券会社を使うメリットとデメリット
2.ロボ・アドバイザー
ロボ・アドバイザーを使うメリットとデメリット
3.プロのサービスを利用する
投資アドバイザー/ファイナンシャル・プランナー/会計士/プロのサービスを利用するメリットとデメリット
【コラム】ESG投資という選択
おわりに――投資の正解とは
誰もが間違いを犯す/市場は僕が何者かなんて気にも留めない/自己憐憫に陥らない/投資における正解/世界から少し距離を置く
投資の10カ条
謝辞
註解
訳者あとがき
書誌情報
読み仮名 | ネンイチジカンデオクニナルトウシノセイカイ |
---|---|
シリーズ名 | 新潮新書 |
装幀 | 新潮社装幀室/デザイン |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 256ページ |
ISBN | 978-4-10-611062-7 |
C-CODE | 0233 |
整理番号 | 1062 |
ジャンル | ビジネス・経済、実用・暮らし・スポーツ、家事・生活の知識 |
定価 | 1,320円 |
電子書籍 価格 | 1,320円 |
電子書籍 配信開始日 | 2024/10/17 |
書評
世界でも日本でも。ベストセラー投資本の“共通点”
『年1時間で億になる投資の正解』――この刺激的なタイトルに、誰もが「本当にそんなことが可能なのか?」と疑問を抱くでしょう。しかし、本書は派手なタイトルに反して、極めて堅実で現実的な投資手法を提唱しています。それは、全世界株ETFへの投資と、あとはじっと待つという「インデックス投資」です。この手法は、近年、投資の世界で高く評価されており、その背後には長年のデータと合理的な分析があります。
著者はカナダ人のニコラ・ベルベ氏。意外なことに本書では触れられていませんが、ETF(上場投資信託)という金融商品は、実はカナダに起源があります。1990年、トロント証券取引所に上場された「TIPS35」が、世界初のETFです。しかし、カナダ人著者が推奨するのはカナダ株ではなく、全世界の株式に分散投資するETFです。
それはなぜなのでしょうか。
私は日本の個人投資家です。会社勤めをしながら投資ブログを書いてきました。今年の元日に惜しくも亡くなられた経済評論家の山崎元さんとは、『ほったらかし投資術』(朝日新書)という本を2010年に上梓しました。山崎さんが仰る「投資にできるだけ時間をかけない、投資でストレスを持たない、人生を大いに楽しむ」という理念に共感したためです。同書はおかげさまでベストセラーとなり、2022年に発売された「全面改訂 第3版」では、私が2002年から始めていたインデックス投資で資産1億円を達成したことも報告させていただきました。
そんな私にはカナダ人の知り合いはほとんどいません。また、著者のニコラ・ベルベ氏や本書に登場する欧米各国のメディア名、番組名、解説者、金融アドバイザーの名前にも正直にいって馴染みがありません。それにもかかわらず、著者が過去の市場データ、プロの投資パフォーマンス、そして友人たちのエピソードを基に導き出した結論――全世界株ETFが最も効率的だという見解――には強く共感します。興味深いのは、カナダ、アメリカ、日本など、世界各国で同じように市場の歴史を調べ、長期データを分析した結果、多くの専門家が「インデックス投資」という同じ結論にたどり着いていることです。私自身も個人投資家として同じ結論にたどり着いた者のひとりです。
本書では、金融の専門家たちがいかに誤った市場予測をしているかが、多くの実例とともに紹介されています。カナダやアメリカのメディアや金融アドバイザーたちが登場しますが、これらの名前は日本の読者には知られていないかもしれません。それでも、日本のメディアや金融アドバイザーたちと重なるような既視感があり、世界中で「後付けの相場解説」や「予測の誤り」が広がっている様子が浮かび上がります。
また、本書には日本の投資家にも浸透している情報が多く含まれています。たとえば、古典的名著『ウォール街のランダム・ウォーカー』や近年の話題作『サイコロジー・オブ・マネー』、ウォーレン・バフェット氏の賭け、その右腕チャーリー・マンガー氏の教えなど、世界中のインデックス投資家が共通して学ぶ知識が紹介されています。これらの知識を共有することで、読者は国を超えた普遍的な投資の真理に触れているような感覚を味わうことができます。
日本では、インデックス投資の際、米国株100%のポートフォリオを推奨する意見が目立ちます。これは、ここ数年の米国株の好調さや一部のインフルエンサーの影響が一因と考えています。しかし、著者はカナダ株100%や米国株100%ではなく、全世界株ETFを推奨しています。投資は未来を予測して賭けるものではなく、リスクを広範に分散し、安定したリターンを追求するものだと、著者は多くの事例を通じて強調しています。現在好調な市場にだけ投資するリスクを指摘し、全世界分散投資の重要性を再認識させます。
最後に、カナダでベストセラーとなった本書のメッセージはシンプルでありながらも非常に力強いものです。投資の世界には多くの道があるように見えますが、その道は「全世界株への投資」という一本道につながっています。本書を手に取ることで、読者はこの真理に向き合い、合理的な投資手法を学ぶ大きな一歩を踏み出すことができるでしょう。特に、将来に不安を抱える日本の若い世代にとって、本書が人生のよき経済的サポーターとなることを心から願います。
(みなせ・けんいち 会社員/インデックス投資ブロガー)
担当編集者のひとこと
投資に「正解」はあるのか
数年前にNISAを始めました。会社を早期退職して「投資で食べている」と自称する友人が「でもまだよくわからないことがいろいろあるんだよね」と言うので、一緒に証券会社主催のセミナーに行ってみたり、自分なりに本を読んだり、超臆病者の自分が投資なんてと思いながらも、「試しに」と始めたのがきっかけでした。
実際、始めて見たら、友人が言うようにわからないことがいろいろ増えて、「これでいいのか?」「あの人はうまくやってるみたいだけどなあ?」などと自問する日々。世に情報は多く、なにが「正解」なのかなんてわかるはずもない、と思っていました。
そんな中、出会ったのが本書でした。元日本経済新聞の記者で、個人投資に関する記事も数多く書かれていた翻訳家の土方奈美さんに「どうですかね……?」と恐る恐るリーディングをお願いしたところ、思わぬ好反応。以後はとんとん拍子で刊行が決まったのでした。
政府は「貯蓄から投資へ」とのスローガンを掲げていますが、なかなか踏み込めない人も多いでしょう。あるいは、投資を始めてはみたものの、市場が乱高下する中で「これはいったいなんなんだ?」「どうすればよいのだ?」と戸惑う人もいるのではないでしょうか。個人的には、本書のなによりの価値は投資への向き合い方を教えてくれること、超臆病者の自分なりに組み立ててきたことの「あれが間違っていたのか」「これはよかったんだな」と“答え合わせ”ができたことです。
何を「投資の正解」とするかは人によって違うでしょう。一攫千金を夢見る人には向かない本かもしれません。でも長い年月をかけて、未来の自分と向き合いたい人には格好の一冊なのではと思っています。
2024/10/25
著者プロフィール
ニコラ・ベルベ
Berube,Nicolas
1977年カナダ生まれ。金融ジャーナリスト、カナダの大手新聞ラ・プレスの経済記者。同紙初の米西海岸特派員として活動、全国新聞賞など各賞を受賞。カリフォルニア州ロサンゼルス在住。『年1時間で億になる投資の正解』は当初フランス語版がカナダで出版、ベストセラーとなり、世界各国で刊行の予定。
土方奈美
ヒジカタ・ナミ
1971年東京生まれ。翻訳家。慶應義塾大学文学部卒業後、日本経済新聞社にて記者を務め、独立。米モントレー国際大学院で翻訳修士号取得。米国公認会計士、ファイナンシャル・プランナー。