Little Magazine 早稲田文学のリニューアル
長く気鋭の書き手を輩出してきた「早稲田文学」(第8次)が、この度大きくリニューアルし読者の前にお目見えした。新編集による1月号の目次は、柄谷行人氏のインタビューや渡部直己・福田和也氏の対談、芳川泰久・鎌田哲哉・石川忠司・大杉重男・かい秀実諸氏の批評文等々。一目瞭然、「文芸批評」に特化した雑誌であることが分かる。
編集の中心を担う市川真人氏によると、すでに去年からこうした方向性は暖めていたとのこと。横光利一、坂口安吾、後藤明生、中上健次の特集を批評中心で展開したところ、小説が多い時とは、はっきり読者の反応が違い、意を強くしたという。「批評空間」の休刊により、若手批評家が自らの力を試す場所が減ったことも大きく影響している。さまざまな意味で危機が叫ばれている文芸批評への傾斜を選択しえたのも、リトルマガジンならではの勇気であろう。
NAMに至る理念を淡々と語る柄谷行人氏、天皇制や作品評価の基準について激しく「セメント・マッチ」を展開した渡部直己氏と福田和也氏、テーマを定めて新人が腕を競う「Critic to One」など、現在争点となっている問題が目配り良く取り上げられている。登場する人それぞれの言い分が鋭い対立を孕んでいる点にも着目したい。百家争鳴、この闊達な雰囲気は早稲田ならではである。生産的な論争は大歓迎である。
発刊記念のライヴ・トーク「一九六八年の文学・二○○一年の文学」も満員の盛況だったという。「この雑誌を拠点にして、若い批評家が何人か育ってくるといいですね」と語る市川氏。文芸批評の将来を支える人材の発掘をおおいに期待したい。
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