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賞ほど素敵な商売は…
「新潮」11月号
特別定価950円
10月7日発売


◎昭和四四年の第一回は一七○篇。昭和六一年の第十八回は七五○篇。新潮新人賞の応募作品数である。そして第三六回目の今回、小説と批評の両部門をあわせた応募総数は一五○○を超えた。未知の才能が波のように押し寄せてくる、その舞台に立ち会うことの幸福を感じずにはいられない。また、選考会に臨むたび、選考委員それぞれの価値観が衝突する光景に興奮する。今回の小説部門受賞作は佐藤弘氏(二三歳)の「真空が流れる」。マウスをクリックするかのような気軽さで実行された友人の自殺を、主人公はデジタルビデオで撮影し編集する。生と死がビット単位で操作可能な情報に変容した時代を著者は肯定も否定もせず、いまここにある現実として描く◎李恢成氏の中篇「四季」ほか、金井美恵子、川上弘美、古井由吉、宮崎誉子、モブ・ノリオの各氏の創作を、そしてドン・デリーロ、坪内祐三、福田和也、渡邊守章の各氏の批評を掲載する。
(編集長・矢野優)