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いま注目の1冊!

270万部超『国家の品格』に続く独創的文化論。


 教養を身につけたところで偉くなるわけでも金持ちになるわけでもない。それでも藤原さんは「教養は大事である」と言います。一つは、教養こそが「大局観」をもたらしてくれるから。もう一つは、我々が民主主義社会に住んでいるからです。教養なき民は、一時的な熱狂に身を任せ、国家を誤らせかねない。そこで、国家を「国民の皆さま」から守る礎として教養が必要になる、との考えです。
 藤原さんの教養論で独特なのは、「教養の四本柱」として、「人文教養」「社会教養」「科学教養」に加え、「大衆文化教養」を付け加えていること。旧制高校型の「教養主義」に浸っていたはずの戦前の日本は、亡国の戦争に突き進んでしまいましたが、なぜそうなってしまったのかと言えば、エリートが「孤高の教養主義」に染まっていて、俗世間と隔絶していたからです。その欠点を克服するには、血と汗と涙に満ちている日本の大衆文学や大衆芸能に親しむのが最良の手段。「西洋の古典よりもむしろ日本の大衆文学に親しむべき」と藤原さんはいいます。
 教養の中核にあるのはもちろん「読書」。本書では、藤原さんの読書にまつわるエピソードもたっぷりと語られています。

波 2019年5月号「新潮社の新刊案内」より

著者紹介

藤原正彦フジワラ・マサヒコ

1943(昭和18)年、旧満州新京生れ。東京大学理学部数学科大学院修士課程修了。お茶の水女子大学名誉教授。1978年、数学者の視点から眺めた清新な留学記『若き数学者のアメリカ』で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞、ユーモアと知性に根ざした独自の随筆スタイルを確立する。著書に『遥かなるケンブリッジ』『父の威厳 数学者の意地』『心は孤独な数学者』『国家の品格』『この国のけじめ』『名著講義』(文藝春秋読者賞受賞)『ヒコベエ』『日本人の誇り』『孤愁 サウダーデ』(新田次郎との共著、ロドリゲス通事賞受賞)『日本人の矜持』『藤原正彦、美子のぶらり歴史散歩』『国家と教養』等。新田次郎と藤原ていの次男。

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