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科学の新鮮な感動 第38回 新田次郎文学賞受賞作!

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 小説には珍しい科学のトピックを人間ドラマのなかで描き、昨年十二月の刊行以来ロングセラーとなっていた短篇集『月まで三キロ』が、このたび新田次郎文学賞に選ばれました。
「誰かが目を輝かせて知識を探求することが、別の誰かにほんのちょっぴり影響を与える――化学反応のような出来事が平凡な日常にも起こり得るというストーリーが、じんわりと胸に迫る」。選評(「小説新潮」六月号)のなかで、選考委員のひとり、諸田玲子さんはこう記しています。
 本作に登場するのは、事業の失敗、離婚、介護から人生に絶望し、死に場所を探している男、母親を癌で亡くした小学生の女の子、家族につくすことに疲れた主婦たち。それぞれが思いがけないタイミングで、月や宇宙、火山などにまつわる不思議な真実に触れ、心揺さぶられて、再び自分の人生を歩み始めます。でも、それは決して新たな道ではなく、科学のきらめきによって気づかされた、それぞれの足元にもともとあった道なのです。
 六篇の物語は、登場人物が人生で大切なことに気づくまでの道のりとその瞬間を描きます。心に希望の小さいあかりが灯るような、澄み渡るような、かつてない読後感が待っています。

波 2019年6月号「新潮社の新刊案内」より

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