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コラムニストになりたかった

中野翠/著

649円(税込)

発売日:2023/01/30

  • 文庫
  • 電子書籍あり

就職に失敗した早稲田卒の女の子が名コラムニストに! 流行と文化と思い出のクロニクル。

私がほんとうにやりたいことって、なんだろう! 早稲田大学を卒業するも就職に失敗。父の勤める読売新聞社でのアルバイトを経て、主婦の友社でコピーライターに。退職してヨーロッパを放浪し、ついに気持ちは定まった。フリーランスで、雑誌業界で働きたい――。雑誌『アンアン』に衝撃を受け、仏映画『どん底』にシビレた女の子がコラムニストになるまでを綴る、流行と文化と思い出の年代記(クロニクル)。

目次
1969 とりあえずのアルバイト/つかの間の家出
1970 『アンアン』の衝撃/「トムの店」と小島素治さん/学生街の喫茶店/ミシマの自決
1971 ルートヴィヒへの憧れ/サヨクの迷走
1972 あさま山荘事件/いざヨーロッパへ
1973 職安にて/マージャン仲間たち
1974 三宅菊子さんとの出会い/地味な修業の日々
1975 来た仕事は全部引き受け/ぼちぼち、ブランド/港のヨーコ/ショーケンと家出の因果関係/キース・キャラダインの時代
1976 懐かしの喫茶店/三宅さんのファミリー・ヒストリー/「自分の場所」をさがして
1977 いつの間にか三十代に/ローラー作戦いまだに
1978 原田治さんのこと/映画評スタート/コータリさん、イノセさん
1979 秋山道男事務所で/最初の単行本
1980 八〇年代、新時代の到来?/漫才、女子アナ/懐かしいインタビュー
1981 アカツカさんとの一夜/「なんクリ」、カフェ・バー/ついに森茉莉さんにインタビュー
1982 とうとうニューヨークへ/ニュージャパンと逆噴射/タモリ、たけし
1983 ラフォーレ、DCブランド……/自分の好みがわかってきた/そして映画の仕事が増えて来た
1984 私はスキゾ?!/再びニューヨーク、そしてロス疑惑
1985 『サンデー毎日』スタート/『ニュースステーション』もスタート
1986 勝どきにお引っ越し/まだ風情があった頃
1987 いよいよ同世代、活躍/ワンレン・ボディコン・バブルの時代/韓国、そして大乃国
1988 絶唱――美空ひばりのコンサート/椎根さんとの再会、『Hanako』の時代/「アグネス論争」って?
1989 激動する世界/宮崎勤。そしてイカ天/勘三郎さん
1990 八百字ライターのつもりが……/湾岸戦争、ストーンズ、クロサワとイタミ/スリー・エムとちびまる子ちゃん
1990年代 強烈だったオウム真理教/バブル崩壊、ブルセラ……/私もおたく?/淀川さん
2000年代 9・11そして10・1/小津ごのみ/「狐」の兄弟/書評委員会
2010年代 東日本大震災/長い物も書けるかな?/山田風太郎さんと小林信彦さん/いい時代に生まれ合わせた
あとがき
文庫版あとがき
解説 佐久間文子

書誌情報

読み仮名 コラムニストニナリタカッタ
シリーズ名 新潮文庫
装幀 南伸坊/カバー装幀
雑誌から生まれた本 小説新潮から生まれた本
発行形態 文庫、電子書籍
判型 新潮文庫
頁数 256ページ
ISBN 978-4-10-119913-9
C-CODE 0195
整理番号 な-21-3
ジャンル ノンフィクション
定価 649円
電子書籍 価格 649円
電子書籍 配信開始日 2023/01/30

書評

女ともだち〈K子〉の存在

泉麻人

 中野翠さんとの初対面のシーンとして、ぼんやりと記憶に残っているのは、1980年代中頃の着席式のパーティー会場。確か青山あたりのコジャレたレストランで、マガジンハウスの何かの雑誌の忘年会だったような気もする。着席式といってもお互いテーブルは離れていて、僕がトイレに立って戻ってくるようなときに、彼女の横にいた編集者に紹介された……のではなかったか。中野翠の名前は知っていたはずだが、文章をちゃんと読んだことはなく、あまり会話は続かなかったと思う。
 中野翠のコラム(主に「サンデー毎日」の連載)を意識して読むようになったのは、僕が「週刊文春」での連載(ナウのしくみ)を始めてからのことだろう。ちなみに僕の文春連載のスタートは1984年の9月で中野さんよりおよそ1年先行していたが、ほぼ同時期のオヤジ週刊誌の軟派時事コラム、というポジションは一致していた。1ページ(400×3枚)ものの僕のコラムに対して、中野さんのは倍の2ページもので、ボリュームの差はあったけれど、事件や芸能ゴシップのマヌケなポイントを見つけて茶化しとばすようなスタイルには親近感を覚えた。
 そうそう(コレは中野さんお得意の継ぎフレーズ)、お目を掛けてくれた編集者もカブッている。マガジンハウスの椎根和氏は文春の連載の前に「週刊平凡」(写真誌スタイルにリニューアルした)の巻頭コラム子に僕を抜擢してくれた人だし、主婦の友社の松川邦生氏は僕の代表作『東京23区物語』の執筆を提案してくれた人なのだった。
「ポパイ」や「オリーブ」の“寄り合いコラム”のようなページで署名原稿を書き始めた僕も、割と早くから〈コラムニスト〉の肩書を使っていたはず(もっとも、プロフィールが付くほどの原稿を書かないと名乗れない)だが、彼女が自身のコラムニスト観のようなことを語っている箇所があるので紹介しておこう。

当時としては順当に「エッセイスト」と名乗るところを、あえてコラムニストにしたのには、わけがある。私が書くもの、書きたいものは、少しばかり時評的だったり批評的だったりする。エッセイストと名乗るにはシミジミ感は薄く、エレガンスにも欠ける。

(あとがき)

私は私自身のことについて書くのは苦手だけれど、観た映画や読んだ本、耳にした巷の話などについて書くことには喜びを感じる。おのずから批評性を帯びた文章になるわけだが……専門的知識は乏しいので、気楽で、読みやすさを優先した文章のほうがいい。

(101ページ)

 独特の感覚表現と謙虚なスタンスが中野さんらしい。とくに後の例は同時期にデビューした林真理子さんを引きあいに出した一文なのだが、この「私自身のことについて書くのは苦手」というのはちょっと違うような気もする。中野翠の文章には、けっこう中野さん自身のことがおもしろおかしく描かれている。そういう一節が後に論じられる時事ネタの効果的な“枕”になっていたりもする。そして、以下の「K子」みたいな女友達がしばしば登場するのも中野コラムの味だ。

そうだ……この年の初秋。K子と一週間弱だったと思うが、韓国旅行をしたのだった。例によって行きあたりばったり的な旅。

(155ページ)

 こういうガールズっぽい描写は男の書き手には真似できない(ボーイズの空気感とは違う)。いわば、エッセー的な部分が中野翠のコラムにまろやかな味をつけている。
 ところで、この本を読んでいて、おもわず目が点になったのは三宅菊子さんの下でライター修業をしていた1974年の一節。

この年だったか翌年だったか、菊子さんは講談社の「若い女性」の別冊フロクの一冊全部を請け負ったので、急遽、フリーのライターやスタイリストが駆り集められた。フロクの内容は都内にある若い女子向きのお店のガイドブック。

(51ページ)

 コレ、原宿や六本木のブティックやディスコに興味をもち始めた高3の僕が、当時意を決して買い、いまも大切な資料に使っている「若い女性DELUXE」の1975年新年号付録「TOKYOおしゃれ地図帖」ってやつではないか?
 とすれば、僕は本当に駆け出し時代の中野翠の書いた“お店紹介”を愛読していたことになる。

(いずみ・あさと コラムニスト)
波 2020年12月号より
単行本刊行時掲載

著者プロフィール

中野翠

ナカノ・ミドリ

1946(昭和21)年、埼玉県浦和市(現・さいたま市)生れ。早稲田大学政治経済学部卒業。出版社勤務などを経て文筆業に。「サンデー毎日」での連載コラム、「週刊文春」での映画評など、雑誌連載を数多く手がける。著書に『小津ごのみ』『この世は落語』『歌舞伎のぐるりノート』『いちまき ある家老の娘の物語』『あのころ、早稲田で』『コラムニストになりたかった』『まさかの日々』『いつか見た青空は』などがある。

判型違い(単行本)

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