今月の表紙の筆蹟は、平野啓一郎さん。
波 2024年11月号
(毎月27日発売)
発売日 | 2024/10/29 |
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JANコード | 4910068231147 |
定価 | 100円(税込) |
阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第86回
【平野啓一郎『富士山』刊行記念イベント】
[インタビュー]平野啓一郎/この人生には、無数の偶然が積み重なっている
今村翔吾『五葉のまつり』
本郷和人/次回作が待ち望まれる、必読の一冊
月村了衛『虚の伽藍』
森 功/裏社会とともに肥え太った日本最大の仏教宗派
津村記久子『うそコンシェルジュ』
村雲菜月/信頼できるうそつきの条件
橋本 直『細かいところが気になりすぎて』
佐久間宣行/類を見ない“うるさい本”
平川動物公園『すごいコアラ!―飼育頭数日本一の平川動物公園が教えてくれる不思議とカワイイのひみつ―』
田中直樹(ココリコ)/コアラがもたらす動物園の未来
ピーター・J・マクミラン『謎とき百人一首―和歌から見える日本文化のふしぎ―』(新潮選書)
茂木健一郎/自分たちを知るための大切な「気づき」
増田晶文『蔦屋重三郎―江戸の反骨メディア王―』(新潮選書)
日野原健司/ノンフィクション的視点でまとめ上げた「蔦重」の生涯
高橋歩唯、依田真由美『母親になって後悔してる、といえたなら―語りはじめた日本の女性たち―』
佐野亜裕美/「母親にならない方がいい」と言われた私が母親になって
ニコラ・ベルベ、土方奈美 訳『年1時間で億になる投資の正解』(新潮新書)
水瀬ケンイチ/世界でも日本でも。ベストセラー投資本の“共通点”
【友近『友近の思い立ったらひとり旅』刊行記念】
[鼎談]友近×ガンバレルーヤ/「段取り力」がすごい!
【特別エッセイ】
南沢奈央/見知らぬ土地で、舞台をつくる 「可児日記」前篇
【掌篇小説】
阿刀田 高/花の香り
【ジョセフ・ノックス、池田真紀子 訳『トゥルー・クライム・ストーリー』日本推理作家協会賞翻訳部門受賞】
[インタビュー]ジョセフ・ノックス/“犯罪実録フィクション”誕生秘話――ジョセフ・ノックスに聞く
【私の好きな新潮文庫】
青木奈緒/深く潜って触れに行く
シャーロット・ブロンテ、大久保康雄 訳『ジェーン・エア(上・下)』
川端康成『古都』
幸田 文『雀の手帖』
【今月の新潮文庫】
矢樹 純『血腐れ』
若林 踏/恐怖と驚きの合わせ技で攻める短編集
【コラム】
物江 潤『「それってあなたの感想ですよね」―論破の功罪―』(新潮新書)
物江 潤/「神輿は軽い方がよい」とは言っても
三枝昴之・小澤 實/掌のうた
[とんぼの本]編集室だより
【連載】
杏/杏のパリ細うで繁盛記 第10回
中村うさぎ/老後破産の女王 第8回
古市憲寿/絶対に挫折しない世界史 第7回
エリイ(Chim↑Pom from Smappa!Group)/生時記 第27回
近藤ようこ 原作・梨木香歩/家守綺譚 第26回
三谷幸喜×ペリー荻野/もうひとつ、いいですか? 第7回
椎名 誠/こんな友だちがいた 第11回
高嶋政伸/おつむの良い子は長居しない 第14回
坪木和久/天気のからくり 第15回
内田 樹/カミュ論 第27回
【安部公房生誕100年】
ここは箱男の街
編輯後記 いま話題の本 新刊案内 編集長から
立ち読み
編集長から
今月の表紙の筆蹟は、平野啓一郎さん。
◎某新聞は、ある著者の本の書評が載ると、次の本がいかに傑作でも、前の書評から一年以上たっていないと書評は載せないルールがある由。「じゃあ『三四郎』の八ヶ月後に『それから』が出たけど、『三四郎』の書評を載せたからって『それから』のは載せないのか」とさる書評委員が反駁したそう。
◎そんな噂を思い出したのは、いま翻訳家小澤身和子さんが立て続けに凄い本を出しているからで、七月にデルモア・シュワルツの短篇集『夢のなかで責任がはじまる』(河出書房新社)とシルヴィア・プラスの長篇小説『ベル・ジャー』(晶文社)、十一月からはC・S・ルイス『ナルニア国物語』(全七巻新潮文庫)の連続刊行が始まる爆発ぶり。シュワルツは坪内祐三さん偏愛の作家で、表題作は〈両親を描くのにこの手があったか!〉と息を呑ませ、かつ〈映画〉というものの魅力に迫る傑作。天才詩人プラス唯一の長篇は、世界と折合いのつかない十九歳が味わう切実で、いっそ美しい地獄めぐりの物語。訳文は常に品と速度と流露感を湛え、読者を逸らしません。『ナルニア』新訳は晩秋の楽しみですが、さて、翻訳家にも書評の一年ルールが適用されるのかどうか。
◎新訳には旧訳にない附録がつくのも嬉しくて、例えばヴァレリー『ドガ ダンス デッサン』(塚本昌則訳岩波文庫)は図版も訳者あとがきも素敵な充実ぶり。これは吉田健一訳『ドガに就て』の新訳ですが、吉田訳には誤訳がある、と山田稔さんに言ったのは前田純敬。ある箇所を「便所」でなく「一物」と訳すべきだと主張したものの、前田さんの没後、山田さんが改めて調べると、吉田訳で正しいと分かります。この探索を通じて亡き前田さんと和解するのが名篇「前田純敬、声のお便り」。ところで、前田純敬をご存じですか?
▽次号の刊行は十一月二十七日です。
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雑誌から生まれた本
波とは?

1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。
創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。
創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。
現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。