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2006 新しい作家の飛躍

編集長・矢野優
「新潮」1月号
特別定価1000円
12月7日発売



◎鹿島田真希氏の三島賞受賞作「六○○○度の愛」が被爆地・長崎を舞台に〈愛の廃墟〉を描いたのだとすれば、それに続く最新長篇「ナンバーワン・コンストラクション」が〈建築〉を主題に選んだのは必然的だったのではないか。本作は著者の新たな魅力というべきヒューモアを漂わせつつ、愛の廃墟の跡地にもう一度愛を建築する◎舞城王太郎氏の長篇「ザ・パインハウス・デッド」は待望の「ディスコ探偵水曜日」第二部。探偵小説の原理として、探偵は謎を解かねばならない。だが謎が探偵の存在を飲み込むほど迷宮化した時、探偵はいつしか奇妙な文学的位相に迷い込む◎島本理生氏の中篇「大きな熊が来る前に、おやすみ。」を恋愛小説と呼ぶべきか。今ここに生きる彼女と彼が懸命に対峙するほど、コミュニケーションの本質的な危うさが、昏く、だが鮮烈に露呈する◎奥泉光氏に小説の、松浦寿輝、磯崎新、斎藤環の各氏に評論の新連載を開始していただく。