

あなたと『キッチン』をめぐる物語をお寄せください。
吉本ばななは、皮膚やかたちではなく、
はじめから人のこころを見ているような気がする。
糸井重里
あんなに澄んだ小説は、あとにも先にも出会ったことがない。
出てくる人みんな、一生懸命生きていて、こちらまで照らされる。
綿矢りさ
ただ生きている。
それだけの事を、こんなにも褒めてくれるのは、
この物語だけだと思う。
木村文乃

高校の図書室で始めてばななさんの本を手にしました。家族も学校のクラスもどちらもとても荒れていてストレスフルな毎日を過ごしていましたが、キッチンを夢中になって読んでいる時間は心がほっとして嫌な事を忘れる事が出来ました。何回も何回も借りて読んでいました。大学生になって購入したキッチンの文庫本は今でも私のお守りのような存在で、行き詰ったり辛い時はキッチンのワンシーンが頭に浮かび読み返します。この本を心の支えにしている人は私の想像を超えてとてもたくさんいると思います。ばななさん、たくさんの幸せをいつもありがとうございます。
ぽぴぃ
何気なく立ち寄った書店で、何気なく文庫本のコーナーへ足を運び、何気なく手に取った、その本が、「キッチン」でした。
少し読んでみようと読み始めたらぐーっと引っ張られていくのがわかり、ページをめくる前に本を閉じて、レジへ持って行きました。
家に連れて帰ったあとは、夢中で読みました。みかげがバスを降りてわんわん泣いたところでは、わたしも一緒に泣きました。
えりこさんの優しさにも、心を温めてもらいました。
ああ、今日はこの作品に出会うために出かけたのかもしれない、と思って、嬉しくなったのをよく覚えています。
それ以来、元気がなくなった時や、気持ちが塞いでしまった時、心が折れそうになってしまった時、「キッチン」を読んで力をもらっています。
力強く一歩踏み出せるようになる、そんなパワーの源です。
ろみ、
キッチン、は私の一番好きな小説かもしれない。
何度も何度も読み返して、それでも飽きなくて語学留学の時にも持っていった。人口2万5千人中2万人が学生という町。夏休み、ゴッソリと人の減った閑散とした娯楽のない町で何度も何度もキッチンの世界に旅をした。
私にとって近くの大きな公園は子供の頃から井の頭公園だったし、深夜でもあいてる喫茶店に入れるようになった年頃だったし、石鹸みたいな匂いのアールグレイの紅茶を覚えたばかりの頃だった。
私の人生の中で「あの頃」が凝縮された文章、それがキッチンという小説だから、何度でも読み返して何度でもあの時を思い出せる。人間、そんな小説に出会えることは決して多くないことを30年経ってやっと知った。私は、出逢えて良かった。
※米越光※