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2020年 賀正 新潮社「他人の靴を履いてみる。」

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 今年、2020年夏の東京五輪・パラリンピックでは、世界中から多くの人々が訪れることでしょう。今や訪日外国人は年間3000万人を越え、日本に住む外国人は195の国・地域出身の280万人と、いずれも過去最高の勢いです。コンビニで働く外国人の姿は日常となり、国籍、人種、性別、年齢といった多様性だけでなく、ライフスタイルや価値観の幅も広がるばかりです。

 ただ多様性のある社会は、一方で「面倒くさい」社会でもあります。多様性が引き起こす様々な問題をリアルに描き、それを親子でともに悩み考え乗り越えていく日々を綴って23万部の話題作となっているのが、ブレイディみかこさんの『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』です。

 舞台はイギリス。ブレイディさんの13歳の息子が通う地元の中学校は、人種差別に貧富の差、ジェンダーの問題などにあふれた、まさに世界の縮図のようなところ。毎日が事件の連続です。

 ある日のこと、学校でこんなテスト問題が出たのだといいます。

「エンパシーとは何か?」

「シンパシー」は他人に共感する感情のことですが、「エンパシー」という聞きなれない言葉の意味を、ブレイディさんは本書でこう綴っています。

〈自分と違う理念や信念を持つ人や、別にかわいそうだとは思えない立場の人々が何を考えているのだろうと想像する力のこと〉

 そしてブレイディさんの息子は、エンパシーについてこう回答したのです。

「自分で誰かの靴を履いてみること」

 立場や意見が異なる相手への不寛容さが増しているのは、ここ日本も同じ。そんな「面倒」な社会で暮らすには、「他人の靴を履いてみる」試みが必要不可欠なのかも知れません。

 今年も新潮社は、今を考えるきっかけとなる本をお届けいたします。

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朝日新聞/毎日新聞/産経新聞/東京新聞/西日本新聞 2020年1月1日掲載

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