
人はなぜ自分を殺すのか
1,276円(税込)
発売日:2025/08/20
- 新書
- 電子書籍あり
大切な人を失わないために──。精神科教授で自殺研究の第一人者による最新研究。スウェーデン発ベストセラー! アウグスト賞受賞作。
日本では毎年2万人、世界では80万人近くが自殺する。死因としては戦争や殺人より多く、WHOが警告する世界的公衆衛生問題だ。安楽死を選択できる国が増える一方で、自殺者の約85~95%には精神疾患があるとも言われ、自ら死を選ぶことの意味が改めて問われている──。〈自殺ゼロ〉政策を掲げるスウェーデンで、自殺研究の第一人者として知られる精神科医が、文化、宗教、歴史など多方面から徹底探求する〈生の価値〉。
第1章 自殺とはなんだろう?
その時、私はまだ11歳だった/いい死に方、悪い死に方/できることはなんでもやるべき?/自殺の母語が「恥」なら/「死ぬに任せる」のは是か非か/「魂を持たない人間の皮」/自殺幇助団体の存在
第2章 自殺に予兆はあるのか?
我が子の死/自殺を考えるプロセス/美しい遺書/自殺の予測は難しい/自殺の危険因子と防御因子/危険の兆候/忍び寄る「誰のせい?」/自殺という「選択」を尊重することは可能か
第3章 なぜ自殺は禁じられているのか?
どうして自分の命を絶ってはいけないのか/ルクレティアは死ぬべきだったのか?/自殺はなぜ罪だったのか/自殺者への罰/イスラム教徒の場合/日本の切腹
第4章 自殺する人は精神疾患なのか?
奇妙な犯罪者/理解不能な死を選んだ男/医療は介入すべきか/耐えがたい苦痛から逃れる
第5章 自殺に進化上のメリットはあるのか?
イルカの自殺/自殺するのは人間だけ/高度な脳が死へと導く/自殺の進化上のメリット/「反自殺メカニズム」
第6章 なぜ安楽死する人がいるのか?
104歳の安楽死/20代で死を選んだ精神疾患患者/24歳エミリーの安楽死/死を選ぶ人の決定能力/安楽死のパイオニアはどう考えるか/後悔しても手遅れな自殺/「ドクター・デス」/DIY化した死のマシン/安楽死から引き返す
第7章 1人の死が及ぼす影響とは?
希望の星/狂気の愛とその結末/繊細な母子とモルヒネ/狂った白鳥王/暗殺か自殺か
第8章 自殺予防対策は可能だろうか?
〈自殺ビジョン・ゼロ〉政策/消える自殺願望/自殺に効果的な介入プログラム/自由と自殺/社会が自殺を許している/自殺対策のあり方
第9章 意味のある人生とはなんだろう?
無意味だけれど有意義?/神経実存主義/あなたをコントロールしているのは脳/脳がすべてを創り出す/精神疾患がもたらす「意味」/ヒトラーだったら?/自分の外側に見つかることもある/人生の意味は変わる/生きているだけで意味がある/自分のお葬式で何と言われたい?
第10章 どうすれば自殺を止められるのか?
自殺した瞬間に襲われる後悔/ゴールデン・ゲート・ブリッジ/大事なのは「助けてください」/自殺予測とAI
第11章 自殺をどう受け止めればいいのか?
医療従事者を襲うショック/患者に死なれた医師へのアドバイス/愛ゆえの選択は是か非か
第12章 いかに難問だとしても
書くべきこと、書くべきでないこと/生の側に立ち続ける
謝辞
参考文献
訳者あとがき
日本版編集部より
書誌情報
読み仮名 | ヒトハナゼジブンヲコロスノカ |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
装幀 | 新潮社装幀室/デザイン |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 240ページ |
ISBN | 978-4-10-611097-9 |
C-CODE | 0247 |
整理番号 | 1097 |
ジャンル | 暮らし・健康・料理 |
定価 | 1,276円 |
電子書籍 価格 | 1,276円 |
電子書籍 配信開始日 | 2025/08/20 |
蘊蓄倉庫
日本人と自殺
本書では「日本の切腹」という項を設けて、日本における自死の捉え方を紹介しています。世界のほとんどの文化圏において自死は罪です(遺産が国に没収されたり、一族と同じ墓に入れてもらえないなどの罰を設けた地域もあったそうです)。そのため自殺は「悲惨で忌むべきもの、病気によるもの」とする見方が大半である中、切腹を「高貴で名誉なもの」とするなど、日本での自殺の捉え方は「他文化の見方とは大きく異なる」という見解を著者は示し、日本の自殺率が高いことにも触れています。
WHO(世界保健機関)は自殺を深刻な世界的公衆衛生問題と警告を発しています。日本でも政府をあげて自殺予防対策が進んでいますが、日本人の自殺に対する意識を変えることがまず大事なのかもしれません。
掲載:2025年8月25日
担当編集者のひとこと
自殺を考える決定版的な本
これまでに何人かの知人が自ら死を選びました。知らせを聞いて呆然としたこともあれば、自責の念に苛まれたり、遺された家族が目に浮かんで怒りに駆られたこともあります。なぜ彼が、彼女が、自殺したのか……? 延々と考え続けたところで、本人はすでにこの世におらず、確かめることなどできるはずもありません。そればかりか、考えれば考えるほど問いは増えるばかりです。精神疾患は原因になるのか? 防ぐことは出来たのか? 人には本当に自ら死を選ぶ権利はあるのか? これから自分はどうすればいいのか? 無力さを感じるばかりでした。
本書はスウェーデンのカロリンスカ研究所というノーベル生理学・医学賞を選定する名門研究機関で、長らく精神科の教授を務めた自殺研究の第一人者が執筆した自殺研究の最新報告です。〈自殺ゼロ〉政策を掲げる同国でベストセラーとなった一冊ですが、特定の価値観に偏ることなく、とても平易に、自殺がなぜ起こるのか、人類が自殺というものをどう捉えてきたのか、自殺予防対策は可能なのか、自殺に接したとき、どう捉えればいいのか、といったことを解説してくれています。透徹した、と言っていい筆致ながら、著者は最後には「生の価値」を鮮やかに示し、本書はスウェーデンで最も権威ある文学賞、アウグスト賞を受賞しています。
希死念慮に苦しむ人はもちろん、その周囲の人、愛する人を自殺で失いたくないと思っている人なら誰でも、本書から何か大事なものを受け取れるのではないかと思っています。
2025/08/25
著者プロフィール
クリスティアン・リュック
Ruck,Christian
1971年スウェーデン生まれ。精神科医。ノーベル生理学・医学賞を選定する名門医学研究教育機関、スウェーデンのカロリンスカ研究所で長年、精神科教授として診療に携わった自殺研究の第一人者。スウェーデンで最も影響力のある文学賞The August Prizeを『人はなぜ自分を殺すのか』で受賞。
久山葉子
クヤマ・ヨウコ
1975年兵庫県生まれ。翻訳家。エッセイスト。神戸女学院大学文学部卒。スウェーデン大使館商務部勤務を経てスウェーデン在住。訳書に『スマホ脳』『ストレス脳』『メンタル脳』など多数。