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どこかクールでカッコいい。そんな男子高生が、退屈な学校にくらわすパンチ。

ぼくは勉強ができない

山田詠美/著

473円(税込)

本の仕様

発売日:1996/02/28

読み仮名 ボクハベンキョウガデキナイ
シリーズ名 新潮文庫
発行形態 文庫
判型 新潮文庫
ISBN 978-4-10-103616-8
C-CODE 0193
整理番号 や-34-6
ジャンル 文芸作品、文学賞受賞作家
定価 473円

ぼくは確かに成績が悪いよ。でも、勉強よりも素敵で大切なことがいっぱいあると思うんだ――。17歳の時田秀美くんは、サッカー好きの高校生。勉強はできないが、女性にはよくもてる。ショット・バーで働く年上の桃子さんと熱愛中だ。母親と祖父は秀美に理解があるけれど、学校はどこか居心地が悪い。この窮屈さはいったい何なんだ! 凛々しくてクールな秀美くんが時には悩みつつ活躍する高校生小説。

著者プロフィール

山田詠美 ヤマダ・エイミ

1959(昭和34)年、東京生れ。明治大学文学部中退。1985年『ベッドタイムアイズ』で文藝賞受賞。同作品は芥川賞候補にもなり、衝撃的なデビューを飾る。1987年には『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞受賞。さらに、1989(平成元)年『風葬の教室』で平林たい子文学賞、1991年『トラッシュ』で女流文学賞、1996年『アニマル・ロジック』で泉鏡花文学賞、2000年『A2Z』で読売文学賞、2005年『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞を受賞する。他の著書に『ぼくは勉強ができない』『PAY DAY!!!』『ライ麦畑で熱血ポンちゃん』『無銭優雅』『学問』『タイニーストーリーズ』『ジェントルマン』等多数。現代を代表する人気作家である。

書評

大人になっても大事な親友

宮田愛萌

 私は本に取り憑かれているのではないだろうか。いつでもどこでもどんな時でも、本が無いと落ち着かない。それも3冊は持ち歩きたい。だって読みたい本の系統ってその時々で違うもの。随分とわがままなモノに取り憑かれてしまっている、と考え始めたところで、昔から私は本が無いと落ち着かない子どもだったということを思い出した。字を覚える前は両親に読み聞かせをねだり、幼稚園に入る前にはひとりで本を読めるようになった。気がつくと私は小学校に入学する頃には速読のようなものすらできるようになっていた。

江國香織『流しのしたの骨』 ななめ読みに慣れて、国語の問題文で要点だけを読むことができるようになった頃くらいからだろうか。それとももっと前からだろうか。私は同じ本を繰り返し読むことが好きだった。一度読み終えたら、すぐに2回目を読む。そして3回目。よっぽど私の趣味には合わないなと感じたもの以外は基本的に3回は読む。3回読んだ後も、繰り返し読みたくなり、私の本棚に並ぶ本たちは何度も手に取られ背表紙の端がボロボロになり、私だけのための本になっている。きっと、目隠しをされたとしても触るだけで自分の本を見つけることができるだろう。その中でも、特に繰り返し読んだ本がある。いつでも持ち歩いているため、新潮文庫の特徴の不揃いな天がだんだん滑らかになってきてしまっているし、スピンが潰れて先がけぱけぱになっている。それくらい、大好きな一冊。それが江國香織さんの『流しのしたの骨』だ。
 この本は、いつどんな気分の時でも読めば落ち着いて、いつも通りの私を取り戻せる大切な一冊だ。中学受験の時も、部活が辛い時も、大学に入ってからも、いつでもこの本は手元にあった。まさに親友と呼べる本。
 この物語には寂しさがある。それでも淡々とした印象を持つのは主人公のこと子が「平らかな心」を持っているからだろう。姉たちや弟に日常の中で“ドラマ”があったとしても、こと子の生活は変わらない。好きだったお店がなくなっても「万物はみな流転する」と受け入れて、フェアでいる。私はまだ、変わることを恐れてしまいフェアでいられない。けれど、だから、こと子の強さを羨ましく思う。いつか、こんな平らかな心を持った強い女性になれるだろうか。遠い道だとしても、私は憧れを諦めない。

山田詠美『ぼくは勉強ができない』  時々考える。私はどんな大人になるのだろうか。大学3年生21歳、もう大人だという人もいるだろう。だけどまだ大人ではないという人もいる。思春期と大人の狭間で、ゆらゆらとしている中途半端な私は、まだ自分がどんな大人になりたいかわからない。けれどひとつだけ、私には大人であるためのポリシーがある。  そのポリシーを作ってくれたのは山田詠美さんの『ぼくは勉強ができない』だ。主人公の秀美は「勉強ができない」がモテる。17歳の彼にとって大切なものは、学校の外にある。そんな彼に対して思うことが、初めて読んだ時と今では違うことに、この間読み返していて気がついた。小学生の私は17歳なんてすごく大人でキラキラしていてかっこよく思っていた。しかし、彼の年齢を越してしまった私は、彼のことをなんだか可愛らしく思ってしまうのだ。彼の目に私はどう映るのだろうか。そんなことを考えながら、私は毎日強い香水を手首に振りかけて外へ出る。

梨木香歩『りかさん』  普段私はアイドルをしている。ライブをしたり握手会をしたり、ありがたいことに応援してくださる方と関わる機会が多い。たくさんの方からいただく言葉たちは私の励みになる反面、投げつけられた心ない言葉に触れ傷つくこともある。そんな時に私が思い出すのは梨木香歩さんの『りかさん』のこんなセリフだ。
「どんな『差』や違いでも、なんて、かわいい、ってまず思うのさ」
 かわいいと思うことは相手を認めることだと思う。認めることによって、見えてくるものは変わってくる。それでも、どうしてもかわいいと思えない時のために、心の中にいつでも取り出せるような幸せな「かわいい」を温めておこうと思う。
 5年後の私、10年後の私はどんな人だろう。未来のことはちっともわからないから、今日も私は変わらない旧友たちのページをめくる。

(みやた・まなも=1998年、東京都生まれ。アイドルグループ日向坂46メンバー。2019年8月、グループの1st写真集『立ち漕ぎ』をリリース。)
波 2019年11月号より

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