
国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―
990円(税込)
発売日:2007/10/30
- 文庫
- 電子書籍あり
「国策捜査」との闘いは、まだ続いている――。新たな決意を綴った「文庫版あとがき――国内亡命者として」収録。衝撃のベストセラー待望の文庫化!!
ロシア外交、北方領土をめぐるスキャンダルとして政官界を震撼させた「鈴木宗男事件」。その“断罪”の背後では、国家の大規模な路線転換が絶対矛盾を抱えながら進んでいた――。外務省きっての情報のプロとして対ロ交渉の最前線を支えていた著者が、逮捕後の検察との息詰まる応酬を再現して「国策捜査」の真相を明かす。執筆活動を続けることの新たな決意を記す文庫版あとがきを加え刊行!
文庫版あとがき
解説 川上弘美
書誌情報
| 読み仮名 | コッカノワナガイムショウノラスプーチントヨバレテ |
|---|---|
| シリーズ名 | 新潮文庫 |
| 発行形態 | 文庫、電子書籍 |
| 判型 | 新潮文庫 |
| 頁数 | 560ページ |
| ISBN | 978-4-10-133171-3 |
| C-CODE | 0195 |
| 整理番号 | さ-62-1 |
| ジャンル | 政治、ノンフィクション |
| 定価 | 990円 |
| 電子書籍 価格 | 990円 |
| 電子書籍 配信開始日 | 2015/09/11 |
書評
背伸びして読みたい三冊
こんにちは、佐伯ポインティといいます。マルチタレントという肩書を名乗り、YouTubeで動画を配信したり、Podcastで番組を配信したりしています。
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僕は、本を買うこと自体が好きです。本棚にはまだ読んだことのない本ばかり刺さっています。そして多くの本が好きな人と同じように、本を買いながらも、「最近、読む時間ないな……」と思っています。読めていないことを忙しさやスマホのせいにしたいですが、よく考えるとずっと【読みたい本の量>読んだ本の量】でした。
本の購入が増えやすいタイミングの一番は、読書家と会った時です。沢山の本を読んでいる読書家にも、【読みたい本の量>読んだ本の量】の法則は当てはまります。読書家は途方もない物量と時間の厳選を経た本を知っている。というわけで、読書家に会ったらオススメを聞いてせっせと買っています。なんてありがたい情報。読書家の人は心が広いです。気前がいい。器が大きい。よっ読書家!
そして、そうやって読む本の中には、“背伸び”が必要な本があります。文章が硬質だったり、複雑だったり、前提となる知識がないといけなかったり……読み切ったとしても、どれぐらい“読めた”といえるのか。今の自分じゃ嚙み砕けないほどの歯ごたえがある。ただ、それだけは分かる、というような本。そういう本に出会ったときに訪れる、まだまだ本の世界は深くて広い、もっと本を読まなきゃ、という心地の良い焦燥感。あれ、いいですよね。というわけで今回は、読書家たちから僕がオススメしてもらった新潮文庫の背伸び本をご紹介したいと思います。

読書家の先輩がしきりに「とにかく読んでみて」とオススメするので、買ってみたのが『思い出トランプ』です。まさに読んでみたら分かる、オススメしづらいけどオススメせずにはいられない本でした。言わずと知れたテレビドラマ脚本家の直木賞受賞作を収録した短編集。市井を生きる人々の温かい部分、弱い部分、小狡い部分、その心理の揺れ動きがとにかく細かく描かれていて、読んでいると、滋味深い和食を堪能するときに出るため息が出ます。なんと贅沢な短編集。衝撃的な事件やスキャンダラスな展開がなくとも、一見穏やかな家庭内にも膨大な感情のやり取りと無数の読み合いがあって、その心理的な緊張感は時にサスペンスよりサスペンスだということを教えてくれます。

60歳を越える読書家の先輩から教えてもらったのは、伊丹十三のエッセイ『女たちよ!』。「伊丹十三は映画だけじゃなくてエッセイも恰好良いんだよ、知らないのか!」と、先輩お得意のマウントでじゃれながら勧めてもらいました。内容は、思考や構えだけでなく、当時の海外を知らない日本人に向けたスパゲッティの作り方やバーでの振る舞いなど、教養のある心地良い教えが多く描かれています。インテリの蘊蓄本のようですが、実際そうです。それがいいんです。そして冒頭には、伊丹十三自身も多くの先人たちから教わったことで自分が構成されている、と。昨今、マウントは嫌われ者の所作ですが、本物を知ってる人と本物を知りたい人同士の合意の上では、マウントは教えとなるのだな、と読みながら教えてくれた先輩のことを思い出しました。厳しさの中に本物があること。それに触れられる一冊です。
とあるベテラン映画監督のワークショップに参加した時に知ったのが、佐藤優の『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―』。読書家という言葉だけでは足らない、古今東西の様々な物語に精通してるのが映画監督です。その監督から台本として渡されたテキストは『国家の罠』をベースにしていて、読んでみて驚きました。ロシアとどのように交渉を進めるかの詳細に始まり、国のために動いていた外交官に検察側が仕掛ける心理戦のような捜査もある。厳しく捜査が進む中にも、外交官の知識を検察官が学んでいくようなパワーバランスの変化もあって、難しいのに読むのが止まらない。知的な重厚さにやられました。読みやすい本もいいけど、背伸びして読んだ本は忘れられない。新潮文庫の本をめくって、そこに描かれてる葡萄を見るたびに思うのです。さあ背伸びして脳に汗をかこう!と。

(さえき・ぽいんてぃ マルチタレント)
著者プロフィール
佐藤優
サトウ・マサル
1960年生れ。1985年、同志社大学大学院神学研究科修了の後、外務省入省。在英大使館、在露大使館などを経て、1995年から外務本省国際情報局分析第一課に勤務。2002年に背任と偽計業務妨害容疑で逮捕・起訴され、東京拘置所に512日間勾留。2005年2月執行猶予付き有罪判決を受ける。2009年6月に最高裁で上告棄却、執行猶予付き有罪確定で外務省を失職。2013年6月に執行猶予期間を満了、刑の言い渡しが効力を失った。2005年、自らの逮捕の経緯と国策捜査の裏側を綴った『国家の罠─外務省のラスプーチンと呼ばれて』で毎日出版文化賞特別賞を受賞。以後、作家として外交から政治、歴史、神学、教養、文学に至る多方面で精力的に活動している。主な単著は『自壊する帝国』(新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞受賞)、『獄中記』『私のマルクス』『交渉術』『紳士協定─私のイギリス物語』『先生と私』『いま生きる「資本論」』『神学の思考─キリスト教とは何か』『君たちが知っておくべきこと─未来のエリートとの対話』『十五の夏』(梅棹忠夫・山と探検文学賞受賞)、『それからの帝国』『神学でこんなにわかる「村上春樹」』など膨大で、共著も数多い。2020年、その旺盛で広範な執筆活動に対し菊池寛賞を贈られた。

































