来るべき文学のために 「新潮」11月号
特別定価950円 10月7日発売 ◎9月7日、新潮新人賞選考会。現代日本を代表する作家、批評家が、無名の書き手の作品を全力で議論する光景を前に、私は「なんて贅沢なんだろう」と感じていた。なぜ選考委員の方々はかくも懸命なのか。それは誰のためでもない、「来るべき文学」のためとしか言いようがない。今回、二千作近い応募作の中から選ばれた唯一の作品は吉田直美氏(27歳)の「ポータブル・パレード」。どうぞお読みいただきたい◎大江健三郎氏が平野啓一郎氏との対話(「群像」10月号)で語った言葉「生きた精神をインフォームする、伝達する、呼び起こすものとしての文学という、いささか古めかしい考え方が新しい技法で伝え続けられることを祈る」を反芻しつつ、編集部に届いた新しい小説を読む。平野啓一郎氏「決壊」(新連載第一回180枚)、絲山秋子氏「エスケイプ/アブセント」(150枚)。そう、これこそが「来るべき文学」だ。 (編集長・矢野 優) |