国内外問わず絶大な人気を誇るSF作品の金字塔「攻殻機動隊」シリーズ。士郎正宗先生による原作マンガの連載開始から37年経つ今も、いや、AIが現実世界で飛躍的進歩を遂げた今だからこそ、その魅力と存在感は増すばかりです。とりわけ2026年は「攻殻」イヤーとなりそうな予感。1月30日には「攻殻機動隊」全アニメシリーズを横断する大規模展覧会、「攻殻機動隊展 Ghost and the Shell」が虎ノ門・TOKYO NODE GALLERY A/B/Cで開幕します。加えて年内には、TVアニメーション最新作「攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL」も放送予定。
そんな「攻殻」イヤーの年頭に、シリーズの“これまで”と“これから”を一気に見通そうというのが、「芸術新潮」2月号の78頁にわたる大特集「攻殻機動隊 深化する電脳世界」です。これから作品に触れる人も、コアなファンも、どちらにも楽しんでいただけるよう、各方面に徹底取材を敢行しました。もちろん「芸術新潮」らしく、原画などのビジュアル要素も満載です。
内容は、大きく3つのパートに分かれます。
ひとつめは、「LEVEL01 総復習 マンガからアニメへ、拡張し続けるその軌跡を辿る」。これまでの「攻殻機動隊」シリーズの歩みを振り返ります。案内人には『攻殻機動隊論 新版_2025』の藤田直哉氏を迎え、各作品のテーマや見どころについて教えていただきました。加えて押井守氏、神山健治氏、荒牧伸志氏という歴代監督へのインタビューを掲載。原作マンガ『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』をめぐるそれぞれの解釈、制作当時のスタジオの雰囲気など、思い思いにお話しいただいています。
ふたつめは、「LEVEL02 超展示 全アニメシリーズを横断する画期的展覧会を体感せよ」。TOKYO NODEでの前述の展覧会について詳しくご紹介いたします。展覧会のクリエイティブディレクターからは、全体のコンセプトから普段なかなか聞くことのできない展覧会づくりの裏話まで、会場設計を担当したDDAAの元木大輔氏には展示用什器へのこだわりなどを伺いました。ほかにも挑戦的な取り組みが満載の展覧会を、臨場感たっぷりにガイドしています。
最後が、「LEVEL03 最新作 気鋭のアニメーションスタジオが切り拓く、新たなる地平へ」。TVアニメーション最新作を手掛けるスタジオ、サイエンスSARUを訪ねました。制作を取り仕切るアニメーションプロデューサーに意気込みを聞いたのに加え、シリーズ構成と脚本を手掛ける作家・円城塔氏へもインタビュー。長く続くシリーズ故の、世代を超えた作品受容などについて伺いました。
いずれの取材を通しても、関係者みなさんの「攻殻機動隊」に対する熱量が印象的でした。作品と同じ時代を歩んできた方からは、もともとバイブル的な影響を受けてきた作品をどのように再解釈するかというこだわりを強く感じた一方、若手世代からは、すでに伝説的な作品となっているシリーズへの憧れと、それに関わるプレッシャーについてお話しいただくことが多かったように思います。「関係者全員が作品のファンなので、成果物として120パーセントのものができあがってくる」という展覧会クリエイティブディレクターの言葉のとおり、シリーズの魅力がさらなる作品世界の拡張へとつながっていくのを実感し、圧倒されると同時に、創作の持つ底力を再確認しました。
ちなみにこの特集の担当編集者である筆者自身は、原作マンガはもちろん、押井監督による映画第1作よりも後の生まれ。初めて触れたシリーズ作品は、神山監督の「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」でした。インターネット上で、「笑い男」の画像を見かけたことがきっかけです。その後、マンガを手に取り、大きく違った作品であることに驚きながら、士郎先生が描く世界のファンにもなっていきました。特集を組むにあたって改めてシリーズを通して観返しましたが、どの作品も原作と世界線や主要キャラを共有しつつも、監督それぞれの表現をはっきり打ち出していることを感じました。また、「笑い男」のエピソードのように、各作品の制作時点での社会的な関心事を物語に巧みに織り込むことで、架空の近未来世界の出来事を観客の自分事に結び付けようとする志向は、数あるアニメ作品の中でも際立ってユニークなものだと思います。昨今、マンガ作品の映像化をめぐっては、“原作準拠イコール原作へのリスペクト”とみなす傾向が強まっています。「攻殻」シリーズのあり方は、そうした風潮とは一線を画すオルタナティヴでもあるでしょう。
「芸術新潮」2026年2月号 発売中
(「芸術新潮」編集部)
波 2026年2月号より































