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 遐い宴楽――わが「イン・メモリアム」
入沢康夫

「われに先立ち
 逝きし蝗よ 甲虫よ」
そして きみよ きみたちよ

時間さへ擦り切れて霞んでしまふほどの
遥かな彼方に
緑金の葉をつけた森があつて
そのほぼ中央のひときは大きな槐の木の下の
ぼくたちの「酒ほがひ」

思ひはいつも
あの宴楽へと戻つていく
その時は誰ひとり
はつきりとは気付いてゐなかつたが
目には見えぬ巨きな巨きな「もの」に主導されてゐた
あの宴楽
そこに きみも居り
そこに ぼくも居た