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第18回小林秀雄賞受賞! 戦後を代表する批評家・初の評伝

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 江藤淳さんが自裁されたのは1999年7月21日。夕方に雷雨が降った日ですが、もう20年経ちました。『江藤淳は甦える』は、最後に会った編集者である著者・平山周吉さんが5年がかりで完成させた1500枚の大作です。執筆にあたり、平山さんは江藤淳の発表されたすべての文章や談話に目を通す、というルールを自らに課しました。
 しかし、江藤さんの文章は明快なのに、人生は謎が多い。読めば読むほど実像は見えなくなる。平山さんは、選考委員の片山杜秀さんが「平山周吉は名探偵なのです。しかもしぶとい。『刑事コロンボ』を思い出さずにはおれません」というごとく、テキストの細部から周到に事実を読み込み、知人達に徹底的な取材を続けて、「『戦後』という時代を生きた日本人全体の『自画像』なのではないか」(関川夏央さん選評より)と評される重厚な伝記を仕上げました。
 菊地信義さんの装幀は、4歳半で死別した母・江頭廣子と遺書で本文を挟む形を採っています。江藤さんの生は、その2つの写真に象徴されるという読みによるデザインです。大江健三郎との絶交、「右」と「左」でなぜか一致する吉本隆明との交流など、戦後知識人の織り成す群像劇としても読める一冊、秋の夜長にうってつけです。

波 2019年10月号「新潮社の新刊案内」より

著者紹介

平山周吉ヒラヤマ・シュウキチ

1952年東京都生まれ。雑文家。慶応義塾大学文学部卒。雑誌、書籍の編集に携わってきた。昭和史に関する資料、回想、雑本の類を収集して雑読、積ん読している。著書に『昭和天皇「よもの海」の謎』(新潮選書)、『戦争画リターンズ―― 藤田嗣治とアッツ島の花々』(芸術新聞社、雑学大賞出版社賞)、『江藤淳は甦える』(新潮社、小林秀雄賞)、『満洲国グランドホテル』(芸術新聞社、司馬遼太郎賞)がある。boid/VOICE OF GHOSTより刊行中のKindle版『江藤淳全集』責任編集者。近刊として『昭和史百冊(仮題)』(草思社)がある。

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