
ギャンブル脳
990円(税込)
発売日:2025/01/17
- 新書
- 電子書籍あり
脳の暴走から底なしの泥沼へ。戦慄の脳内メカニズムを診察歴35年以上の精神科医が徹底究明。
「次こそ当たる! 一発逆転!!」。いい加減な予想は、期待を通り越してやがて確信へと変わっていく。そんな時、ヒトの脳ではいったい何が起きているのか。脳内にあふれるドーパミン、二度ともとには戻らない思考回路、ついには薬物中毒よりも深刻な依存状態に……。ギャンブル依存症の患者とその家族の苦しみに、長年向き合ってきた作家にして精神科医が多くの臨床例と最新の知見から解き明かす、恐怖のスパイラル。
はじめに
第一章 ギャンブル脳の正体
ギャンブル症とは
ギャンブル症の脳内化学伝達物質
ドーパミンまみれの脳
パーキンソン病の患者の豹変
ギャンブル症者の脳画像
変化した脳は元には戻らない
ギャンブル症とADHD(注意欠如多動症)
ギャンブル症とアルコール依存症
ギャンブル症とうつ病
ギャンブル症と自殺
ギャンブル症の遺伝的傾向
アルコール依存症や薬物依存との違い
第二章 ギャンブル症になりやすい人、なった人
一種の生活習慣病
子供のときにカンシャク持ちだった
興奮を求めやすい人
新奇なものに惹かれる人
負けず嫌いな人
内向きの性格
誉められたことがない人
ギャンブルに対する過剰な期待
自己過信
迷信じみた信じ込み
長い目で勝負を見ることができない
嘘と借金
妄想じみた二つの思考
「三ザル」状態と「三だけ」主義
ギャンブル脳を利用した胴元の戦略
第三章 脳が壊れ、家族が崩壊し、犯罪に手を染める
配偶者の苦しみ
ギャンブル脳による犯罪
ギャンブル規制の歴史
第四章 国と官僚の不作為が国を亡ぼす
調査するたびに下がる有病率
戦後に続々と誕生した公営ギャンブル
公営ギャンブルの活況
パチンコ・パチスロの奇怪
日本にはマカオが六つある
パチンコ・パチスロの売上額はスーパー並
各省が競い合う公営ギャンブル
骨抜きの「ギャンブル等依存症対策基本法」
新型コロナ禍で急激に進んだオンライン化
増える中学生のスマホゲームでの課金
日本も狙っているスポーツ賭博の解禁
見て見ぬふりのオンライン・カジノ
第五章 ギャンブルと日本人
今だけ、金だけ、自分だけのカジノ解禁
見ザル、聞かザル、言わザルの国と官僚
子をかばう親
日本人のギャンブル好きは古代から
生まれた時から周りはギャンブルだらけ
あと戻りができない日本人
第六章 それでもギャンブル脳は回復する
戦いは一生続く
自助グループが効く
ギャンブラーズ・アノニマス
アノニマス・ネーム
言いっ放しの聞きっ放し
無力そして心を開く
ゆっくりやろう
回復途上の試練
家族のための自助グループ
お金をどうするか
平安の祈り
思いやり、寛容、正直、謙虚
ギャンブル症になってよかった
おわりに 参考文献
書誌情報
読み仮名 | ギャンブルノウ |
---|---|
シリーズ名 | 新潮新書 |
装幀 | 新潮社装幀室/デザイン |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 224ページ |
ISBN | 978-4-10-611074-0 |
C-CODE | 0247 |
整理番号 | 1074 |
ジャンル | 暮らし・健康・料理 |
定価 | 990円 |
電子書籍 価格 | 990円 |
電子書籍 配信開始日 | 2025/01/17 |
蘊蓄倉庫
日本にはギャンブル症者が200万人!
この数字は福岡市の全人口を軽く超える数字です。衝撃的、といっていいでしょう。しかし、例えばあなたの友人が「パチスロにハマっちゃって、カネがなくてさ……」と言うとき、どこか軽く受け止めがちではないでしょうか。ところがギャンブル漬けの脳を分析すると、ドーパミンの過剰と、前のめりに短期的利益を追求する報酬系が暴走していることが分かっています。要するに、脳内回路が賭け事しか考えられない状態です。こうなると、目前のカネのためなら犯罪すら犯してしまう。横領、詐欺から闇バイトまで引き起こすギャンブル脳は、本人の人生を破壊し、家族や無関係な人たちも巻き込んでいく深刻な病といっていいのです。
掲載:2025年1月24日
担当編集者のひとこと
家族を崩壊させ社会を壊す「戦慄の病気」
大谷翔平選手の元通訳が引き起こした巨額のスポーツ賭博事件によって、「ギャンブル依存」という言葉が広く知られるようになりました。ギャンブル症者を35年も診てきた精神科医の著者が、この病気の正体と真の怖さを、すべて解き明かしたのが本書です。
〈ギャンブル症は人格のせいではなく、脳の病気だ〉と著者は断言します。最新の脳科学の知見によると、ギャンブル症の脳(ギャンブル脳)内では、ドーパミンが過剰になり、覚醒と興奮を維持する科学伝達物質が増加していることが分かっています。一方、衝動を制御し、精神的安定を維持するセロトニンは低下しています。つまり、興奮と衝動にブレーキがかからず、脳のタガが外れた状態といえるのです。
いったん「ギャンブル脳」になると、二度と元には戻りません。一日中ギャンブルのことが頭を離れなくなり、負けを取り戻すために賭け事をし、目先のカネのためなら犯罪まで犯す人間になってしまう。著者は、闇バイトなどの背景にもギャンブル症があると指摘します。
当然、家族は崩壊し、ギャンブル症の親に育てられた子はアダルト・チャイルドとなり、大人になるとギャンブル症を発症する。要するに、社会を壊す「シロアリ」のような病気といってよいのです。
では、趣味のギャンブル好きとギャンブル症者を分けるポイントは何なのでしょうか。
それは、「嘘と借金」です。「嫁がカードを使って散財した」「車上荒らしにあった」など、ギャンブル症者は、あらゆる嘘をつきまくりカネを借りようとします。
本書では、苦悩する配偶者の生々しい声を紹介しています。その切実な(妻の)叫びは、この病理の深刻さを物語っています。
日本のギャンブル症者はいまや200万人。福岡市の全人口をはるかに上回る数字です。本書は、その構造的な闇まで鋭く抉る画期的な一冊です。
2025/01/24
著者プロフィール
帚木蓬生
ハハキギ・ホウセイ
1947(昭和22)年福岡県生れ。精神科医・作家。東京大学仏文科卒業後、九州大学医学部に学ぶ。『三たびの海峡』で吉川英治文学新人賞を受賞、『閉鎖病棟』で山本周五郎賞を受賞するなど活躍する傍ら、医師として三十五年以上、ギャンブル症の治療に取組んできた。