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酒鬼薔薇聖斗は更生したのか─不確かな境界─

川名壮志/著

968円(税込)

発売日:2025/05/19

  • 新書

「少年A」は、こうして世間に埋もれてゆく。少年法に守られた凶悪犯罪者たちの「その後」を鋭く問う!

犯罪の軽重にかかわらず、罪を犯した少年に再犯をさせないこと。それが日本の更生保護政策の最優先課題だ。では、一九九七年に神戸連続児童殺傷事件を起こした「酒鬼薔薇聖斗」は本当に更生したのか。再犯の恐れは消えたのか。その境界はじつに不確かなものだ。事件の記録をゴミ扱いした裁判所の無関心からメディアと社会の変容まで、少年事件を追い続けるジャーナリストが、無数の「少年A」たちのその後を問う。

目次

プロローグ

第1章 酒鬼薔薇聖斗は更生したのか
――国が考える「絶対必要条件」
少年Aの「更生」/国が描いた少年Aの社会復帰/また人を殺めた再犯の「少年」も/少年Aは怪物モンスターか/「非社会」の子供/消えた少年A 不惑のA

第2章 なぜ司法は事件記録をゴミあつかいしたか
――裁判所という「閉じた世界」
司法にとっての「お片づけ」/捨てないだろ、普通/裁判所では「ゴミ」/司法のミニマリスト宣言/社会的には存在しない記録/無自覚な隠蔽 閉じた世界の同質性

第3章 酒鬼薔薇と永山則夫は何が違うか
――「実名」が消えた少年事件
酒鬼薔薇聖斗は、なぜ少年Aなのか/アノニマスな少年/「更生」とは「甦る」こと/実名顔バレの山口二矢/ベストセラー作家、永山則夫と「少年」の誕生/うちの子にかぎって…/「少年犯罪」から「少年非行」への転化

第4章 精神鑑定はなぜトレンド化したか
――「発達障害」の多用が産む誤解
少年事件の被害者は、かまれ損/「人を殺す」経験を求めた少年/「反社会」ではない殺人/オペレーション変更された精神鑑定/鑑定の源流 酒鬼薔薇事件/精神鑑定は万能か/発達障害=危険人物/少年事件のトレンド

第5章 SNSは少年事件をどう変えたか
――「正義」がネットリンチに転じた時
SNSが制裁の舞台になった少年事件/国vs.マスコミ/川崎中1男子生徒殺害事件の初報/顔バレの時代 市民総出の「犯人」探し/ばらまかれる実名/キャッチ・ザ・ウエーブ SNSの波に乗る報道/ネットリンチ SNSの悪意/ネットの関心と報道パターンのズレ/「燃料」化する少年事件/2ちゃんねるはクローズド/テック時代のThink Different

第6章 国はなぜ実名報道を許したか
――政治に翻弄される「特定少年」
令和時代の死刑の基準/かんもくの少年/正義は変わる/政治に翻弄される「少年」/ユルユルのルール変更/40人以上の少年死刑囚/死刑の基準と犠牲者の人数/さまよう司法の正義/市民に渦巻く反感

第7章 少年とはだれなのか
――ばらつく「少年」像と社会の違和感
「大人」の反対語は「少年」か/酒はダメだがパチンコはOK/昔の方が自立していた「少年」/「霊長類ヒト科」としての人間/世界の「少年」と「大人」の境界/少年法をめぐる法務省と最高裁の綱引き/少年法改正と「虎に翼」/少年は児童か/裁く側なら大人、裁かれる側なら少年

エピローグ 少年の更生とは 不確かな境界
少年Aの「更生よみがえり」 再び/不確かな境界 専門家の陥穽/消える少年事件

書誌情報

読み仮名 サカキバラセイトハコウセイシタノカフタシカナキョウカイ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書
判型 新潮新書
頁数 208ページ
ISBN 978-4-10-611088-7
C-CODE 0236
整理番号 1088
ジャンル 事件・犯罪
定価 968円

著者プロフィール

川名壮志

カワナ・ソウジ

1975(昭和50)年、長野県生れ。2001(平成13)年毎日新聞社に入社。初任地の長崎県佐世保支局で小六女児同級生殺害事件に遭遇する。後年事件の取材を重ね『謝るなら、いつでもおいで』『僕とぼく』を記す。他の著書に『密着 最高裁のしごと』などがある。

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