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井上雄彦氏の装画で甦った海音寺潮五郎『江戸開城』!

 2018年は明治150年、NHK大河ドラマも「西郷どん」ということで、幕末維新や西郷隆盛関連本が書店を賑わしています。どれから読もうかと迷っている方に是非おすすめしたいのが、海音寺潮五郎の作品群です。
 海音寺は明治34年、鹿児島県伊佐郡大口村(現・伊佐市)生まれ。中学の国漢教師を経て作家活動に入りますが、日本史全般に造詣が深く、『平将門』『天と地と』など、歴史小説、史伝文学の傑作を数多く残しています。司馬遼太郎の才能を早くから見出したことでも知られています。
 その海音寺がライフワークとしたのが、西郷隆盛でした。最後に挑んだ史伝『西郷隆盛』は九巻で未完のままとなりましたが、この大長編と並行して、テーマを絞った西郷ものの傑作も書いています。盟友・大久保利通との交友と訣別を描いた『西郷と大久保』、勝海舟との応酬を中心に江戸無血開城の舞台裏を描いた『江戸開城』の二作です(ともに小社刊、後に新潮文庫)。『江戸開城』はしばらく絶版でしたが、海音寺没後40年(12月1日)を機に、『西郷と大久保』と共に新装版として甦りました。装画は、同じく鹿児島県伊佐市出身の井上雄彦氏。西郷を知るにはまず海音寺を読むべし。力強い絵と併せてご堪能下さい。

波 2017年12月号「新潮社の新刊案内」より

著者紹介

海音寺潮五郎カイオンジ・チョウゴロウ

(1901-1977)鹿児島県伊佐郡大口村(現・伊佐市)生れ。国学院大学卒。中学の国漢教師を勤めた後、創作に専念。1929(昭和4)年「うたかた草紙」が「サンデー毎日」大衆文芸賞に入選。1932年長編「風雲」も同賞を受賞。1936年『天正女合戦』で直木賞を受賞。1957年に完結した『平将門』は新時代の歴史小説の先駆となった記念碑的大作。日本史への造詣の深さは比類がない。他に『武将列伝』『列藩騒動録』『孫子』『天と地と』『西郷隆盛』『西郷と大久保』『幕末動乱の男たち』『江戸開城』『二本の銀杏』など著書多数。

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