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いま注目の本! 朝井まかて『眩』

暗闇に浮かび上がる遊女と遊客たちの幻想的な姿を描いた「吉原格子先之図」の作者は葛飾応為。「冨嶽三十六景」で知られる葛飾北斎の娘・お栄です。北斎から「おーい、筆!」「おーい、飯!」と呼ばれたことから、その画号を授かったそうです。
北斎の娘というだけで生没年すらはっきりしないこの絵師を描いたのは、朝井まかてさん『眩』。酒の肴なんぞ要らない、酒は酒だけで呑むのがいっち旨いと豪語し、暮らした長屋は画材や絵で散らかり放題。お針仕事はできないし、絵師に嫁ぐも夫の絵をこき下ろして三行半──。豪胆で画才溢れるお栄が「おーい、応為」という映画になりました。
応為役は長澤まさみさん。時代劇は初主演だとか。冒頭から夫に暴言を浴びせまくり、「とっとと出ていってやらぁ」と捨て台詞を吐きます。身勝手すぎて開いた口が塞がりません。でもとびっきりチャーミング。
北斎役の永瀬正敏さんは正に画狂、お栄を翻弄する善次郎役の高橋海人さんには、正直くらくらしました。公開は10月17日。
著者紹介
朝井まかてアサイ・マカテ
1959(昭和34)年大阪府生れ。甲南女子大学文学部卒。2008(平成20)年小説現代長編新人賞奨励賞を受賞して作家デビュー。2013年に発表した『恋歌』で本屋が選ぶ時代小説大賞、翌2014年に直木賞を受賞。続けて同年『阿蘭陀西鶴』で織田作之助賞を受賞した。2015年『すかたん』が大阪ほんま本大賞に選出。2016年『眩(くらら)』で中山義秀文学賞、2017年『福袋』で舟橋聖一文学賞、2018年『雲上雲下』で中央公論文芸賞、『悪玉伝』で司馬遼太郎賞、大阪文化賞(個人に贈呈)をそれぞれ受賞。2020(令和2)年『グッドバイ』で親鸞賞、2021年『類』で芸術選奨文部科学大臣賞、柴田錬三郎賞をそれぞれ受賞。その他の著書に、『輪舞曲(ロンド)』『白光』『ボタニカ』などがある。