みなさん、こんにちは。文庫編集Mです。
去年の年末に発売されたブレイディみかこさんの文庫『THIS IS JAPAN―英国保育士が見た日本―』の試し読みが始まりました。

ブレイディみかこ
『THIS IS JAPAN』は、ブレイディさんが冬の日本で労働や保育の現場を取材して書いたルポルタージュ作品です。発売1か月で増刷になりました(わーい)。今回の試し読みでは、「はじめに」と第一章「列島の労働者たちよ、目覚めよ」の半分くらいまでがお読みいただけます。
ブレイディさんが最初に足を運ぶのは、上野の繁華街。キャバクラ嬢の労働争議に同行します。約150万円にものぼる給料が支払われていないキャバ嬢のエグチさん(仮名)は、キャバクラユニオンのメンバーとお店に交渉に向かいます。けれども彼女たちを出迎えたのはキャッチ(客引き)や黒服(男性従業員)たちの「働け!」という罵声でした。
彼らだって売上や出来高で競わされている労働者なのだろうに、その労働者たちが、タダ働きさせられている労働者に「つべこべ言わずに働け」と言っている
キャバクラの店内に閉じ込められそうになったりしながら、ブレイディさんは2本のイギリス映画を思い出します。イギリスの労働運動と人びとの連帯がどう進化したのかを教えてくれる映画から、日本はいま、どの段階にあるのだろう? と思考を巡らせます。
『ぼくイエ』に書かれたイギリスの貧困や差別の問題を読んで、「それでは日本はどうなんだろう?」「いまの日本はブレイディさんの目にはどう映るのだろう?」と感じた方も多いのではないでしょうか。『THIS IS JAPAN』はそんな疑問に答えてくれる作品だと思います。私がいちばんハッとさせられたのは、「日本では人権課題に『貧困問題』が入っていない」という指摘でした。このことは第五章「貧困の時代とバケツの蓋」に書かれています。
長くなりました。それではみなさん、ブレイディさんと一緒に上野の路上に出かけましょう。

ノンフィクション書評サイト「HONZ」では、荻上チキさんの解説を公開中!
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『THIS IS JAPAN―英国保育士が見た日本―』文庫解説 by 荻上チキ - HONZ
(文庫編集M)