新潮社

吉本ばなな『キッチン』刊行30周年 『キッチン』と私 思い出・エピソード大募集

私がこの世でいちばん好きな場所は台所だと思う──

あなたと『キッチン』をめぐる物語をお寄せください。
吉本ばななは、皮膚やかたちではなく、
はじめから人のこころを見ているような気がする。
糸井重里
あんなに澄んだ小説は、あとにも先にも出会ったことがない。
出てくる人みんな、一生懸命生きていて、こちらまで照らされる。
綿矢りさ
ただ生きている。
それだけの事を、こんなにも褒めてくれるのは、
この物語だけだと思う。
木村文乃

最後の家族を失った深い悲しみを涙にした末、ゆういちに「ねむくて。」と一言告げるシーン。
崖っぷちを生きる辛さと、その楽しさを心に刻む、夜道のシーン。
ただ生きようと伝えるために、一緒にカツ丼を食べるシーン。
全てのシーンが孤独を背中合わせに生きる毎日に潜む温もりに気付かせてる、お守りのような本です。
この読書は、最高の食事。
本当に、本当に大好きです。

こびと

私の家族にはあまり読書の習慣がなかったが、それでも本棚には「キッチン」があった。だからと言ってあえて読むこともしなかった私が「キッチン」に再会したのは、中学2年生の頃だ。中2男子なんてまだまだ子どもで、休み時間は校庭へ飛び出しドッジボール。そんな中、隣の席の男の子は、日差しが差し込む窓際で一人、本を読んでいた。彼が手にする「キッチン」が私にはどうしても気になった。
それから、私とその男の子の恋愛はなんだかんだで7年と半年続いた。7年の間に私の本棚には沢山の本が並んだ。みかげたちが食べたようなカツ丼が食べたくて、美味しいカツ丼屋さんを二人で探してみたりもした。
あれから私はいくつかの恋をして、別の人と結婚し、趣味も増えた。それでもあの頃のキラキラした想いがふと浮かんでくるときがある。少し疲れたなぁと思うとき、背中を押してほしいとき、結局手にするのは「キッチン」なのだ。

青子

キッチンを初めて読んだのは26歳の時。いい歳して愛も恋もまだわからないけど大事な人はたしかにいて、人との繋がり方や自分の居場所にはいろんな形があってよくて、周りの人をもっと大事にしたいと思えました。しばらく連絡を取っていない、大切ですこし緊張する人に連絡してしまいました。

いち

初めて読んだ頃、私はまだひとの死を知らなかった。ただ美しい言葉に胸を打たれた。親友をなくした今、夜中の台所で「私と台所が残る。自分しかいないと思っているよりは、ほんの少しましな思想だと思う。」という言葉を思い出す。同じ言葉たちが、美しさだけでなくリアルな切なさを持ってわたしを救ってくれた。

才子

『キッチン』と出会ってから、今では私の精神安定剤のようになっています。読んでいるとトゲトゲした心が、みかげの涙と一緒に流されていくようで、すぅーっと落ち着いてきます。いざという時や、心細い時に読んで心を落ち着かせるために、バッグに入れています。ハードカバーは流石に傷んできたので、今は文庫本を持ち歩いています。

ともみぃ

「私の言葉はどこまであなたの孤独に届くだろうー。」10年前古本屋で見つけたこの本はこんな帯紙が巻いてあった。19だった私はみかげのように足を進めることを、生きていくことを心底投げ出したかった。人生に負けまくって一歩も前向きになれない私の絶望に確かにこの本の言葉は届いた。何度も言葉に線を引いてページを折って読み返して、そうしても挫折も悲しみもなくならないけど確かに私の奈落のような孤独に寄り添ってくれたのはこの一冊の本だけだった。

生活感のあるキッチン

私がキッチンを初めて手に取ったのは20歳を超えてからだったと思います。読んでいるうちに中学生のころを思い出しました。当時の私は多感な時期ということもあり、色々と荒んでいたのですが、気分転換に母の夕食作りを手伝いはじめ、ゆっくりと、しかし確実に穏やかな気持ちになっていったのをよく憶えています。背の低かった当時は色々なものが高い位置にあり、奥まった所に置いてあるお玉や菜ばしを取るのに苦労していました。今では背伸びをすることも、腕を伸ばすこともなくなり、随分と遠い場所へ来たのだなと感傷に浸っています。

あまやま

孤独な人生だけど、ただただ生きていこうと思わせてもらえた。いつか素敵なキッチンのある家に住みたくさん料理を作ろうとゆう夢がひとつできた。

あや

台所と、月のように美しい孤独。
それから、夜を歩いていく方法。
『キッチン』という小説は、私にとってそういう居場所だったのです。

はかり

キッチンは私に取ってお守りのような、切迫しているときは酸素ボンベのような存在です。苦しくても1ページ目を開けば息ができるようになる。そうやってずっと生き延びてきた感じがします。
人はやはり一人です。家族がいても、恋人がいても一人です。それでいいと思う。
でもその一人に『キッチン』は優しく寄り添ってくれる。
今は私もそんな仕事ができるようになりたい。受け取ったきれいなものをまた誰かに渡したい。それが、恩返しのような気がします。

透子

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