お知らせ

全国の書店を席巻した 「文庫X」その正体は……

 2016年7月22日、盛岡の「さわや書店フェザン店」の一角に、奇妙な本が並びました。その名は「文庫X」。「どうしてもこの本を読んで欲しい」という書店員の熱い思いが切々と綴られた特製カバー[画像リンク]がかかり、さらにビニールに覆われて、内容はおろかタイトルすら窺い知ることはできません。分かっているのは、税込810円という価格と、小説ではないということだけ。にもかかわらず、文庫Xは展開からわずか2週間で「200冊」を売り上げ、その後も、1000冊、2000冊と爆発的に売れ続けます。

書店写真
さわや書店フェザン店

 購入者からも、「文庫Xを読み始めたけど止まらない!」「さわや書店の担当さん、ありがとう! こういう企画がなければ、一生この本に出会えなかった」「自宅で簡単に本が買える時代に、こういう買い方って、愛に溢れて最高にクールですね」……そんな声が寄せられる中、企画に共鳴した全国の書店でも「文庫X」の展開が始まります。最初の5書店から、その数は週を追うごとに増え、ついに11月下旬には、全国47都道府県の600店以上の書店に「文庫X」が並んだのです。展開前には3万部だったこの本の刊行部数は、今では18万部に! 新聞やテレビでもたびたび取り上げられた「文庫X」は、『現代用語の基礎知識2017』に「世相語」として掲載されるに至りました。

  • 書店写真
    あゆみBOOKS仙台青葉通り店
  • 書店写真
    柳正堂書店オギノ湯村ショッピングセンター店
  • 書店写真
    岩瀬書店富久山店

 この覆面文庫の正体が、2016年12月9日、さわや書店が開いたイベント「文庫X開き」で、ついに明かされました。覆面の下にあったのは、清水潔『殺人犯はそこにいる―隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件―』(新潮文庫)。著者自身の徹底取材で、北関東連続幼女誘拐殺人事件の闇を照らし、裁かれぬまま野放しになっている真犯人に迫った、渾身のノンフィクションです。「調査報道のバイブル」と絶賛され、新潮ドキュメント賞と日本推理作家協会賞をダブル受賞した、知る人ぞ知る存在だったこの本が、「書店発」の企画によって新たな、大勢の読者と出会い、著者の思いは多くの人々の胸を打ったのです。


さわや書店フェザン店 長江貴士さん 直筆カバー

 申し訳ありません。僕はこの本をどう勧めたらいいか分かりませんでした。どうやったら「面白い」「魅力的だ」と思ってもらえるのか、思いつきませんでした。
 だからこうして、タイトルを隠して売ることに決めました。
 この本を読んで心が動かされない人はいない、と固く信じています。

書店員さんの声

本書は、いまだ未解決の事件について犯人をズバリ指摘してしまう、驚愕のルポである。と同時に、ここまで状況が明らかなのに、犯人を逮捕できない(いや、しない)警察に対する告発の書だ。本書を日本推理作家協会賞にした日本推理作家協会の正義感は素晴らしいと思う。

啓文社西条店 三島政幸さん

真実とは、信頼とは、保身とは、良心とは、悪意とは、風潮とは。メディアの一端に携わる身としてギリギリしながら一気に読了した。これは私たちが知っておくべき《事実》。ぜひ小さき声に耳を傾けて下さい。

三省堂書店成城店 大西香苗さん

取材に来た新聞記者に「あなたたちにまず読んでもらわないといけない本です」と話しました。あと何冊世の中に届ければ「日本を動かす」ことができるのか? まだまだみんなで売り続けなければなりません。

ジュンク堂書店ロフト名古屋店 石本秀一さん

誰かが「無実」を証明してくれても失われた年月は戻って来ない。冤罪を贖うことなど誰にもできない。けれど本当に恐ろしいのは冤罪の向こうで真犯人が野放しになっているということ。私たちを守ってくれるはずの警察官、検察官、裁判官の「正義」の心を信じさせてほしい。

精文館書店中島新町店 久田かおりさん

著者紹介

清水潔シミズ・キヨシ

1958(昭和33)年、東京都生れ。ジャーナリスト。新潮社「FOCUS」編集部を経て、日本テレビ報道局記者・解説委員。2014(平成26)年、『殺人犯はそこにいる――隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』で新潮ドキュメント賞、日本推理作家協会賞(評論その他の部門)を受賞。同書は2016年に「文庫X」としても話題になる。著書に『桶川ストーカー殺人事件――遺言』(新潮文庫)、『騙されてたまるか――調査報道の裏側』(新潮新書)、『「南京事件」を調査せよ』(文藝春秋)がある。

書籍紹介