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下巻カバーに使ったイラストは、ヘルシンキ工科大学の構内にひっそりと建つオタニエミ・チャペルです。中村さんは森のなかのこの礼拝堂をみて、(1)まず木立のなかに十字架をたて、(2)そこに向かって二つの壁をつくり、(3)屋根をかけて出来上がり、という順番ではなかったか? と思ったそうです。詳しくは本書でご覧下さい。
絵=中村好文


栗林公園の池のほとりに建つ〈掬月亭〉。雨戸が開け放たれ、障子がすべて取り外されると、二段にこけら葺きされた美しい寄せ棟屋根が、細身の柱によって軽やかに支えられた様子がよくわかる。
撮影=筒口直弘



〈カステルヴェッキオ美術館〉の内部。分厚い壁で五つの展示室に区切られ、それぞれが アーチ形の入口を持っている。美しいアーチが奥へ奥へと連なる光景が、たちまち見 学者の心を捉える。
撮影=中村好文


〈豊多摩監獄「十字舎房」〉の内部。大杉栄、亀井勝一郎など多くの思想犯を収容した独房棟だった。一直線に伸びる天窓から外光が明るくふりそそぐ崇高な建築空間。
撮影=中村好文
巨匠の図面を覗き込む
サヴォア邸 設計=ル・コルビュジエ
1931年 フランス ポワッシー


戸袋に消える128枚の雨戸
掬月亭
江戸時代初期 香川県高松市

修復という名の錬金術
カステルヴェッキオ美術館 設計=カルロ・スカルパ
1964年(オリジナルの建物は14世紀) イタリア ヴェローナ


旅路の果てに辿り着いた島
檀一雄の能古島の家
福岡県福岡市

「第三の男」が逃げ込んだ地下水道
ウィーンの地下水道
19世紀半ば オーストリア ウィーン

肩肘張らず自然体で普請するは大吉
続・私の家 設計=清家清
昭和45年(1970) 東京都大田区


風景の中の葬礼
森の火葬場
設計=エリック・グンナール・アスプルンド
1940年 スウェーデン ストックホルム


思想家たちを幽閉した瀟洒な獄舎
豊多摩監獄 設計=後藤慶二
大正4年(1915) 東京都中野区


森に立てられた十字架
オタニエミ・チャペル
設計=ヘイッキ&カイヤ・シレン
1957年(78年再建) フィンランド オタニエミ


我が心の階段室
旗の台駅
昭和26年(1951) 東京都品川区

ワトソン君、住まい方は生き方そのものだよ
シャーロック・ホームズ・ミュージアム
1815年 イギリス ロンドン

沖縄の家は昼寝も気持ちいいさー
中村家住宅/銘苅家住宅
18世紀半ば 沖縄県北中城村/明治39年(1906) 同伊是名村

生物学者との二人三脚
ソーク生物学研究所 設計=ルイス・カーン
1965年 アメリカ カリフォルニア州ラ・ホヤ


読者のための見学案内

あとがき
本書は『芸術新潮』2002年4月号~2004年7月号に連載された「意中の建築」を、上下巻に分けて再編集・増補したものです。「旅路の果てにり着いた島」は『芸術新潮』2004年3月号掲載の「意中の島」を加筆訂正して収録しました。「沖縄の家は昼寝も気持ちいいさー」は、本書のための書下ろしです。