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長期政権の条件

老川祥一/著

1,034円(税込)

発売日:2026/05/18

  • 新書
  • 電子書籍あり

政治記者歴60年、読売グループトップが語る「権力の真実」。

佐藤栄作、中曾根康弘、小泉純一郎、安倍晋三。長期政権を実現した政治家には、共通した点がある。それは、運に恵まれたこと、選挙に強いこと、そして自制心を持ち続けたことである。それが失われる時、権力はあっという間に崩壊する。栄耀栄華を極めた政治家は時に、自分の得意技によって足をすくわれるのだ。政治記者として60年以上、日本政治を観察してきた読売グループトップが描く「権力の真実」。

目次

はじめに

第一章 運と選挙に強くなければならない
佐藤栄作は「やっぱり運なんだよ」と呟いた/政敵が立て続けにいなくなる/「議席大幅減なのに大勝利」の不思議/逆に「わずか1議席減でも大惨敗」とされた40日抗争/総理の座が転がり込んできた中曾根康弘の強運/幸運─試練─幸運というプロセス/初の外遊・韓国訪問が大成功/「不沈空母」発言のピンチを正面から乗り切る/失敗に終わった「二階堂擁立劇」/田中角栄、脳梗塞に倒れる/「無理押しは二度まで。三度はだめだよ」/周到に計画されていた「死んだふり解散」/自制心で手にした影響力/中曾根を無理やり引退させた小泉純一郎/巻き起こった小泉旋風/始まった「風頼み政治」/「構造改革」が図に当たる/真紀子更迭、9・11、北朝鮮/参院選敗北からの郵政選挙大勝利/「小選挙区のおかげで大勝利だなんて、運だよなあ」/「運と選挙の強さ」を意識していた安倍晋三/なぜ運を自分から手放したのか/民主党政権という「敵失」/タカ派政治家が必要とされた国際情勢/選挙大勝後のロケットスタート/選挙は連戦連勝/徐々に表れた「思い上がり」の兆候/「忖度」を評価するような空気/最大の危険は勝利の瞬間にある

第二章 得意技によって出世し、得意技によって倒れる
大統領制よりも選挙の意味が重い議院内閣制/地盤、看板、カバン/議員心理を軽視し過ぎた某政治学者/議員心理を読み違えた菅総理/「政界一寸先は闇」/成功体験が目を曇らせた/日本郵政社長人事で権限を行使/役人心理と議員心理の違いを見落としたか/人間、得意技で倒れる/田中角栄の「反福田工作」に気付かなかった佐藤栄作/福田「上善は水の如し」発言の真意/角福戦争の10年/カネでねじ伏せられたのは議員まで、国民全体はムリ/得意のカネが命取り/竹下登が先鞭をつけた「政治資金パーティー」/足をすくったリクルート事件/失敗の原因は「数とカネ」への過信

第三章 引き際を誤らせる「権力の蜜と毒」
限界効用逓減の法則/数の論理が反転する時/派閥の論理/「メジロがあんまり高いところにとまっているんで」/田中角栄が陥った「権力のワナ」/権力のもたらす爽快感と危うさ/「権力の病」は野党でも無関係ではいられない/権力欲を止められるのは死しかないのか/スターリン、自業自得の死/「天才」フーシェも引き際を誤った/派閥は40人前後が手ごろ?/安倍派が田中派と違った点/不信感を招いたのは、額の大きさではなくルーズさ/派閥の存在が希薄になった自民党総裁選/安倍派一極集中の源は「小選挙区制」/神輿にぶら下がる人が増えて弛緩した政治/安倍政権の終わり、自民党長期政権の終わり/投票行動の流動化/石破総理の反省

おわりに

参考文献

書誌情報

読み仮名 チョウキセイケンノジョウケン
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 224ページ
ISBN 978-4-10-611124-2
C-CODE 0231
整理番号 1124
ジャンル 政治
定価 1,034円
電子書籍 価格 1,034円
電子書籍 配信開始日 2026/05/18

蘊蓄倉庫

逃した特ダネ

 1986年7月6日の衆参同日選挙は、「同日選をする」ことを前提に年初から戦略を練っていたものであることを、総理だった中曾根康弘さんが後に明かしています。当時、野党の劣勢が伝えられる中で、「同日選はなくなった」と野党や世間に思わせた戦略は後に「死んだふり解散」と称されます。
 実は、政治記者だった著者は、騒動の渦中に中曾根さんの側近と蕎麦屋で話している時に、その側近がニヤッと笑いながら「まあ、死んだふりですわ」と言ったのを聞いています。それが「死んだふり解散」を示唆しているものだとは気付かず、著者は特ダネを逃してしまいました。

掲載:2026年5月25日

担当編集者のひとこと

運と選挙と自制心

 本書の著者である老川祥一さんは、政治記者として60年以上、日本の政界の変遷を見続けてきました。若手の総理番として佐藤栄作に随行していた老川氏はある時、「僕はよく、人から運が強いといわれるし、まあ、自分でもそうかなと思う面があるんだがね」と佐藤が口にしたのを耳にします。権力の頂点を極めた人物のその言葉は、当時の老川氏には意外だったようですが、時の政権の盛衰を見続けてきた今となっては、そのセリフがある本質を突いていたことに気付いたそうです。

 佐藤栄作以降、長期政権を築いた中曾根康弘、小泉純一郎、安倍晋三にはすべて、運がいい、選挙に強い、自制心がある、という三つの共通した資質がありました。この三つはループのような関係になっていますが、歯車が狂いだすとあっという間に好循環が壊れてしまいます。運に強く、選挙も勝ち続けた安倍晋三政権も、その末期には官邸から「自制心」が失われていた兆候が垣間見えました。

 また、政治家は何らかの「得意技」を駆使して政権の階段を登りますが、しばしばその「得意技」によって権力から転げ落ちます。「カネ」でつまずいた田中角栄、政治資金獲得の新たな手段「パーティー」が問題視された竹下登、官僚心理の巧みな読み手だったが議員心理は読み違えて失速した菅義偉など、その例は枚挙に暇がありません。

 本書は、著者が長年の政界観察によって得た興味深いエピソードを紹介しつつ、政界という不思議な空間にうごめく政治家たちの心理とロジックを解き明かしていくものです。読み進んでいくと、総選挙で史上最高の勝利をおさめた高市早苗政権が、長期政権を築いていくには何が必要なのか、つまずくとしたらどうしてそうなるのか、自然に思考が導かれていきます。

 ぜひご一読ください。

2026/05/25

著者プロフィール

老川祥一

オイカワ・ショウイチ

1941年生まれ。読売新聞グループ本社代表取締役会長兼主筆。早稲田大学政治経済学部を卒業後、読売新聞社に入社。政治部記者、ワシントン特派員、編集局長、大阪本社代表取締役社長、東京本社取締役社長などを経て現職。著書に『政治家の胸中』『政治家の責任』など。

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