
知性の復権─「真の保守」を問う─
1,078円(税込)
発売日:2025/11/17
- 新書
- 電子書籍あり
ポピュリズムに抗う。日本の行方を見すえる画期的論考!
トランプ2・0を機に世界秩序は急激に変わりつつある。協調から対立、自国のアイデンティティ再構築を目指す動きはロシアや中国も同様で、こうした歴史的変曲点は百年前、第一次大戦後の戦間期にも酷似する。戦後八十年のいま、政治家や政党はこぞって「保守」を掲げるが、社会の閉塞感は強まるばかりだ。混迷と不確実性の時代をこの国はどう乗り越えるのか──近代思想史を掘り下げ、令和日本への処方箋を示す。
はじめに──無極化する世界
第一章 アイデンティティの政治の潮流
民主主義への合法的テロリズム/感染症パワハラで高まる攻撃性/火が付いた自己承認欲求/性的なもの、暴力的なもの/成熟するための時間と技術の重要性/アイデンティティの政治の登場/ソクラテスの気概、ルターの尊厳/近代政治のはじまり、ルソーの「真の自己」/エレファントカーブが語るもの/『ヒルビリー・エレジー』が語るもの/階級闘争から権利擁護運動へ/「生きられた経験」とは/非合法な暴力の一歩手前
第二章 テロリズムの論理と心理
数値の世界、交流の世界/愛山と透谷の「人生相渉論争」/シュムペーター「企業者」と「英雄豪傑」/福澤諭吉「世の事変は活物」/煩悶青年と成功青年に共通すること/流動性と不確実性が生みだすもの/安倍元総理暗殺と誤った強権批判/自殺者、ポピュリスト、テロリスト/不安と暗さが時代の気分に/役割と生きがいへの挫折/自己嫌悪がテロに転じるとき/朝日平吾と山上徹也の親和性/現在、われわれはどこにいるのか
第三章 「保守」という言葉の混乱
基軸国家としてのアメリカ/世界から失われる信用/「保守」という言葉の混乱/日本における保守主義/明治新政府による新自由主義経済/個人主義と法治主義への保守の抵抗/堺屋太一の遺著と「楽しい日本」/「一度目の日本」「二度目の日本」/歴代内閣を貫く五つの基本方針/「天国」に迫る三度目の敗戦/生きづらさが頂点に達するとき/熟れ切った戦後への処方箋
第四章 アメリカと世界の分断
トランプ2・0の前哨/アメリカン・コンパスとテクノ・リバタリアン/デジタル荘園の小作人として/近代システム総体からの脱出/自由貿易とグローバル化への批判/キャス、デニーンらの保守革命/文明の大転換という視座/『文明の生態史観』から考える/自己像の危機とユーラシア主義/近代の終焉
第五章 「戦間期」からの教訓
歴史の急浮上/米ロ中が模索するあらたな国際秩序/千三百年前の「日本」外交/E・H・カーが反発したウィルソン主義/ユートピアの破綻と革命的リアリズム/リアリズムとニヒリズム/カーに重なる戦間期日本の自己像/竹内好「アジア主義」と「近代の超克」/西洋か、アジアか、明治いらいの悩み/ポスト・自由民主主義の時代へ/自我の分裂、新しい自己像/外交は一種の予防策/日英同盟解消の教訓/外交のカギは日本の自己像
第六章 令和日本のデザイン
令和日本のデザイン/明治の富国強兵論/日本人の生のリズム/骨太にして繊細な明治の保守/国民主義の魅力/『岸田ビジョン』の可能性と問題点/「分散」への疑問/大平内閣と田園都市構想/フリーターの時代/「わたしの物語」の時代/七〇年代とは正反対の状況/新・富国論の要は「集中」/戦闘集団としての自衛隊/生者の論理と死者の論理/清水幾太郎の「核の選択」/共産主義を賛美した知識人/福田恆存の「個人的自己」/身の丈に合った富国と強兵策/「近代の危機」の渦中で/アジア主義という外交理念/中国外交と経験の不在/国力の限界を正しく把握する/決断力の遅さへの自問自答
おわりに──ある日本学者との会話
書誌情報
| 読み仮名 | チセイノフッケンシンノホシュヲトウ |
|---|---|
| シリーズ名 | 新潮新書 |
| 装幀 | 新潮社装幀室/デザイン |
| 発行形態 | 新書、電子書籍 |
| 判型 | 新潮新書 |
| 頁数 | 272ページ |
| ISBN | 978-4-10-611105-1 |
| C-CODE | 0230 |
| 整理番号 | 1105 |
| ジャンル | 哲学・思想、ノンフィクション |
| 定価 | 1,078円 |
| 電子書籍 価格 | 1,078円 |
| 電子書籍 配信開始日 | 2025/11/17 |
担当編集者のひとこと
混迷と不確実性の時代に
現代を評して、混迷と不確実性の時代だとしばしばいわれます。ニュースは朝に夜にトランプその人の発言や動向に右往左往し、それで日本はどうなるのか、という話が連日のように繰り返されています。
多国間主義から自国第一主義へ、自由貿易から保護貿易へ、国際協調から国家間対立へ──自国のアイデンティティ再構築を目指す大国の動きは、ロシアや中国でも同様です。翻ってわが国の政治状況は安定からはほど遠く、日本人ファーストを掲げる新たな政治勢力が急速に支持を広げています。
いったい世界では今、何が起きているのか? ほぼ一世紀ぶりの世界情勢の変化の荒波を、日本はどう乗り越えていくのか? 昨今、政治家がこぞって掲げる「保守」は真の解決策たりうるのか?──こうした大きな問いに対して、大衆受けのする安直なポピュリズムで応えることは国家の安危に関わります。
本書では、近現代の歴史と思想史を探究することで、令和日本の現在地、そして未来への道筋を示します。現代を代表する批評家による、渾身の論考です。
2025/11/25
著者プロフィール
先崎彰容
センザキ・アキナカ
1975(昭和50)年東京都生まれ。東京大学文学部倫理学科卒。東北大学大学院博士課程修了、フランス社会科学高等研究院に留学。2025年11月現在、社会構想大学院大学教授。専門は日本思想史。主な著書に『違和感の正体』『未完の西郷隆盛』『国家の尊厳』『本居宣長』などがある。

































