西谷修
一○月七日から始まったアメリカ軍のアフガニスタン空爆は、すでに六週間を超えて続いている。首都カブールの「陥落」も告げられたが、「戦争」は終わる気配もない。というより、そもそもいつ始まったのか、何が「戦争」なのか、そう呼ばれたものがいつまで続くのかもわからない。すべてはアメリカ政府の決めることであり、アメリカの意志ひとつで、世界が果てる時を知らない「戦時下」に置かれるという、異常な事態にわれわれは呑み込まれている。 ロシアから武器援助を受け、アメリカから情報と軍事指導を仰ぎ、B52を含め大規模な空爆に援護されて、いわゆる「北部同盟」は、アメリカに「テロリストを保護するもの」と名指されたタリバンの撤収したカブールの街に入った。アフガニスタン唯一の女性解放運動RAWAによって「タリバンより酷い」と言われた「北部同盟」を、世界のメディアは「解放軍」のように扱い、「ブルカを脱いだ女性」や「髭をそった男」を大写しにして、あたかも首都がこの「解放」を歓んでいるかのように報道した。だがその陰でタリバンの少年兵が大量に殺されたことや、タリバンやその協力者と疑われて殺された人びとの死体についてはほとんど報じなかった。「道には死体が転がり、額にくぎが刺さった生首も約三○○個並べられていた」という証言も目立たない。五年間彼らをその名の通り北部国境地帯に追いつめていたタリバンに対する「報復」だろうか。だが、いまや「報復」は世界に公認されている。いまさら止めるそぶりをしてもむだだろう。アメリカやそれを支持する「国際社会」と呼ばれるものにとって、いまや「報復」は国際法をも踏み超えた「正義」の行使になったのだ。 |