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近代能楽集

三島由紀夫/著

605円(税込)

発売日:1968/03/27

  • 文庫

生霊、狂女、百通の恋文。情念と観念の劇、極まる。

葵の病室を訪れる謎の黒手袋の女は、何を奪おうとしているのか。「一番気に入っている」と著者が語った魂魄の劇「葵上」。「あと一つ打ちさえすれば」という言葉に、恋の絶対的不可能領域を浮き彫りにする「綾の鼓」。男を待ち続ける狂女と同居する老嬢を描く傑作「班女」の他、名篇の誉れ高い「卒塔婆小町」等を収録。彼岸と此岸の裂け目が顕現する戦慄の戯曲集。

  • 舞台化
    『葵上』『弱法師』―「近代能楽集」より―(2021年11月公演)
目次
邯鄲
綾の鼓
卒塔婆小町
葵上
班女
道成寺
熊野
弱法師
あとがき
解説 ドナルド・キーン

書誌情報

読み仮名 キンダイノウガクシュウ
シリーズ名 新潮文庫
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 文庫
判型 新潮文庫
頁数 272ページ
ISBN 978-4-10-105014-0
C-CODE 0193
整理番号 み-3-14
ジャンル 戯曲・シナリオ
定価 605円

どういう本?

タイトロジー(タイトルを読む)

 しかし私の近代能楽集は、むしろその意図が逆であって、能楽の自由な空間と時間の処理や、露わな形而上学的主題などを、そのまま現代に生かすために、シテュエーションのほうを現代化したのである。そのためには、謡曲のうちから、「綾の鼓」「邯鄲」などの主題の明確なもの、観阿弥作のポレミックな面白味を持った「卒塔婆小町」のようなもの、情念の純粋度の高い「葵上」「班女」のようなものが、選ばれねばならなかった。脇能だの、舞踊を主にしたものだの、現在物だのは、飜案もむずかしく、又、わざわざ飜案を企てる意味がなかった。こうしてここ数年、暇があれば私は、謡曲全集を渉猟するのが癖になったが、この五篇がわずかに現代化に適するもので、五篇で以て種子は尽きたと考えざるをえなくなった。ようやくこれらを一本に纏める時期が来たのである。(あとがき 本書253〜254ページ)

著者プロフィール

三島由紀夫

ミシマ・ユキオ

(1925-1970)東京生れ。本名、平岡公威(きみたけ)。1947(昭和22)年東大法学部を卒業後、大蔵省に勤務するも9ヶ月で退職、執筆生活に入る。1949年、最初の書き下ろし長編『仮面の告白』を刊行、作家としての地位を確立。主な著書に、1954年『潮騒』(新潮社文学賞)、1956年『金閣寺』(読売文学賞)、1965年『サド侯爵夫人』(芸術祭賞)等。1970年11月25日、『豊饒の海』第四巻「天人五衰」の最終回原稿を書き上げた後、自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決。ミシマ文学は諸外国語に翻訳され、全世界で愛読される。

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