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夫婦善哉 決定版

織田作之助/著

572円(税込)

発売日:2016/09/01

書誌情報

読み仮名 メオトゼンザイケッテイバン
発行形態 文庫
判型 新潮文庫
ISBN 978-4-10-103702-8
C-CODE 0193
整理番号 お-2-1
ジャンル 文芸作品
定価 572円

ダメダメ夫婦の修羅場が可笑しくていとしい。「幻の続編」を収録した大阪文学の原点!

惚れた弱みか腐れ縁か、ダメ亭主柳吉に尽くす女房蝶子。気ィは悪くないが、浮気者の柳吉は転々と商売を替え、揚句、蝶子が貯めた金を娼妓につぎ込んでしまう(「夫婦善哉」)。新発見された「続 夫婦善哉」では舞台を別府へ移し、夫婦の絶妙の機微を描いていくが……。阿呆らしいほどの修羅場を読むうちに、いとおしさと夫婦の可笑しみが心に沁みる傑作等織田作之助の小説七篇を所収。

目次
夫婦善哉
続 夫婦善哉
木の都
六白金星
アド・バルーン
世相
競馬
解説 青山光二/石原千秋

コラム 新潮文庫で歩く日本の町

宮崎香蓮

 九月四日に東京・明治座で初日を開いた舞台「三匹のおっさん」も名古屋、大阪、博多、広島とツアーが続き、十二月一日の高松で千秋楽を無事迎えることができました。夏以降このお芝居にほぼかかりきりだったので、これはちょっと感無量です。
 名古屋、大阪、福岡では長逗留のホテル暮らしでした。時間が空くと、ぼんやり町を歩いたり、本屋さんに入ってみたり。
 大阪の本屋さんで改めて思ったのですが、私は作家の顔写真を見るのがつくづく好きではありません。今の本屋さんはポスターやPOPや帯など、作家の方の写真がいろんなところで目につくので油断ならないんです。小説の世界にどっぷり浸りたい私にとって、「あ、こういう方が書かれたのか……」と知るのは大袈裟に言うと苦痛なのです。書いた方の顔を知ってしまうと、作品の読み方が制限されてしまうような気がして――。中でもヒドイのは新潮文庫さん(!)で、表カバーを折り返したソデの部分に顔写真が入っているので要注意です。特に愛読してきた作家の方の顔写真を意志に反して見た時の「しまった!  感」たるや……。その方たち(実名を挙げるのは控えますが)が嫌いな顔とか作品を裏切る顔をしているという意味では全然ないんです。でも何かが崩れてしまうような感覚。  で、秋の大阪で読んだのが、織田作之助『夫婦善哉』でした。織田さんの写真を見ずにすむようにカバーを外して読みます。
 ところがこの小説、あまりピンと来ませんでした。ぼんぼんの柳吉という男がいて、妻子持ちなのに、馴染みの芸者蝶子と一緒になる。柳吉はやがて実家の化粧品問屋を勘当になり、そのくせ芸者遊びなど浪費癖は治らない。蝶子は悩むけれど決して別れようとは思わず、自分が稼ぎ、挙句自殺未遂までします。蝶子が柳吉を見捨てないのは意地や体面なんかでなく愛情だとわかるけれど、その愛は母性愛みたいなものなのかどうか、今の私には判断がつきません。本当に何故こんな男と別れないのだろう?
 大阪にひと月いると、あの土地に住む人たちのコミュニケーション能力の高さ、愛想の良さ、そして食べ物の旨さに気づきます。この小説が〈大阪的〉と言われるのは、そんな空気が具体的に伝わってくる点にあるみたいです。そして柳吉が憎み切れないのは、お金がある時でさえ、B級グルメ的で楽しげなデートをすること。「一流の店は駄目や、汚いことを言うようだが銭を捨てるだけの話、本真ほんまにうまいもん食いたかったら、『一ぺん俺の後へいて……』行くと、無論一流の店へははいらず、よく高津こうづの湯豆腐屋、下は夜店のドテ焼、かす饅頭(略)蝶子も択りによってこんな所へと思ったが、『ど、ど、ど、どや、うまいやろが、こ、こ、こ、こんなうまいもん何処どこイ行ったかて食べられへんぜ』という講釈を聞きながら食うと、なるほどうまかった」。
 私は休演日、柳吉が「自由軒ここのラ、ラ、ライスカレーは御飯にあんじょう・・・・・ま、ま、ま、まむしてあるよって、うまい」と称賛するお店の前を通りかかりましたが、お休み。後で聞くと、店内には「虎は死んで皮をのこす 織田作死んでカレーライスをのこす」というコピー(?)と織田さんの写真が飾ってあるそうで、うーむ、休みで良かった気もします。

(みやざき・かれん 女優)
波 2016年1月号より

著者プロフィール

織田作之助

オダ・サクノスケ

(1913-1947)大阪市の仕出し屋の家に生れる。三高時代から文学に傾倒し、1937(昭和12)年に青山光二らと同人誌『海風』を創刊。自伝的小説「雨」を発表して注目される。1939年「俗臭」が芥川賞候補、翌年「夫婦善哉」が『文芸』推薦作となるが、次作「青春の逆説」は奔放さゆえに発禁処分となった。戦後は「それでも私は行く」をいち早く夕刊に連載、1946年には当時の世俗を活写した短編「世相」で売れっ子となった。12月ヒロポンを打ちつつ「土曜夫人」を執筆中喀血し、翌年1月死去。

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